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Critique Back Number 76


高沢公信"Critique"/2011.7.20

 

上司を動かすチームリーダーのリーダーシップ【1】

チームリーダーの役割とは
チーム目標の意味
組織全体の中でのチームの位置づけを再確認する

チーム目標も組織全体の動きと連動している
チーム内での方針を固める
上司と合意点を見つけるための5つのポイント


◇ここで問題にしようとしているのは,チームリーダーのリーダーシップとは何かということである。チームは自己完結しているのではなく,組織全体の中で,その役割がある。上位者にとって,そのチームの成否が自分の預かる部署全体の成否につながる。チームをあずかるものは,上位者との関係の中で,自分に何が求められているかを常時考えながら,チーム運営をはからなくてはならない。場合によっては,チーム運営のために,上司を動かさなくてはならない場合もある。そこに必要なのは,ただよい業績をあげるだけではない,人の管理と仕事の管理の両方にかかわるリーダーシップが必要である。チームリーダーのチーム運営の失敗は,単に自分への咎にとどまらす,上位者にも及ぶことがわかっていなくてはならないのである。たとえば,営業成績を上げるために,上司の時間管理への注意を無視し続けた場合,どんな問題があるのだろうか。また場合によっては,上司を動かすために何が必要なのだろうか。


チーム・リーダーに求められるのは3つの役割となる。

●旗を立てる機能(指示機能)

何のために(目的),何をするか(目標),どこへ向うのか等々,チームの仕事の意味づけと組織全体とのリンケージ(関連づけ)をとり,クリアな旗印を明示することである。

●巻き込む機能(盛り上げ機能)

立てた“旗”をどう実現(達成)するかの手段として,目的達成のために,チームとしての活力を維持・向上させるために,必要なことはすべてが対象となる。どうメンバーをまとめ,集団としての力を盛り上げていくかを工夫し,実践する。場合によっては上位者だけでなく,チーム外のキーマンも巻き込む。一番肝要なのは,コミュニケーションであり,そのためのチャンネルが確立していること,日々円滑化の為の工夫をすること,協働体制づくり,メンバーの指導・育成,職場風土づくりその他日常の細々としたチーム運営等々。

●やりきる仕組みづくり機能(仕掛けづくり機能)

 目指す旗を確実に達成するために必要なさまざまな仕組みや仕掛けをつくり,環境や条件整備をして,旗の実現をお膳立てをする。一人一人に自主的に取り組ませるための仕組み,業務分担の見直しや調整,チーム全体が足並みが揃う仕掛け,障害物を取り除く工夫,途中経過や進捗状況を共有化する仕組みづくり等々。

リーダーが確信をもってチームの目指すものを指し示せなければ,チームメンバーが毎日の仕事の意義(何のためにそれをするのか)に確信をもてるはずがない。それこそが“旗印”が必要な理由である。それによって,何のためにそれをするのかという目的意識が明確となり,そのために何をしたらいいか(目標意識),どういう役割を果たせばいいのか(役割意識),チームメンバーがひとつの目的実現のために一体となって取り組むことができる。しかしそれが,組織全体とのリンクを欠いた,チーム内に自己完結したものでは,そのパフォーマンスは,組織の何にも寄与しないことになる。何にもリンクしない孤立した旗は,チームの旗としての意味をなさない。


目標は,基本的に,単独では存在しない。目的(何のために)−目標(何をする)の連鎖の中に位置づけられる。たとえば,ある目標(何をする)は,その目的(上位目標)から見れば「手段」である。しかし,その目標の手段(下位目標)からみれば,その手段を取る目的となる。組織の各目標は,そうした組織の目的達成の手段としてある。連鎖の中にある目標が1つ崩れただけで,この目的に向けての体系全体が崩れ,目的達成は難しくなる。とすれば,その手段は,目的達成に適合しているかどうかが,たえず問われなくてはならない。もし,目的不適合(あるいは目的不全)の活動であれば,目的への寄与のない活動と見なされなくてはならない。

時間管理もまた,組織全体の目的連鎖の中に位置づけられているはずであり,チームリーダーが,残業削減を無視し手業績優先を続ければ,たとえ業績がクリアできても,目的不適合である。チームリーダーに,残業が増えても業績をあげることが組織の目的にとって重要であるという覚悟があってしていていたのならまた別であるが。

《目的手段の階層構造》

下位目標(目的からみると手段)の妥当性は,上位目標(下位目標からみると目的)の妥当性による。ある作業行動(は,何かをするという目標の手段に当たる)が目標に適合しているかどうかは,その目標(は,何のためにするかという目的の手段に当たる)が目的(何のためにそれをするか)の手段として適切かどうかによってのみ,チェック可能である。

つまり,一方通行ではなく,手段(下位目標)から上位目標(目的)に,また上位目標(目的)から下位目標にと,双方向でキャッチボールされることで,自分の行動が意識的に軌道修正される。チームリーダーは,その作業を竹之内課長との間できちんとしていなくてはならなかったのである。たとえば,いま組織全体が何に重点をおいていて,課長自身が何を重視しているのか,その中で,時間管理にどのくらいの優先順位をつけているのか等々。


チームは,組織目的の機能分担の一翼を担っている。チームの目的は,より上位の組織の目標であり,チームの目標は,チームメンバーにとっては,目的である。

チームメンバーは,チームの目標達成のためにどうするかを考える。しかしリーダー自身が,自分のチーム所属する上司の部署目的に寄与していなければ,リーダーとしてその役割を果たしたことにならない。

 

チームリーダーは,上司が何を期待しているのか,何を目指しているのかを,どこまで意識していたのか。上司の考えは,その上位者の考えを反映しており,上位者は,組織全体の方向性を反映しているはずである。そのことに目が向いていなければ,チームリーダー失格である(続く)

リーダーシップについては,「リーダーシップとは何か」「リーダーシップ論」「リーダーシップに必要な5つのこと【1】【2】」を参照してください。


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