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Critique Back Number 33


高沢公信"Critique"/2004.8.20

 

タイプ別部下の指導法-1-

(1)年上の部下の指導
(2)やる気のない部下の指導
(3)指示待ちの部下の指導

 

(1)年上の部下の指導

 

  • 共通のチーム目的の達成を分担することでは他のメンバーと同じことを求める

 大事なことは,かつての上司であれ,先輩であれ,自分のチームのメンバーとして,チーム目標達成のための役割分担をし,それにふさわしい期待成果をきちんと求め,職務遂行を完遂するようにフォローしなくてはならない。それが,チームを預かるものの責務であり,役割だ。

 そのためには,まず自らが,自分の部署長としての役割をきちんとおさえ,自分のなすべきことを明確化しなくてはならない。それが,チームの方針となり,その実現のために,それぞれが何をなすべきかを,担当者が考える。

 その観点からは,年上かどうかは関係ない。自分が何を達成するために,どうすう役割を担っているか,そのために何をなすべきかが,主体的に考え遂行することこそが,求められる。仮に,かつての上司ということで,特別扱いしたり,ダブルスタンダード担った瞬間,チームはチームとして機能しなくなるはずである。それが,チーム運営の基本である。


  • そのひとが有効感を持てる遇し方を考える

 大事なことは,まず,自分の方針と目標をきちんと説明し,それへの協力を求めるチームメンバー全員に求める役割意識だ。しかし,だからといって,年長者やかつての上司を,一般メンバーと同じに遇していいということではない。チーム運営上の方針の一貫性と,個々の彼らへの期待とは別である。少なくとも,自分より先輩であり,それなりの経験と知識を持つ人を,どう遇するか,その知識と経験に敬意を表し,彼らのもつ知識と経験,ノウハウを,自分のチーム運営のために協力し,サポートしてもらうように求めることは重要である。そのために,たとえば,後輩の指導役やサポート役,助言役を求める,といったことがあってもいい。

 少なくとも,チームの管理者として,役割上求めることには例外はあってはいけないが,といって,個人として,先輩への敬意を失ってはいけないし,またそのキャリアに対する礼を失してはいけない。ないがしろにする姿勢は,相手には必ず伝わるものだ。それがチーム全体のチームワークを崩す一穴となりかねない。

 どんな場合も,自分がチームや同僚に役立っている,貢献できているという感じをもてることが自信につながるはずである。先輩としてただ敬するだけではなく,その人にふさわしいチームへの貢献の仕方を,かつての先輩と一緒に考える姿勢は失ってはならない。


(2)やる気のない部下の指導

 

  • やる気というとき,自分の働き方イメージで決めつけていないか

 仮に,上司から見て,やる気がないと見えたとする。しかし,やる気がないと決めつける前に,自分が期待している「やる気」を一度きちんと整理する必要がある。なぜなら,やる気のイメージは,一般には,「何にでもばりばりやる」「積極的に何でも取り組む」「困難なことでも根気よくやり遂げる」というイメージが強いが,ある調査では,「静かに熟考する」「納得しないことはやらない」「感受性が強い」「生き生きしている」「仕事を楽しんでいる」「何かを達成しようとする意志が強い」「ユーモアがある」「心に余裕がある」等々と,かなり幅広い。これは,世代によっても,職位・職責・職種によっても違う。そこから気づくのは,どういうやる気を求めるかには,どういう仕事のやり方を求めるかを意味しているところがあるのである。

 とすれば,「あいつはやる気がない」と言っているとき,管理者が,自分のイメージしているやる気,つまりどういう働き方観から評価しているかが問題となる。「バリバリ動き回る」とか「根性がない」といった肉体的な表現のほかにも,「あんまり会議でも発言しない」「自分の主張がない」「チャレンジする気持がない」「言われたことしかしない」「高めの目標を与えてもそれをクリアしようと努力しない」「すぐできません,わかりませんと音を上げる」「自分でとことん考えようとしない」「仕事を掘り下げようとしない」「仕事の幅が狭く,積極的に努力したり勉強したりしない」といったイメージを指しているかもしれない。

 例えば,「仕事に積極的に取り組む」というのが,“やる気”のイメージだとしよう。その「積極的」という中には,「いつもいい方に前向きに考える」「どうしたらいいかとことん工夫する」「自分の責任でやろうとする」「何についても主体的に取り組む」「いつも先へ先と読む」といった多様な意味がある。上司は,「前向きに考える」というイメージだが,部下は「どうしたらいいかとことん工夫する」ことだと考えていたとすれば,部下にとって,取り組むまでには時間もかかるし,性格的に不安を一つ一つ除去してからでないと着手しにくいところがあればなおさら,上司をじりじりさせるかもしれない。

  • やる気をなくした理由があるはず

 組織に入ったときからやる気がなかったはずはないのだから,部下がやる気をなくしたのは,理由があるはずである。たとえば,「仕事で失敗して自身をなくした」「自分の能力不足で自分がいやになる」「仕事が合わない,面白くない,興味がわかない」「自分の力が生かせない」「自分の意見が通らない」「上司・職場と合わない」「上司・職場に評価されない」「会社のシステムに納得できない」等々。おおざっぱにわけると,自分の内部要因と外部要因の二つある。自分の内部には,自分の努力面と,自分の能力・感性面の二つがある。

 心理学的には,それには「もう少し努力すればよかった」という努力不足に原因を帰属させる助言が,能力に原因を帰属させるよりもやる気育成に有効である。が,問題は,それを援助する上司が,職制として,もともと「もっと努力しろ」という姿勢を強いる,職場の風土・制度・価値観を体現するものとして,部下の前にある,ということを見落としてはない。

 有名な心理学実験に,繰り返し逃れられない電気ショックにあった犬は,逃れられる場面でもショックを避けようとしなくなる,という「無気力の獲得」を示したものがある。自分の力ではいかんともしがたい事態を前にすると「無気力」に陥るこという,この外部的な不可避の力は,意識的でなく無意識的に行使しているときの方が多い。自分なりに全力を尽くして頑張ったつもりなのに,いつも上司から,「お前は努力が足りない奴だ」としかみられない人の場合,自分の能力のせいにする人よりは,無気力に陥りにくいとしても,度重なれば十分やる気をそぐ力になり,「この上司の下では芽がない」と感じてしまえば,やる気を失うことになる。

  • だめなら,何がどうダメで,どうすれば良いのかが示されなくてはやる気が生まれない

 結果を評価する場合,それがどういう視点から何を問題にしているのか(自分がどういう期待をもっていて,その何が期待水準とギャップを生じているのか)をはっきりさせていなくてはならない。

 また単に駄目だと言うだけでなく,何がどうまずいのか,どこがなぜまずいのか,をきちんと説明しなければなりません。でなければ,それを改善していくには,それをどうすればいいかを考える手掛かりがない。

 心理学的には,自分の能力に見合った目標を設定させ,小さな目標を段階的に踏ませていくことで,成功体験を積み重ねて,「自分の有効感・有能感と自己決定感」(自分がやった結果できた・役立ったという満足感と自分がチームにとって必要な存在だという承認感)を味わわせていくことが重要である。そのためには,肯定的な自己評価を下せるように,上司からのきめ細かいフィードバックや励まし,ブレークダウンした目標の設定,上司・職場からのメンバーとしての承認,積極的な期待の表明,適切な支援・助言,肯定的な評価のフィードバック等によって,組織の中に自分の位置と役割を意識化していけるように,指導していくことが必要である。

以下続く

OJTのスキルについて の各論は,目次をご覧下さい。
“やる気”をどうカタチにするか」を参照してください。


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