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Critique Back Number 16


高沢公信"Critique"/2002.11.20

 

情報異質化の効果-2-

情報異質化の効果-1-

  • 見方の異質化

研修などで,アナロジー訓練の一環として,いろいろな図を示し,「何に見えるか」のブレインストーミングを試み,できるだけ数を出させようということをやる。その一例として,例えば次のような図で,

 (行宗蒼一氏による)

参加者は,山の手線,錠剤,マイナスねじの頭,駐車禁止の標識,望遠鏡でみた飛行機雲,船底からみた水平線,西瓜を切った瞬間,ボタンを押すと開く灰皿,等々,概念的,類比的で,知識・経験から知っているモノを必死で思い出そうとする。ここでは,知識・経験の当てはめがみられるだけである。実際われわれはどうしても,モノやモノの形から連想していく傾向が強い。しかし,なかには,

タコ焼きを串で裏返している,バックミラーに映ったセンターライン,四方を山に囲まれた田舎の子が空を見ていたら飛行機雲一本,丸いシールを剥がそうとして失敗して半分だけ残った,水の入ってきた水中眼鏡,両手で左右をもって水平に力一杯押したオッパイ,パンツのあとのついた腹,道路工事で丸く明けた地面に水道管一本………。

といったものがある(行宗蒼一氏による)。ここに見られるのは,具体的,個別的なモノというより,コトをあげていることだろう。それも,いま丁度何かが起こった直後,いまにも何かが起ころうとしている直前といった,コトの一瞬を表現としてつなぎとめることができている(この点は,発想トレーニング1を参照してほしい)。

これを意識的な作業として可能にしようとするのが,異質化効果である。それによって,それまで似たモノに偏っていた発想を,ある出来事の一瞬やストーリーを表現したり,動きの一瞬を考えたり,スクリーンとして視点転換をしてみることができるはずである。

  • “シリーズ化”で発想量が爆発的に増える

 例えば,視点シリーズによってモノの見方を,

 上から見たものか,

 下から見たものか,

 ヨコから見たものか,

 前から見たものか,

 後ろから見たものか,

 裏から見たものか,

 等々と,強制的に変えてみるだけで,いくつもの見え方ができるはずである。更にそれに,モノの形を,

 何かに似ていないか

 何かと関係するところはないか

 分割すると別のものにならないか

と,幾つかの切口でシリーズ化していってみる。特に,「分割すると別のものにならないか」は,必ずしもモノやコトだけではなく,時間の分断も加わる。それは,モノやコトの変化として表現できる。例えば,何かが加わる瞬間,何かが分裂する瞬間,何かが加わろうとしている直前,何かが抜け落ちた直後,といったように。そうすると例えば,「田」さんの印鑑の「日」部分の欠けたものとか,小田急百貨店の2つの「・」の落ちたものといった,知っているもの経時的な変化を表象できるようになる。その幅も明日や昨日,1年や十年に広げたり,“ここ"でなく“どこか"に場所を移したり,ひとを替えたり,と条件を掛け合わせていくと,もっともっと違った見え方になる。そうやって,爆発的に異質化化が増えていくはずである(この点は,発想トレーニング4を参照してほしい)。

 次のような図で,更に,同じように「何に見えるか」を繰り返すと,

出典;P.エヴァンス&G.ディーハン『創造性を拓く』(早川書房)

“シリーズ化”を活用して,いろいろな展開を示すことが可能となってくる。例えば,皿の上に乗っている果物と思いつくと,果物を次々羅列できるし,上に乗っているものを,果物からごま,塩粒といった極小化することも,あるいは,巨大化して遊園地の回転カップへと連想していける。更に,テーブルの上のコップへとつながれば,コップを他の食器や果物に置き換えられる。皿を井戸と変えて,そこに浮かんでいるいろいろなモノへと発展させられるし,井戸を池に湖に海に宇宙へと広げていけば,4つの丸は島や惑星になるし,口の中と見立てれば歯とみなすこともできる。更に,中の円を凸部ではなく,凹部と見なせば,ボタン穴や車のホイールへと広がる。しかも,そこまでの発想が上からの視点と自覚していれば,同じものを下から見る(それは引っくり返したのと同じ)と,机・テーブル,4足動物とい った別のシリーズへ発展していく。それに,ヒト・場所・トキといろいろ当てはめていけば,ある意味で無数の発想が出せる。現に,数を出せ,いかにたくさん出せるか工夫しろ,と強調すると,ある研修では,かなりの数を出してきた。

 この意味は,次のように判断できるだろう。

 これは,連想の多重化,多層化と同じであり,無意識のネットワークに接続していく,最も優れた方法(しかも気楽にできる)だと思っている。もちろん,これでは同種の発想だという批判がでるのを承知で,筆者はこれをよしとしたい。シリーズ化でやっている極小化したり極大化したりする見え方の変え方は,9点の課題で見え方を変えようとしたのと同様,発想の基本姿勢なのである。それより何より,こういう馬鹿馬鹿しさが発想には必要なのだということを強調したい。なにしろ,こういうやり方で,億以上の数が出せたということが大事だ。それは,常識化された思考においては,閉鎖されていたり埋もれていた回路を開放したり,新たに接続できた証なのだ。

 実際にやってみればすぐ気づくことだが,この細分化の作業が,実は発想の8割以上の帰趨を決することがわかる。バラすことで,すでに違うものが見え始める。バラバラにしただけで,いままでとは異質なイメージや輪郭が見え始め,次々とアイデアが出てくることがある。異質化した情報が,それまでの見え方を崩し,全く違ったパースペクティブをもたらすところに,この情報バラバラ化の効果がある。言ってみれば,切れ切れの情報は,多様な刺激となって,それだけで,もうわれわれの見方が変えられつつあるのだ。とりわけ,こうした一見関連のなさそうなものの羅列は,マトリックスにしてみると,多数の「特異点」を抱え込んでいる。これが極めて大事なのだ,と強調したい。


  • メモにすることで情報はバラバラになる

 ここまで,どちらかというと集団作業としてのバラバラ化を念頭においてきたが,チェックリストだけでなく,ブレインストーミングも,十分個人作業として使えるのである。

 ブレインストーミングは,1ヵ所に集まってやる,というイメージがあるが,別にバラバラの所にいる人と,個別に会うことを通してだって,異質化ができないわけではない。自分が他人の異質性を,ブレストの原則に則って,受け入れ,バラバラの情報をきちんと集められるかどうかなのだ。異質化した情報をそういう形で集めたところで一向にかまわないのである。

 この場合,強調しておきたいのは,メモの効果である。後に情報のビジュアル化でも触れるが,メモはただ忘れないために(あるいは,もうそのことを忘れてもいいように)書き残すことだけに意味があるのではない。情報やアイデアを文字やイラストとして客観化しただけで,それは既に異質化となっていることを忘れてはならない。特に表意文字である漢字には,ビジュアル化するだけで感覚的な刺激がある。

 現実にメモを続けてみるとすぐ気づくことだが,後からたまったメモをひっくりかえしてみると,結構継続した問題意識でメモしていることが多いのである。同じことを,微妙に視点,言い回し,感じ,切口を変えて,何度も繰り返し出している。別に意識的に追いかけようと心がけなくても,無意識のネットワークに乗って,絶えず同じテーマを継続していくらしいのである。そのために,思いついたことを継続的に,ときとところを問わずメモしつづけることは,場所や時間を変えて同じことをあれこれ考えているのと同じになり,巧まずして,違う視点から違う条件で,見直しているのと同じ結果をもたらすのである。日々のメモ化の習慣は,それ自体で情報のバラバラ化をしているのである。

 電車の中,トイレにしゃがんでいるとき,会議の最中に誰かの発言に刺激されて,飲屋,食事中,デートの最中,旅行中,商談の最中(その場でさりげなく注文書の隅にメモったり,直後にメモをしたり)等々,とメモしつづけると,それを取った機会が多様であればあるほど,メモ→メモ→メモ→メモ→メモといった一直線な流れではなく,

 と,その各メモで違った彩りやニュアンスに通底する連想の根茎の流れが,幾重にも連なり,重なって,連想の厚みによって発想を飛躍させるのと同じ働きで,遠いメモの連なりに,不意につながったり,関係ないアイデアの中にぽっかりと浮かんで出たり,異質な組み合わせを見つけることは十分あるのだ。

 とすれば,意識的に,ともかく頭に浮かんだアイデアは何でもメモすることが,結局間接的であれ,その場その人その時から異質な刺激を受けているのであり,チームとしての異質化効果を期待できない個人ワークの者にとって,メモを取りつづけることは,異質化を効果的にすすめる手掛かりになるのである。そのためには,

@メモは,どこででも記入できるように,いつでも持ち歩く手帳に挟め,書いた後用紙がバラバラにできるものであること

A1件,1枚に書くこと

B書いたものは,いま進行中の仕事か,今後の予定程度の区分にして,意味あり気に分類しないで(習慣的な分類はかえって,そのメモを正しく見る目を失わせ,そう分類された枠組でしか見えなくなるので),ともかく大括りに一まとめにしておくこと(ファイルや空き箱に放り込んでおけばよい)。

C一定期間(最低1ヵ月)は継続すること。必要でなければ,3ヵ月位継続した方がよい。

D一度に,ある期間のメモを,取り出し,グループ化するなどの作業(後述の括り直し→まとめ)をしてみる。

ということが大切である。                       

 【了】

アイデアづくりの基本スキル」「発想技法の活用」も参照ください。


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