発想力アップのためのマイ・チェックリストづくり-3-
発想の原動力タイプをチェックする
自己流チェックリストをつくる準備作業
既存チェックリストからチェック項目を拾う
自己流チェックリストをつくる
自分のスキルに整理する
自分流のスキルをもう一歩つめる
発想のキーワードを見つける
発想プロセスのキーワード化
発想のキーワード化作業の意味
自己流チェックリストを使いこなす
自分の発想タイプを参考に,自分のチェック項目を見直してみてください。ことばを使いやすいものに代えてみるのがいいでしょう。チェック項目の追加や削減はありませんか。それは箇条書きになりましたか?それで発想を試してみていただきます。
自己流チェックリスト項目 |
その狙い |
チェック項目を使いやすく書き直す |
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たとえば,筆者なら,次のように,表現を変えてみますし,更に1項目追加してみます。これを洗練させたのが「バラバラ化の4原則」になるのです。
自己流チェックリスト項目 |
その狙い |
チェック項目を使いやすく書き直す |
これに似たものはないか |
連想や類比が鍵になる |
似たものを探せ |
主客を代えたら |
前提にしているものを疑う |
別の立場から考える |
何のために |
目的をついつい忘れる |
それで何が実現するのか |
対で考える |
一面にとらわれる |
必ず対比して考える |
しかし,一度作ったら完成ではありません。何度も何度も試しながら,
@質量ともに大量の発想数を出すのに向いているか
A何か不足している感じはないか
B使い勝手の悪いものはないか
Cそれで,本当に発想を展開するキーになっているかどうか
等々を切り口に点検し,差し替えていっていただきたいものです。これが,ご自分の発想の旗印です。少なくとも,いつでも使える項目があることで,パニックになる時間を短縮できるだけの自信にはなるはずです。
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自分流のスキルをもう一歩詰める
“バラバラ化”のスキルとして,
@視点を変える
Aカタチを変える
B意味を変える
C条件を変える
の4つを挙げ,その「変える」の意味は,それを意識してみるということだ,と考えています。たとえば,「視点を意識してみる」とは,「〜と見た」とき,「いま自分は,どういう視点・立場からみたのか」と振り返ってみる。そのとき,会社の立場で見たのだとすれば,それ以外の,父親として見たらどうなるか,客の立場で見たらどうなるか等々,無意識にとっている視点を意識し,「では,別の視点ならどうなるか」と,改めて別の視点を取ってみることで出発点とすることができる,ということでした。
しかし,ここには,ほんの少し嘘が入っています。嘘というより,正確には,一種の後知恵が入っているのです。
正確な記憶ではありませんが,ある生物学者が,こんなことを言っていたことがあります。彼は,ある高山に生息する蜂の研究をしていました。生態が余り知られていないため,研究室で生育してみることを考えたが,一度目は,冬を越せずに全滅した,次の年,気温が問題だったのではないかと気づき,その高山の温度に近い気温に一定に保ってみたが,やはり全滅してしまいました。翌年も,より厳密な温度管理をしてみましたが,やはり全滅しました。失敗を繰返したあるとき,その学者は,「もしや,と気づいた」そうです。高山の温度に一定にするといっても,捕まえたときの夏の温度を保ったが,「もしかすると,夏は夏の,冬は厳冬の温度が必要なのではないか」というわけです。そこで,一年間の温度変化を調べ,そのサイクルに合わせた気温変化を実現してみたところ,翌年孵化に成功した,というのです。
そこで,問題は,「ハッと気づいた」というところです。まさか,学術論文に,「はっと気づいた」とは書けず,もっともらしい仮説を記述したそうですが,実態はこんなものだった,といった趣旨の話でした。
ここで申し上げたいことは,この「はっと気づいた」瞬間のことではありません。その前段階で,頭はフル回転しているはずです。まず,一定の温度に保ってはどうかと着想しています。いわば,一定温度維持仮説を立てたことになります。
が,それが失敗して,自分たちの行動側の瑕疵ではないかと疑い,温度管理不徹底仮説を試し,それでもだめだったわけです。
そこには暗黙のうちに,その蜂を捕獲したときの気温でなくてはならないという先入観があったことになります。で,想像するに,無意識で,山の気温そのものに目を向けたのではありますまいか。そうすると,山であれ,地上であれ,気温が一定ということはありえません。すごしやすい気温を保つのは人間だけなのです。
生物学者のこの“はっと気づく”体験が,温度を山の一年の変化に合わせればいい,つまり気温の高い夏と寒い冬の両方が必要なのではないかという,通年気温変化仮説とでもいうべきものにたどりつくことになるのです。
ここから我田引水するつもりはありません。ただ,大事なことは,この学者の論文の結論からは,その発想の悪戦苦闘のプロセスは見えないということなのです。この結論には,そういう発想にたどりつくプロセスは隠されているのです。
それは,バラバラ化の視点についてもいえるということです。これは,筆者の発想プロセスの方法を知識化したもの(語れるスキル化)には違いありませんが,その結論からだけでは,プロセスがブラックボックス化されているのです。
本当に必要なのは,そのブラックボックスになっている部分そのものなのではないか,ということなのです。
たとえば,発想技法には膨大な種類がありますし,チェックリストも多くのものがあります。どの技法も,その発案者の発想プロセスの方法化,あるいは知識化なのです。
結論部分からは,どうやってそういうものが生まれたのか,どういう必然性で,そういうものにまとまったのかは,決して見えませんし,あるいは作った本人にも分からない部分があるかもしれません。バラバラ化の4つの切り口にしても,いわば,結論に過ぎないのです。それが,後知恵と申し上げた理由なのです。
しかし,自分の発想力を高めようとするとき,最も参考になるのは,そのブラックボックスになっているプロセスそのものなのです。
どの発想技法も,その発案プロセスは語られることはありません。エジソンは,99%の汗と1%のインスピレーションと言いましたが,その汗とは,プロセスに流すもののことです。
自分の発想プロセスを目に見えるグラスボックス化するのは,各自それぞれ試みるしかありませんが,筆者は,そのプロセスの鍵を,“対”あるいは“対にして考えること”にあると考えています。
これを合理的に説明しようとすると,うまくいきませんが,バラバラ化の「〜を変える」という切り口で,何をしようとしていたのかということを具体的にみてみると,たとえば,
「位置を変える」というのは,どこからどこかへであり,
「まとめる」というのは,何かをなにかにであり,
「カタチを変える」というのは,何かから何かへであり,
「理由を変える」というのは,何かから何かへであり,
等々,すべて前と後,原因と結果というように,何かと何かの対比なのであり,それを一言で表現してみると,何かと何かの“対”
あるいは“対にして考える”という言い方がぴったりくるということなのです。
ここで言う“対”は,対概念チェックリストがそのイメージを具体化するのに最適でしょう。たとえば,
多−少/長−短/中空−充満/浅い−深い/拡大−縮小/広−狭/厚−薄/濃−薄/強い−弱い/動−静/加−減/開−閉/重−軽/明−暗/量−質/速−遅/天−地/高−低/左−右/前−後/遠−近/親−疎/頭−尾/最先端−最後尾/最良−最悪
等々。それをたえずチェックするキーワードとするという意味です。たとえば,「前から見てこう見えた,とすると,その反対,後から見たらどうなるか」「オレの視点ではなく,オマエの視点ならどうなるか」等々。
それを,あえて図解してみるなら,下図のようになります。必ずしも,位置関係や物理的なものだけをイメージしているわけではありません。ただ,図にしようとすると,その部分しか描けないだけなのです。
遅れているもの← →先行するもの
前から見る後から見る,右横から見る左横から見る,大人の視点子供の視点,親の視点子供の視点,役所の立場住人の立場,窓口の効率申込者の便利,売上高と利益,止める便利走る効果,外す便利止める効率,開く便利閉める便利等々,対として常識に考えられるものは,当然いくつか浮かびますが,ここで重要なのは,対は「あるものとして」ではなく,対に「してみる」ことです。
だから,既知の対だけをイメージするのではありません。あえて対においてみる,対において対比してみることで,発想してみるということです。
「緑と青」でもいいし,単純に「イエスとノー」ではなく,「ちょっと賛成と大いに賛成」でもいいし,「プリンターとコピー」でもいいし,「スキャナーとカメラ」でもいいのです。
そう置いてみることで,見えてくるものを期待する。だからあえて対として対比してみることが重要なのです
対は,いわば,「ああでもないこうでもない」と考えあぐねる,発想の悪戦苦闘プロセスそのものの筋道を言っているだけなのです。
数学者の岡潔氏は,「タテヨコナナメ十文字に考える」と言い,エジソンが「99%の汗」と言ったのも,このプロセスを差しているのです。
この“対”に似たキーワードになる,発想のコツを,一人一人が見つけることが,その人にとっての,発想スキルづくりの最後の詰めの作業なのだといっていいのです。
(以下発想力アップのためのマイ・チェックリストづくり-4-へ続く)
発想トレーニングおよび目次を参照してください。
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