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侃侃諤諤
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“批評”とは発言者の視点をぼかした私的見解である……

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“侃侃諤諤”のバックナンバーについては,ここをご覧下さい。

高沢公信"Critique"/2017.1.20

 

リーダーシップを育てる

 

T

 まず,ここでいうリーダーシップとは何かについて,一応の整理をしておきたい。

 字義的に言えば(1),リーダーシップはリードする人のスキル,リードとは,周囲を引っ張っていくこと,そのために周囲を巻き込んでいくことである。この場合,引っ張るには,@文字通り先頭に立つ意味もあるが,A舞台を整える,お膳立てをする調整役,縁の下役の意味もあるし,Bファシリテーター(進行役,促進役,触媒役)の意味もある。もちろんリーダーシップは目的ではなく,何かを実現ないし解決するために,必要になる手段である。

そうすると,リーダーシップとは,一緒にこと(問題解決や何かの実現)に当たってもらうべく,人に協力や支援を求めて,自分が積極的に必要な人に働きかけ,引き入れ,それを実現していくこと,という意味になる。そのとき,その人に,どれだけ人を巻き込んで,周囲の人のもつリソースを引き出していく力があるか,が問われてくる。それに必要なのは,

@「何のために」「何を目指して」という,意味づけ(組織全体にとっての,その仕事にとっての,各自にとってのその問題にとっての等々,これを“旗”と呼ぶ)が明示でき,

A必要な人々に,その意味をきちんと伝え,納得させていく力があり,

Bめざすことを一緒にやっていくための土俵(協働関係)がつくれ,

C協力してくれた,あるいはサポートしてくれた人々への感謝と承認を怠らないこと

である。これは,言ってみれば,仕事をするときの基本原則のはずである。つまり,仕事とは,自己完結せず(自分一人で抱え込まず),人の協力と支援をえることで,周囲の力を引き出し,そういう関係性の支えを得て,自分の力量と裁量の限界を突破して仕事の質と量を達成していくことができることなのである。この延長線上に,リーダーシップを位置づけている。その意味で,仕事ができる人とは,基本的に自己完結しないで,周囲の力を引き出し,それを活用して力を発揮していける人なのだと言い替えてもいい。つまりリーダーシップのある人なのである。

だから,リーダーシップとは,トップや各層のリーダーに限らず組織成員すべてに必要となる。いま自分が何かをしなければならないと思ったとき,みずからの旗(何のために,何を目指すか)を掲げ,周囲に働きかけていく。その旗が上位者を含めた組織成員に共有化され,組織全体を動かしたとき,その旗は組織の旗になる。何とかしなくてはならないという思いがひとり自分だけのものではないと確信し,それを組織成員のものとしようと動きはじめたとき,それは既にリーダーシップを発揮しようとしているのである。

 その意味で,リーダーとリーダーシップは区別しておきたい。リーダーは役割行動であり,リーダーシップはポジションに関係なく,その問題やタスクを解決するために必要と考えたら,自らが買って出て(あるいは誰かの委託を引き受ける場合もある),その解決に必要な周囲の人々を巻き込み,引っ張っていくことである。つまり,トップにはトップの,平には平のリーダーシップが求められる。リーダーシップはその人の役割遂行に応じて,問題解決や何かの実現を果たすための手段なのである。職位が上のほうに行けばいくほど,リーダーシップがないことが目立ち,下へ行くほど,リーダーシップがあることが目立つ。上に行けばいくほど,リーダーシップを発揮しやすい条件と裁量を与えられているから,あるのが当たり前だから,ないことが目立つのである。

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U

 

リーダーシップを,ケースで考えてみる。たとえば,部下に,営業成績はいいが,関係する業務処理の部門としょっちゅう揉め事を起こし,事務部門は現場の邪魔をするなと批判する,というタイプがいるとしよう。

トップセールスとして,この男,仮にAとしよう,Aは自分一人で仕事をしている。その気概はよしとしても,一人でやる仕事には限界がある。本当の意味で仕事ができる人間は,一人で抱え込んで,自分だけで仕事をしようとはしない。人やチームを動かして,あるいはその力を借りて自分ひとりでやる以上のパフォーマンスをあげようとする。たとえば,ひとりで事務部門とやり取りして,うまくいかないからといって,その部署を批判するのではなく,同僚や上司に働きかけ,業務との関係を改善して,営業のパフォーマンスアップに資するようにみずから動こうとする。そのためには,ただ自分の成績だけを頼んでも,上司も相手も動かない。

ではどうすれば人は動くのか。必要なのは,この仕事を真に完結させるとはどういうことか,そのために何が必要なのか,そのためになぜ上位者や周囲の力が必要なのか,それが組織にとってどんな意味があるか等々を明確にできることである。その場合,大事なことは,2つである。

第一は,何を(誰をといってもいい)どこまで動かさなくてはならないのか,その案件,問題の広がりや影響の大きさがわかっていることである。問題解決の鍵は,誰を,何を動かさなくては問題が動かないかをみきわめることだが,ここではそれを指している。

第二は,自分にとって,上司にとって,組織にとって,それをすることにどんな意味があるかがわかっている。要は,旗が明示できることである。

つまり,自分(ひとり)では(裁量を超えていて)解決できないこと,あるいは解決してはいけないことを解決するために,解決できる(権限のある,力量のある)人を動かして,その解決をはかっていこうとすることが求められている。そのとき必要になるには次の3つである。

@「何のために」「何を目指して」という意味づけが明示できること

A必要な人々に,その意味をきちんと伝えていく力があること

Bそれを一緒にやっていく関係づくりをすること

上や横を巻き込むためには,自分の現場レベルだけでは解決できない,あるいは解決してはいけないから,相手に動いてもらいたいと,相手に認めてもらわなければならない。そのために必要なのは,

 ●それが組織全体,あるいは相手部署,あるいは上司にとって,動く必要のあることを納得させるものであること

 ●それが,自分の役割遂行上,重要な問題であり,相手を納得させるものであること

 をきちんと伝えなくてはならない。それには,自分自身が,

 ●自分自身の組織での位置づけ,自分のチームや仕事の意味づけができていること(自分の役割との関係づけ)

 ●起きている問題の奥行きや広がりを押さえ,そのことのもたらす意味づけがきちんとできていること(問題の意味づけ)

である。トップセールスとしての意識だけでは,人は動かない。まして,それが他部署の人間ならなおさらだ。相手を動かす意味づけができないのは,自分を動かす意味づけ,自分の仕事の組織での位置づけとその意味づけ,自分自身の組織での位置づけと意味づけができていないことにほかならない。

 これがきちんとできることが,仕事ができることだとすれば,リーダーシップとは仕事の仕方そのものにほかならない。リーダーシップを育てるとは,だから,自己完結させない仕事の仕方を教えるところからはじまるのである。

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V

 もう一つケースを考えてみる。たとえば,チーム全体が盛り上がって,次々案件をものにしている最中,リーダーが上司から他チームに比べて残業が多いと指摘され,チーム運営に水をさされたとしたらどうだろう。

 ここまでせっかくチームを一体化し,盛り上げてきたところで,残業を減らせと上司に指示され,チームの雰囲気に水を差されたと,上司に批判的になるのか,チームを預かるものとして,チーム全体の管理に手抜かりがあったと考えるか,ここではチームリーダーのリーダーシップの視点から考えてみたい。

人もそうだが,チームは自己完結しているのではなく,組織全体の中で,その役割がある。上位者にとって,そのチームの成否が自分の預かる部署全体の成否につながる。チームをあずかるものは,上位者との関係の中で,自分に何が求められているかを常時考えながら,チーム運営をはからなくてはならない。このチームリーダー,仮にBとしておく。Bには業績しか見えていないが,チームをあずかるとき,人の管理と仕事の管理の両方がある。更に言えば,もうひとつ自己の管理もまた,チームマネジメントの要になる。Bは,そのチームの咎が自分にとどまらす,上位者にも及ぶことがわかっていなくてはならない。

チームリーダーに求められるのは3つの役割となる。

@旗を立てる機能(指示機能)

何のために(目的),何をするか(目標),どこへ向うのか等々,チームの仕事の意味づけと組織全体とのリンケージ(関連づけ)をとり,クリアな旗印を明示することである。

A巻き込む機能(盛り上げ機能)

立てた“旗”をどう実現(達成)するかの手段として,目的達成のために,チームとしての活力を維持・向上させるために,必要なことはすべてが対象となる。どうメンバーをまとめ,集団としての力を盛り上げていくかを工夫し,実践する。場合によっては上位者だけでなく,チーム外のキーマンも巻き込む。そこで一番肝要なのが,コミュニケーションであり,それぞれとのチャンネル(土俵)が確立していることである。こうしたコミュニケーションのチャンネル(土俵)のひとつが,ジョハリの窓でいうパブリック(2)を,日常からつくっておくことである。たとえば,自分(リーダー)が知っている自分の,果たしている役割,している仕事の仕方,進め方,何を重視し,何に価値をおいているかを,他人(部下ひとりひとりあるいは上位者,周囲の人)が理解してくれている,そうしたパブリックのできている分だけ,ひとりひとりとのコミュニケーションの土俵ができていることになる。

Bやりきる仕組みづくり機能(仕掛けづくり機能)

目指す旗を確実に達成するために必要なさまざまな仕組みや仕掛けをつくり,環境や条件整備をして,旗の実現をお膳立てする。一人一人に自主的に取り組ませるための仕組み,業務分担の見直しや調整,チーム全体が足並みが揃う仕掛け,障害物を取り除く工夫,途中経過や進捗状況を共有化する仕組みづくり等々をつくっていく。

リーダーが確信をもってチームの目指すものを指し示せなければ,チームメンバーが毎日の仕事の意義(何のためにそれをするのか)に確信をもてるはずがない。それこそが“旗”が必要な理由である。それによって,何のためにそれをするのかという目的意識が明確となり,そのために何をしたらいいか(目標意識),どういう役割を果たせばいいのか(役割意識),チームメンバーがひとつの目的実現のために一体となって取り組むことができる。しかしそれが,組織全体とのリンクを欠いた,チーム内に自己完結したものでは,そのパフォーマンスは,組織の何にも寄与しないことになる。何にもリンクしない孤立した旗は,チームの旗としての意味をなさない。

まずはじめに必要なのは,自分自身が担っている仕事の意味を自覚し,それを実現するために,チームは何をすべきかを明確にすることがまず前提となる。そのためには,所属している上位部門をあずかる上位者が,何を目指し,何をしようとしているかが,つかめていなくてはならない。その上で,その達成に貢献するために,チームとして,何に重点を置くのか,何をすべきなのかを明確にする。これが,チームの旗である。それは,チーム構成員を巻き込む目印であり,場合によっては,この旗の故にこそ上位者に動いてもらわなければならない大義名分ともなる。

 いまある役割を当たり前のように前提にするのではなく,組織の中で何を達成するために自分がそこにいるのか。そのために何をすべきなのかの確認が必要である。また,公式の管理機能だけが役割ではない。それを果すだけなら,自分でなくても他の誰でもいいことになる。自分は,目的達成のために何をすべきかを,主体的に考える中で,役割をつくりあげていく。これが旗を設定する意味といっていいが,必ずしも数値目標や業務目標だけを意味しているのではない。もう少し定性的なリーダー自身のやりたいこと,目指すこともそこに織り込みたい。仕事の奴隷ではなく,仕事のボスでなくてはならないのだから。

 チームの旗が明確になることによって, 部下ひとりひとりが,自分が何をすべきかという自分の旗を立てやすくなる。担当としてどういう旗を立てれば,チームの旗に貢献できるのかと,メンバーひとりひとりが,自分の役割を主体的に受けとめなおすことができるのである。

それは,メンバーひとりひとりが,チームの中での自分の意味づけ,自分の仕事の意味づけを考えることによって,自分とチームとの関わり,自分と上司との関わり,自分の仕事と他のチームメンバーとの関わり,自分たちのチームの仕事と上位チームの仕事とのかかわり,更には組織全体とのかかわりを考えていくことなのである。それが,自分の立場,役割として,自分のチームの目標を達成することが,自分や自分のチームの所属する上位チームの目標(チームの目標からみると目的になる)にどうリンクしていくかを意識することである。つまり,旗をたてるとは,自分および自分のチームが何をすべきかを自分なりに明確にする作業なのである。それは,自分のチームでのポジショニングをはかり,ひいては組織の中でのポジショニングを意識することにつながるのである。

 

この問題で,仮に△△部長を巻き込んで自チームをサポートしてもらうには,それが,上司にとって動ける意味のあるものになっていなくてはならない。それは,組織全体の方向性とリンクしていることだ。自分(あるいは自分のチーム)は,組織全体の中で,何をすることを求められているのか,自分(あるいは自分の預かるチーム)の存在意味(チームの目的)を,明確にしなくてはならない。自分(あるいは自分のチーム)の使命と自分自身の意思を織り込んで,自分(あるいはそのチーム)として何をするのかを明確にしてはじめて,チームリーダーのリーダーシップは機能する。

その意味で,これだけパフォーマンスをあげているのに,残業規制とはけしからんというのは,チーム内に自己完結したものの見方にすぎない。組織全体の方向性にかなうように,どうチームを運営していくかを考えなければ,リーダーシップを発揮しているとは言えないのである。

 まずは,全体の方向性を見定めなくてはならない。大きな経営の方針のもとに,たとえば,業務の効率化という方針のもとに残業削減が位置づけられているのか,あるいはコスト削減の一環としてシーリングが定められているのか,それによって,取り組み方が変わってくる。つまり,組織全体の方向性にどう関わるかということは,何のために残業削減するかの位置づけが変わるのである。たとえば,いきなり総枠規制をかけるのか,業務や仕事の効率化の積み上げとして削減をはかっていくのかによって,枠組みに添うように仕事を変えるのか,仕事の変え方に応じて減らしていくのかが変わってくる。一番大きいのは,メンバーのそれへの関わり方である。

いずれにしても,チームにとって,営業成績のクリアしつつ残業を見直すことは,同じ人員で,いかに少ないインプットで効率的なアウトプットを引き出すか,ということを共有化することである。組織全体が目指している方向にリンクさせながら,自分たちの意味づけを共有化していかなくてはならない。自分たちなりにそれをすることの意味を見つけ出さなくては,単なるやらされ感で仕事をしているのと同じである。それをしないためには,本格的に全員の役割分担,仕事の仕方を,あわせて見直さなくては意味がない。それは,チーフをおいて,口火をきることはできないはずである。

仮に,総枠規制が全社の方針でも,それをチーム内で徹底するとき,いきなり結論を下すのではなく,その結論を出すプロセスに,メンバーも参画し,その意味を共有化することである。場合によっては,総枠に添うように,仕事を見直すアプローチをとっても構わないのだ。そのとき,

●チーム内で努力できること(チーフのコントロールできること)

●チーム間で調整できること(チーフ間でコントロールできること)

●上司の決裁を要すること(上司の裁可のいること)

にわけて,チーム内で徹底して検討する必要がある。まず,自チームの事情だけでは,上司は動かない。チームでできること,チーム間でできることをクリアしておいた上で,

●△△部全体の位置づけ(上位部署との関係)を考え,

●その部署内での自チームの役割,責務を考え,

●それを達成するために,どういうことが必要なのかという提案をする,

という姿勢が必要なのである。それは,その提案こそが,△△部長のパフォーマンスにとっても不可欠であるということを,きちんと説明できるものでなくてはならない。

上位者を動かせなければ,チームリーダーのリーダーシップは,自己完結させた内向きになる。それはリーダーシップとしては十分機能しているとは言い難い。そして自身が上に対する働きかけができていないリーダーは部下のリーダーシップをどう育てるかに気づくことはできないのである。

 

【注】

(1) Leadership shipは,Friendshipのような状態を示す意味,professorshipのように身分・ランクを示す意味,Leadershipのようなスキルを示す意味をもっている。語源的な意味は別として,Leadershipとは,リーダーである(状態を保つ)ためのスキル(技量)と考えたい。

(2) ジョハリの窓は,ジョセフ・ラフトとハリー・インガムのファーストネームからつけられた。自分にわかっている自分/自分にわかっていない自分,他人にわかっている部分/他人にわかっていない部分の4つの窓で,自己理解してみようとする。パブリックな部分とは行動・感情及び動機について,自分がよく知っていて,他人にも知られている部分。ここでは自分の考えや言動が容易に相手に通ずる。パブリックを広げる方法はふたつである。第一に,自分が何を考え,どう思っているかを語ることである。自分が何を目指し,何をしようとしているかを明確にすることによって,プライベイトな部分を小さくできる。第二は,相手からのフィードバックを聞くことである。自分の行動がメンバーからどう受け止められているかをフィードバックしてもらい,自分の知らない部分,気づいていない部分を受けいれることによって,ブラインドの部分を減らせるのである

リーダーシップについては,リーダーシップとは何かリーダーシップに必要な5つのことまた管理職については,管理職のの役割行動を,それぞれ参照してください。

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