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Critique Back Number 42


高沢公信"Critique"/2006.1.20

 

発想力を高めるためのベースを強化する-1-

発想マインドをチェックしてみます
まず、いくつ思いつくかをためしてみます
発想を妨げるもの
どうしたら発想量が増やせるのか〜具体化の4原則(1)
どうしたら発想量が増やせるのか〜具体化の4原則(2)
発想への伸びしろをチェックする
発想の基本スタンス〜まずここから始める
発想力を高めるバラバラ化の4つのスキル
バラバラ化のツール〜ブレインストーミング
バラバラ化のツール〜チェックリスト


  • 発想マインドをチェックしてみます
    • 発想が必要になるとき

      発想が必要になる場面を想像してみてください。それは、

       いままでのやり方ではどうもうまくいかない

       自分ひとりでは、できそうにもない

       このままではうまくない

       等々といった、いままでのやり方や考え方では行き詰まっている状態のはずです。そのとき、どういう反応をするかで、その人のタイプが分かれるでしょう。大きくは、

       何が何でも、頑張ってみようと走りまわる肉体派

       もうだめなのではないかと諦める悲観派

       何とかしてみようと、知恵と工夫を試みる前向き派

       といったところでしょう。しかし、いままでのやり方ではだめとわかっているのに、むやみに走りまわったところで、無意味です。また諦めるのならいつでもできます。ここで必要なのは、「何とかしてみよう」と考え始めるかどうかです。そうでなければ発想はスタートしないのですから。

       このマインドを整理すれば、

       だめかもしれない→だから他のやり方を考えてみるのじゃないか

       無理かもしれない→いまのままでは無理だが、何か手はあるはずだ

       難しい→考えもしないで難しいと言ったところで始まらない

       やるだけ無駄→無駄にならない可能性があるのではないか

       人がない金がない時間がない→人も金も時間もたっぷりあるところなどどこにもない

       という前向きの姿勢です。そこには、

       ・何とかならないか

       ・どうすれば可能になるか

       と考える姿勢です。そして、考えるだけではなく、結果として何とかしてしまうことです。

       たとえば、「明日までしか猶予がない」という切羽詰った状態のとき、「残された時間の中でできること」が見えてしまうために、無理、難しいと考えます。しかし、発想力のある人は、「残された時間でできるには何人必要なのか」「その期限は絶対なのか」「その時間内に、絶対に全部できなくてはならないのか。まずできる範囲をやり、次にどれだけ、その次にどれだけと、作業を分割すれば可能なのではないか」と、次々どうすれば可能になるかというアイデアを思いついていくはずです。

       だから、発想とは、何ともならない壁の前でも、「何とかすること」、あるいは何とかして見せる力です。そこに「発想は数」が生きているのです。

       ご自分は、発想の必要なときどんな対応をするのでしょうか。それをチェックしてみていただくのが、「発想への引っ込み思案度チェック」です。

       

    • 発想への引っ込み思案度チェック

      ●下記の設問で、該当する場合は、レ印でチェックを入れてください。

      設問項目

      該当する

      嫌いな人の新しいアイデアや新規企画には、つい色眼鏡で評価してしまう  
      現状を批判したり、問題をあげつらうより、自分の責任と役割を全うすべきだと思う  
      未知の分野や不得意分野のことになると、とたんに頭が真っ白になってまう  
      知らないことややったことのないことにぶつかったとき、つい尻込みしてしまう  
      人のアイデアのアラや欠点が良く目につき、つい批判的な物言いをしてしまう  
      疑問や問題を感じても、忙しさに取り紛れて、見過ごしにしてしまうことが多い  
      自分にすべきことは明確であり、何が何でもそれを完遂するしかないと思っている  
      いつも、人はどうしているのだろうか、どういうやり方をするのか、と気になる  
      新しいことをするときには、自分のやり方で良いのかと心配になってくる  
      間違いや失敗を恐れて、新しい取り組みややり方より手馴れた方法を選ぶ  
      ずっと同じ職場で同じ仕事に携わり、自分の得意分野が限定されている  
      会社関係、職場関係以外の人間関係が少なく、地域とのつきあいも少ない  
      取引先や業務関連以外に、異分野の人や地域の人と一緒に何かに取り組んだ経験はない  
      人が変わった行動や目立つ発言をすると、批判的に見てしまう  
      新しい知識や技術について関心はあるが、勉強する機会がない  
      この何年も展覧会、コンサート、劇場に出かけたことがない  
      特に瑕疵や支障もないのに、いままでの仕事のやり方を変える必要はないと思う  
      上司に提言や提案する苦労をするくらいなら、体に汗して駆けずり回るほうがいい  
      いつも社内や上司、周囲の評価や評判を気にかけている  
      自分なりの考え方や仕事の仕方を、周りや上司に働きかけるのは面倒だと思う  
      マンガや週刊誌、雑誌以外にあまり本を読む機会はない  
      新たなチャレンジよりも、現在の仕事でやるべきことでできていないことが気になる  
      目の前の山積みされた仕事に忙殺される日々で、その仕事に疑問を感じるゆとりがない  
      いままでのやり方については、人に負けないスピードと処理能力があると自負する  
      新しい考えややり方に拒絶反応を示すことがある  
      自分と合わないと感じると、その人を避けたり話をしない傾向が強い  
      困難や難しいことに取り組むのはできれば避けたいと思う  
      自分は人知れずコツコツと地道に努力する縁の下の力持ちが似合っている  
      いまのやり方を改善しなくてはならなくなると負担が増える気がする  
      権威やお墨付きに弱い  

       

    • 評価方法

      チェックの数

      傾向

      〜1

      すばらしいチャレンジング精神です

      2〜5

      十分チャレンジングな性向です。更に一歩を踏み出してください

      6〜10

      ちょっと新しいことに臆病ですが、結局チャレンジする方でしょう

      1115

      少し新しいことに引っ込み思案です。自分を信じて踏み出すチャンスです

      1620

      かなりの殻の強さです。殻は現状への防御でしかありません。

      2124

      いまに必死です。でもその裏に新しさへの自己防衛が強く働いています

      25

      新しさを歯牙にもかけない現状踏ん張り派です。明日は大丈夫ですか?

       

    • 評価結果をどう見るか

 評価結果はどうだったでしょうか。

 結果はあくまで大雑把な傾向です。発想に必要なとき、「何とかなる」と楽観になる傾向がどれだけ少ないかを「引っ込み思案」度としてみたものです。

 この傾向から見えますのは、仕事熱心で、明日のことよりいまの目標達成に必死になっている姿が強く浮かび上がってくると思います。

 しかし、いまの仕事の意味はどうなのか、いつまでこのままで続くのか、このままで良いのか、新しい事態がきたらどうなるのか、ということを全く考えず、ただひたすら与えられた仕事とタスクをこなそうとするのは、どこか現状に首までどっぷり使ったイメージになります。あまりいいイメージとはいえません。

 「何とかなる」と考えればいいというものでもありませんが、危機に瀕したとき、「どうすればいいのか」と考えるか、ダメだと頭を真っ白にさせてお手上げになるのと、どちららが、ご自分の可能性を広げてくれるか、です。

 アイデアにあふれた人は深刻にならないとは、バレリーという詩人の言ですが、それは「何とかなる」「何とかする」という自信のせいでしょう。

 『夜と霧』で、フランクルは、アウシュビッツという絶望的状況の中でも、「どうやったら生き延びるか」の創意と工夫をしている人を紹介していますが、「もうだめ」と思えば自暴自棄に死ぬだけですが、「どうしたら生き残る可能性があるか」と必死で工夫をし、生き残っていくところには、究極の発想力をみることができます。

 こんな話があります。絞首台へ運ばれる馬車に乗っていたある貴族が、到着したところで、読みさしの頁に折り目をつけました。それを見て笑った獄吏に、自分の首が下がるまで何があるか分からないではないか、と言ったといわれます。その精神です。

 

 発想への引っ込み思案に見られる、攻撃も怒りも反感も批判も、実は、自分の心のおそれがもたらす自己防衛です。おそれには、失敗へのおそれ、自分の安定が壊れることへのおそれ、まだ何も踏み出していないのですが、何となく未知へのおそれ、自分の能力へのおそれ、何か試みることでかえって苦難になるのではないかというおそれ等々があります。

 それは、数が出せれば、消せるおそれです。本章の終わりまでお付き合いいただいて、「何とかなる」との、発想への自信を取り戻していただきたいと思います。

 引っ込み思案度の低かった方は、ご自分の天性や何となくやっていた発想力を意識的な方法にして、スキルとして身につける工夫をしてみていただきたいと思います。そのためのチェックポイントをたくさん用意しています。さあ、はじめてみましょう。


  • まず、いくつ思いつくかをためしてみます
    • 何に見えるか

       まず、何に見えるでしょうか?ご自分で、時間を15分と限って、いくつ出せるかを試みてください。

        (行宗蒼一氏による)

       いかがでしたか?いくつ出せましたか?この結果でけで何かがわかるわけではありませんが、こんな風に自己診断してみてください。

      発想数

      評価

      2個以下 あなたが培ってきた知識と経験が大いに邪魔しています
      3〜5個 知識と経験に引っ張られ過ぎ、新しいことを考えるのが難しくなっています
      6〜10 ちょっとあぶないところ、まだ頭の中は柔軟さが残っています
      1114 平均以上です。なかなかの柔軟さです
      1519 まずは立派です。発想に少し自信をもってよさそうです
      20以上 恐れ入りました。かなりの頭の柔らかさです
      50以上 あっぱれです。抜群の発想力です

       ここでは、数だけです。良いかどうかの評価は、アイデアを決定する段階です。アイデアを出している段階で、良い悪いを診断することは、自分のいまのあるいは過去の価値に基づくものです。ひょっとしたら、いま悪いと捨てたものこそが、これからよくなるかもしれません。今は、良いアイデアを出す最善策は、できる限り、半端でないくらい膨大な数のアイデアを出すことです。その膨大な数こそが、常識の枠を破る鍵です。

       

    • 何が妨げたか

      ご自分の結果はいかがでしたか。何が数を出す妨げになったでしょうか?「何に見えるか」を考えてみたプロセスを思い起こしながら、どんなところでとまってしまったのかを振り返ってみてください。

       どんな状態だったでしょうか?
       1、2個思いついたところで頭が真っ白になった
       ひとつ思いついた形から離れられなくなった
       似た形がいくつか出たが、後が続かなくなった
       ひとつカタチは思いついたが、名前が浮かばなくて立ち止まってしまった
       等々いろんな状態があったと思います。
       では、なぜ、その状態から出られなくなってしまったのでしょうか。どうすれば、その状態を抜け出せたと思いますか?

       頭が固い、固定観念がある等々と考えた人がいらっしゃると思いますが、それで説明になっているでしょうか。

       たとえば、頭が固いとすると、それはどういう状態なのでしょうか。固定観念があるというのは、どういう状態なのでしょうか?固いというのは、ひとつ出したところで固まってしまったからだとしましょう。なぜひとつで固まったのでしょうか?なぜそこから出られなくなったのでしょうか?

       たとえば、マイナスネジと思いついたところでとまったとします。なぜとまったのか。そのとき何も考えられない思考停止状態になったはずはありません。何かを考えていたはずなのです。何を考えていたのでしょう。ひょっとして、「マイナスネジ、マイナスネジ」同じ言葉がぐるぐるしていたとしましょう。それはなぜなのでしょうか。

       マイナスネジのカタチに似たものを思い出そうとしたが、まったく思いつかなかった、同じ図柄のものがそれしか思いつかなかった、その図が頭の中で固まってしまった等々

       それがどうしてなのかは、おいおい解き明かしていくにしましても、ご自分なりに、行き詰まった状態がどの当りかを、きちんと掘り下げておくことが絶対必要です。発想というのは個人的な作業です。詰まったところは、多分、その人の発想の癖です。つまずきやすい傾向です。癖がわかった方が、それを打破しやすいはずです。

       

    • なぜ数が出なかったのか

     先ほどの例でいいますと、「マイナスネジのカタチに似たものを思い出そうとしたがまったく思いつかなかった」というのは、どういうことなのでしょうか?

     ひとつ考えられるのは、マイナスネジというカタチそのものが、次のものを思いつく前提になってしまっているということです。つまり、マイナスネジに似たものはないかと考えたとき、マイナスネジの大きいのとか小さいのとか、マイナスネジのバリエーションしか思いつかないのは当たり前です。どれもこれも同じマイナスネジでしかないのですから。

     もうひとつの原因は、円と直径の平面図そのもののカタチを思い浮かべて、それに似たものを思い浮かべようとしたからということかもしれません。そのとき、たとえば、上から見てそう見えたのだから、横から見て同じように見えるものはと考えれば別の展開になったかもしれません。あるいは、それを面ではなく、球や筒として見たら、というように展開することもできたかもしれません。

     どうしてそうできなかったのでしょうか?それは、一つ見えた形や思いついた視点から離れられなくなったからです。

     どうしてそうなってしまったのでしょうか?それは、どうやってそれを思いついたかを考えようとしなかったからです。

     スキルや方法は、いわばやり方についての知識です。自分がやったやり方を人に語れることです。子供の頃、ゲームでもプラモデルの出来不出来よりは、攻略本やマニュアルにない独特のノウハウを語っていた仲間がいたはずです。彼は、自分が成功した体験を自分なりの方法として完成させていたのです。ご自分で、どうやったかを振り返り、チェックし、人に語れるようにすることが、自分のスキルにするための大事な作業です。これを、自分の知識のメタ化と言います。

     「マイナスネジ」にしか見えない状態は、どうやってマイナスネジを思いついたかが語れない状態です。それは無意識で思いついたことを、ぼんやり挙げただけなのです。

     数を出すほどいいと言われている以上、「マイナスネジ」にこだわっていても仕方がないのです。

     それを切り替えるには、大体次のようなタイプがあると考えていいでしょう。

     @マイナスネジ似たカタチのものを、必死で思いつこうとする。

     Aマイナスネジから離れて、同じ形を幅広く考えて見ようとする。

     B平面としての円と直径から、立体や球に探索を広げようとする。

     Cなぜマイナスネジに見えたのかを考え、それを他に広げて考えようとする

     @とAは、大差ありません。BとCは、いずれから入っても、似たようにかなり展開できるはずです。

     Bの場合なら、円として見ないで、円筒、球、円錐と見たらどうなるかに切り替えることですし、Cなら、円として見たのは、上から見てそう見えたのだ、ヨコから見たらどうなるか、下から見たらどうなるか、と切り替えていくことになるでしょう。Bは、Cの切替を無意識的に済ませてしまったと、言えるかもしれません。

     大事なのは、@やAのように、もう行き詰まっていると分かっているのに、そこで無意味に頑張ったり、やみくもうんうんうなるのか、BやCのように、意識して別の見方はないかと、切り替えていけるかどうかの違いです。

     

     もうお気づきの通り、「発想への引っ込み思案チェック」で確かめた発想のタイプがここに出ているのです。

     たとえば、錠剤、マイナスねじの頭、駐車禁止の標識等々が浮かんでとまったとします。しかし、そのカタチにこだわっている限り、似たものを思いつくのを待っているだけなのです。数の多少は、そんなに違いはないはずです。似た形のものが並んでいるはずです。

     しかし、早めに気づいた人は、いろいろ工夫を始めたはずです。たとえば、平面ではなく立体、球、あるいは凸状態なのか、凹状態なのか等々。いったん、

     自分の見たものの形

     自分の見ている視点

     は何で、どうしてそう思いついたかをチェックすれば、それとは違う形を思いつくのは難しいことではないはずです。多分10個±αまではいくはずです。

     しかしそれ以上出そうとすると、もっと別のタブー破りが必要になります。たとえば、

     桃

     と思いついたとします。普通は、それとは別の似たものへと移るはずですが、続けて、

     スイカ

     瓜

     みかん

     オレンジ

     メロン

     等々とつなげていく人がいたはずです。大体の人は、

    「それはまずいだろう」

    「それはずるい」

     と待ったをかけるところです。そのまますすめるとしても、どこか照れ笑いを浮かべながら、後ろ暗い思いをしながらのはずです。

     でも、なぜまずいのでしょう。そこにあるのは、経験から自分で作ったタブーです。それを破るには、これで良いのだという確信犯的な、自覚が必要です。でないと、そうは続けられないからです。

     なぜ、そうしたタブーをつくるのでしょうか?この問題を先に解いておきたいと思います。(以下続く)

発想力トレーニング』については,ここを御覧下さい。


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