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Critique Back Number 73


高沢公信"Critique"/2014.4.20

 

部下をどう叱るか【1】

部下に目指してほしいレベルが意識されているか
4つの役割期待
人を動かして仕事をする力をつけるには何が必要か

問題にしている意味が相手に伝わらなければ効果がない
将来の視点から考えさせるプロセス


◇管理者が部下,特に優秀だが,チームワークには非協力的な部下を叱ろうとするとき,何を問題にしたらいいのか。その部下の成績をたのんだ自分勝手な仕事の仕方なのか,チーム内の影響力を自覚しない行動なのか,それとももっと大きな仕事のできるようになってほしいという期待からなのか,によって咎める中身は変わる。そういう部下は,多く,他部署との交渉は,上司にまかせて,自分の成績にしか目が向いていない。そういう部下が,たとえばトップセールスやトップ成績といういまの現状に満足せず,もっと大きな仕事ができるようになるには,個人プレーでやっている限り,限界がある。現象からみると,トップ成績の部下をマネジメントしきれない管理者のリーダーシップが問題のように見えるだが,上司を動かし,チームを動かし,業務を動かす,そういう仕事の仕方を,部下に身につけさせたいという,部下育成の視点から考えたとき,管理者自身がどういう仕事の仕方をしているのか,どうしいう仕事の求めているかが問われてくる。ここで求められているのは,管理者が,目先のトラブルや障害にだけ振り回されず,チームメンバーをどう育てるかという視点をいかに見失わないかである。叱るとか注意するというのは,相手の行動が,求めている役割期待からずれているとき,それをどう自覚させるかに本来の主旨がある。逸脱した行為や規則違反は,その一端にすぎない。それは,どういうメンバーになってほしいのかが,両者で共有化されていてはじめて効果がある。


本来,仕事ができるとは,「自分が努力すれば,周囲や自分に好ましい変化を生じさせられるという自信と見通し」をもっていることである。この能力と自信を「有能感」「有効感」という。この有能感,有効感の手ごたえには,努力の主体が自分であるとする自律性の感覚(自己決定感)が不可欠である。つまり,「自分の考えを実現すればより効果的のはずだ」という自信である。

能力には,それぞれの人がおかれた状況において,期待される役割を把握して,それを遂行してその期待に応えていける能力(コンピタンス)と,英語ができる,文章力がある等々といった個別の単位能力(アビリティ)がある。どれだけ主観的に有能感をもとうと,そのおかれている状況を把握し,それに応えた自信でなければ,他のメンバーを阻害するだけである。成績を頼む部下には,そういう自覚を欠いており,チームの阻害要因になっている。

自分が期待されている役割を自覚し,それを遂行しきる能力(コンピタンス)が重視されるのは,自分がそこで何をすべきかを自覚し,その状況の中で,求められる要請や目的達成への意図を主体的に受け止め,自らの果たすべきことをどうすれば実行できるかを実践して,アウトプットにつなげていける総合的な実行力こそが求められるからにほかならない。最終的に,それが,個人にとっても,組織にとっても,成長目標のはずである。

周囲が自分に期待ないし要求している役割の自覚には,自分がどういう基準で期待をされているかがわかっていなくてはならない。基準には4つある。

●チームの求める期待水準(職位要件,職務基準の“なすべきこと”と同時に,組織風土からくる暗黙の期待,「トップセールスならそれくらいやってくれるはず」「やってくれなくては困る」)

●チームメンバーの期待水準(「あの人ならやってくれるはず」といった個人へのリーダーシップや的確な判断への期待。更に,「あれだけの経験があるならできるはず」といった本人のキャリア・経歴に伴う期待。)

●上位者の求める期待水準(「彼にはこれくらいのことはしてもらいたい」「してくれなくては困る」といった,上位者が,その統括するチーム目的達成のために,分担した機能を完遂することを求める要求。)

●他部署のリーダーやメンバーの期待水準(上位目標を共にさえていく他部署の「この位はやってくれるだろう」「やってくれないとこちらにしわ寄せがいく

成績トップの部下は多く,自分一人で独力で仕事をしている。その気概はよしとしても,一人でやる仕事には限界がある。本当の意味で仕事ができる人間は,一人で抱え込んで,自分だけで仕事をしようとしない人間である。それは,人やチームを動かして,あるいはその力を借りて自分ひとりでやる以上のパフォーマンスをあげようとする人間である。それを,リーダーシップといってもいい。たとえば,ひとりで業務とやり取りして,うまくいかないと他部署を批判するのではなく,同僚や上司に働きかけ,業務との関係を改善して,営業のパフォーマンスアップに資するようにみずから動こうとする。そのためには,ただ自分の成績だけを頼んでも,上司も相手も動かない。


その人が自分の役割を責任持って達成しようとするとき,自分の裁量内でやっている限り,その仕事が完結しないことも少なくない。ときに自分の裁量を超えて,人に働きかけ,巻き込んででも,それを達成しなくてはならないときがある。それがリーダーシップというものが自分に必要になるときである。必要なのは,その仕事を真に完結するとはどういうことか,そのために何が必要なのか,そのためになぜ上位者や周囲の力が必要なのか,それが組織にとってどんな意味があるか等々を明確にできることである。

大事なことは,2つである。

●何を(誰をといってもいい)どこまで動かさなくてはならないのか,その案件,問題の広がりや影響の大きさがわかっている。

 

●自分にとって,上司にとって,組織にとって,それをすることにどんな意味があるかがわかっている。

 つまり,ここでいうリーダーシップとは,自分(ひとり)では(裁量を超えていて)解決できないことあるいは解決してはいけないことを解決するために,解決できる(権限のある,力量のある)人を動かして,その解決をはかっていこうとすることである。その真価が問われるのは,自分のポジションより上や横を動かそうとするときだ。そのとき,

・「何のために」「何を目指して」という意味づけが明示できること

・必要な人々に,その意味をきちんと伝えていく力があること

が問われる。上や横を巻き込むためには,自分の現場レベルだけでは解決できない,あるいは解決してはいけないから,相手に動いてもらいたいと,相手に認めてもらわなければならない。そのためには,

 @それが組織全体,あるいは相手部署,あるいは上司にとって,動く必要のあることを納得させるものであること

 Aそれが,自分の役割遂行上,重要な問題であり,相手を納得させるものであること

 をきちんと伝えなくてはならない。それには,自分自身が,

 ・自分自身の組織での位置づけ,自分のチームや仕事の意味づけができていること(自分の役割との関係づけ)

 ・起きている問題の奥行きや広がりを押さえ,そのことのもたらす意味づけがきちんとできていること(問題の意味づけ)

 が必要である。トップとしての意識だけでは,人は動かない。まして,それが他部署の人間ならなおさらだ。相手を動かす意味づけができないのは,自分を動かす意味づけができていないことにほかならない。上司は,そのことを本人に気づかせなくてはならない。それは,部下のいまの仕事の仕方を問い直すことにもなるはずだ。(以下つづく)

職場のコミュニケーションについては,ここを参照ください。
部下育成のポイントについては,ここをご参照ください。


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