@4つの具体化との関連
バラバラ化効果をスキル化するヒントは、既に述べたところから明かです。
物理的な細分化、逆転、拡大縮小、膨張収縮等々と同じことを、具体的に想定してみることで、バラバラ化が促進することを述べました。例として、
@元の輪郭、形態、文脈、意味、属性がなくなるくらいできるかぎり細分化する
A誰がいつどうした、何がどうなったと個別化することで、意味をはみ出す
B一方向だけではなく多方向、多角的な見方をすることで、一定の見え方を崩す
C拡大縮小、膨張収縮、伸張収縮などの変形によって、固定したカタチをなくす
Dもとの条件を変えてしまう
等々を想定するによって、より具体化できると述べました。これがバラバラ化のスキルです。
これを整理したものが、次の4つの切り口です。これが、著者の語れるスキルです。
@視点の異質化
上から見たもの、下から見たもの、横から見たもの、前から見たらもの、後ろから見たもの、等々、多様な視点(位置から)のものの見方であること。
Aカタチの異質化
大きさのレベル(細分化、巨大化)、表現レベル(具体的、抽象的)、スタイル(図表、数式、写真)等々、モノやコトがさまざまな形態・様式で表現されていること。
B意味の異質化
人ごとに勝手意味づけ、主観の交じった感情、文脈や意味を共有化しない、意味・価値のバラバラ化。あるいは連想、類比、具体例の列挙等々で、意味の中心から関連あるものへと広げて、意味をずらしていく。
C条件の異質化
過去現在未来、朝昼夜、条件設定がバラバラであること。いつ使うのか、誰が使うのか、どういう場所で使うのか、どんな使い方をするのか等々、条件、状況、つながりを変えてしまう。言い換えると、
@視点を変える
Aカタチを変える
B意味を変える
C条件を変える
という4つになります。第1章で挙げた、
@具体的に考える
A強制的に、あるいは見たいように見る
Bシリーズ化する
C5W1Hあるいはストーリーを描く
の4つのポイントとの関連を、あえて説明しますと、Cがストーリーで、@ABは、具体化する切り口になっていますと同時に、そのままシリーズ化として活用できるはずなのです。
これにいくつか具体化例を加えて整理し直しますと、下表のようになります。
@視点(立場)を変える いまの位置・立場そのままでなく、相手の立場、他人の視点、子供の視点、外国人の視点、過去からの視点、未来からの視点、上下前後左右、表裏等々
A見かけ(外観)を変える 見えている形・大きさ・構造のままに見ない、大きくしたり小さくしたり、分けたり合わせたり、伸ばしたり縮めたり、早くしたり遅くしたり、前後上下を変えたり等々
B意味(価値)を変える 分かっている常識・知識のままに見ない、別の意味、裏の意味、逆の価値、具体化したり抽象化したり、まとめたりわけたり、喩えたり等々
C条件(状況)を変える 「いま」「ここ」だけでのピンポイントでなく、5年後、10年後、100年後、1000年後あるいは5年前、10年前、100年前、1000年前等々 |
4つのアプローチを、更にその具体例に細分化して、図解したのが、下図です。
多角的な見方をするための4つの切り口
(バラバラ化) |
視点を変える
(1)位置を変える
(2)立場を変える
(3)方向を変える
(4)価値(気持)を変える
(5)機能(働き)を変える
(6) 目のつけ所を変える
(7)データ(情報)を変える |
意味を変える
(1)まとめる(一般化する)
(2)具体例で考える(具体化する)
(3)言い換える
(4)(全体と,他と)対比してみる
(5)区分(区切り)を変える
(6) 連想する
(7)喩(たと)える |
見かけを変える
(1)カタチを変える
(2)大きさを変える
(3)量を変える
(4)性質を変える
(5)状態(あり方)を変える
(6)動きを変える
(7)位置(順序)を変える
(8)構造(仕組み)を変える
(9)関係(つながり)を変える
(10)似たものに変える
(11)現れ方(消え方)を変える |
条件を変える
(1)理由(目的)を変える
(2)目標(主題)を変える
(3)対象を変える
(4)主体を変える
(5)場所を変える
(6)時を変える
(7)やり方を変える
(8)水準を変える
(9)前提・制約を変える
|
Aバラバラ化を使いこなす鍵
表でいう、「変える」とは、それを意識するという意味です。
例えば、「視点を変える」の、「視点を意識する」は、「〜と見た」とき、「いま自分は、どういう視点・立場からみたのか」と振り返ってみる、ということです。
そのとき、会社の立場で見たのだとすれば、それ以外の、父親として見たらどうなるか、客の立場で見たらどうなるか、子供の視点で見たらどうなるか、老人の視点で見たらどうなるか、身体の不自由な人の視点で見たらどうなるか、車椅子に乗った状態で見たらどうなるか、外国人の立場で見たらどうなるか、未来の人間から見たらどうなるか等々。
無意識にとっていた視点を、ひとつ意識するだけで、それを起点にして、「では、別の視点ならどうなるか」と、それ以外のさまざまな視点が上がってくるはずです。少なくとも、自分の取った視点を振りかえることで、「そうでない別の視点」を、最低限もうひとつ取ることはできるはずです。
自分の取っている視点を意識することで、それとは異なる視点を、意識して探していくことができる、そのきっかけとして、自分の視点を意識してみることが大事なのです。それは、発想というものが、天性でも、感性でも、思いつきでもなく、意識的する作業であるということを意味しているからなのです。
こうしたひとつの情報を異質化することをバラバラ化と名づけた真の意味は、ここにこそあるのです。発想を促進するのも自分であり、つまずくのも自分です。発想は、自動的な作業ではなく、主体的かつ、意識的な作業であり、ほっておけばそれまでですが、意識的にすれば、自分の中に埋もれていた、あるいは眠っていた回線(脳細胞のネットワーク)を復元し、活性化することができるのです。
Bバラバラ化実験
たとえば、おなじみの図を例に、バラバラ化スキルを使って、数を出してみましょう。みなさんも試みてください。
いかがでしたか?数が出しやすかったですか?
ちょっと考えてみましよう。まず、センターサークルというのが思いついたとします。その「センターサークル」という着想が、「いま自分は、どういう視点・立場からみたのか」と振り返ってみると、仮想的に、サッカーのピッチを上から見ていたことに気づいたとしましょう。とすると、横から見たら、何に見えるか、と考えていきます。たとえば、
弓の的、ホイールキャップ、スクーターのタイヤ、台車の車輪等々。
それだけではすぐ詰まりますから、的シリーズで考えてみると、射的の的、宝くじの当選番号を決めるダーツの的、射撃の的等々
行き詰まったら、では、下から見たら、何に見えるか、と考えていきます。たとえば、
お尻、福岡ドーム球場の天井、天文台天体望遠鏡の天井等々。で、お尻シリーズで続けていくなら、豚のお尻、赤ちゃんのお尻、牛のお尻、イノシシのお尻、桃のお尻等々というように、シリーズ化して展開して行くことになります。
それに、いつ、どこでという視点を加えれば、面展開にしていくことができます。(以下続く)