ホーム 全体の概観 侃侃諤諤 Idea Board 発想トレーニング skill辞典 マネジメント コトバの辞典 文芸評論


Critique Back Number 66


高沢公信"Critique"/2010.7.20

 

どうすれば部下はやる気になるのか【2】

 

それって本当にやる気の問題なの?
どんなときにやるきをなくすのか
そもそもやる気とは何か
やる気を育むチームの条件
コミュニケーションの土俵をつくる
どうやる気をおこさせるか


  • コミュニケーションの土俵をつくる

    ●コミュニケーションのセットアップ

     まずは,相手が何を感じ,どう受け止めているかを確かめる。その際,いきなり一対一で面談するのもいいが,相手に鎧を装わせるだけだ。たとえば,立ち話から,「いま時間ある?」とか,「ちょっといいか?」と声をかけ,「最近の仕事について話しを聞きたいが,いいかい」と,両者が話す場を設定するところからはじめるのがいい。まずは,さりげなく近況を聞きながら,自分が気になっていることを,きちんと伝えてみる。そこで本人は言訳したりするかもしれないが,できていない状態を問題にするのではなく,たとえば,

    ・いまの状態をなんとかしたいと思っている,

    ・そのために一緒にそれを解決したいと思っている,

    と,一緒になんとか解決したいという姿勢をきちんと示すことである。

    ●危機意識を共有する

    本人だって,いま状態をいいとは思っていないかもしれない。責めるよりは,それをなんとかしないか,と問いかける姿勢が必要である。たとえば,自分がやる気をなくした例でもいいし,周囲で見聞した例をあげてもいいが,このままではまずい,この状態がつづくと本人にとって決してプラスにならない,と真摯に気遣っている気持ちを伝える必要がある。できれば,このままではまずい,なんとかしなくてはいけないという危機意識を共有できるのが一番いい。もちろん,いまのチームにとっての危機感を伝えるのも悪くはないが,上司は自己保身のために説得している,と不信感を与えるだけかもしれない。君が本気を出してくれると,チームとしても,自分としても,助かるけどね,程度のことを,吐露するのは悪くはないが。


  • どうやる気をおこさせるか

     必要なのは,やる気がある状態を引き出し,それを促進するものをみつけ,それを阻害するものをのぞいて,これならやれるという見通しと見積もりをもたせることである。それは,相手の状態によって,アプローチが変わる。大きく分けて,

    その1;やる気を阻害するものがある

    その2;その気にさせる意味や価値を見失っている

    にわけて考えていくことになる。まず阻害要因から考えてみる。

    その1:やる気の阻害要因を除く

    たとえば,妨げているものが,やる気の条件の,

    @その気にさせる意味や価値を見失っている

    A「やれた!」という成功感を味わえていない

    B「やれる(かも)」(自信)が失われている

    Cメンバーから支援がえられない(落ちこぼれ感)

    Dメンバーとして受け入れられていない(疎外感)

    どの段階にあるかを考えたとき,@ABは,本人に起因する内的要因でもあるが,CDの上司やメンバーの非協力,無関心,放置という外的要因によって生じていることもある。もしそうなら,チームのマネジメントそのものに起因している。他のメンバーにも大なり小なり同様の問題が起きている可能性がある。チームの役割分担,チームの協働体制,コミュニケーション等々,改めてチームのあり方全体を見直す必要がでてくるかもしれない。

    ●妨げているものをピンポイントで見つける

    本人に起因していることを例にとって考えてみる。@は,後で考えるとして,ABで,本人の知識,技能,経験の不足(事実としての不足)あるいは不足感(本人の自信喪失)に起因しているなら,

    ・わかっていないこと(知識)

    ・できないこと(スキル)

    ・やったことがない(経験)

    の何が足りないのか,足りないと感じているを,具体的につかむ必要がある。具体的な事例にもとづいて,「指示されたこと」と「できた結果」を対比し,ひとつひとつ具体的に洗い出していかなくてはならない。上司や先輩にとって「できて当たり前」のことでも,できていないことがある。その場合細分化されたスキルや知識だったりするので,原因となったつまずきの要因をピンポイントまでブレークダウンする必要がある。

●できる実感をもたせる第一歩でなくてはならない

不足しているものが明確になったら,いつ,どういう機会に,どんなかたちで身につけていくかを具体化していく。それには,できなかったことが,できたと実感できるような,小さなステップからはじる。ここが一番大事なポイントになる。はっきりわからないときは,ためしにやってみて,そのステップを一緒に決める。後戻りしてもいいので,無理せず,一歩でも半歩でも四分の一歩でも,確実に自分ができるようになっていることを,自分でも確かめられ,周囲からも認知される成功が得られなくては意味がない。

大事なことは,できたという事実を,「できたね」とタイミングよく言葉に出して認めることである。ほめられることに,性格的に抵抗を示すものも,事実には素直に反応できる。わずかなことでも,できるレベルに上がったことを,ひとつひとつをきちんと認める姿勢が,やる気のバックアップになる。

それを段階的に一歩一歩踏んで,できた体験を積み重ね,自分がやった結果できた満足感を味わせる。できたことはやりたいと思い,やれたことは,もっとうまくやりたくなるはずである。ただ,しばらくは本人のペースを意識する必要がある。当然他のチームメンバーの協力も欠かせないだろう。

●サポートすることを明言すること

このプロセスでは,「できる(かも)」が感じられるように,

・現有のスキルや知識を正確にフィードバックし,

・やれる見通しをつかむためのヒントや助言を与えて

・後押しとなる励ましをして,

まずは,第一歩を踏み出させ,ついで,

・きめ細かなフォローの姿勢,

・どんなときにも相談に乗ったり,支援するという態度,

・具体的で,肯定的な承認とプラスのフィードバック

によって,確実に「できた!」につなげていく。大事なのは,言葉である。言わなくてもわかるではなく,言わなくては伝わらない。ひとりで抱え込まなくても,メンバーや上司がサポートするし,そのための機会や場はいつも開いていることをきちんと言うことが,不安を支えるつっかい棒になる。同時に,きちんと伝えておきたいのは,人の力を借りることの重要性である。今後より大きな仕事をする際には,どれだけ人の力を借りられるか,人の力を引き出せるかが問われる,いまそれを学ぶ機会でもあるのである。


その2:その気にさせるものを確認する

●やってみたいと思う意味や価値を確認する

 その気になれるものを見つけ出すのは,簡単ではないが,キーワード風に言うと,「なりたいこと」「やりたいこと」「こだわっていること」「大事にしていること」「魅力を感じるもの」「時間を忘れて打ち込めるもの」等々を言葉に出させてみる。仕事と私生活は別,自分の好きなことと仕事とは関係ないと思い込んでいることも多いので,私的なことに踏み込んでみることも突破口になる。仕事の経験だけでなく,「いままでわくわくしたことはなかったか」「自分でやった!と思った経験はないか」といった質問も投げかけてみる。上司が趣味で熱中したことが仕事に役立った例なども,相手に自分の中から,価値や意味を見つけ出すヒントにはなる。

 何が本当にやりたいことかが見つかるとは限らない。たとえば,漠然と「企画的な仕事」と,憧れをいうかもしれない。それを一笑しないことだ。何がしたいことを見つけるための,ひとつの取っ掛かりと考えて,その理由やその何をやりたいと思ったかを掘り下げてみる。ぼんやりした憧れは,意外と本人のやりたい的の周辺であることが多い。企画と言いながら,自分のアイデアで仕事をしていくことや,人のやらないことを提案することや,ひとを巻き込むといったことなのかもしれない。それをピンポイントに絞ってみることで,業務との接点が見つけやすくなる。

●上司としての期待をきちんと伝える

同時に,上司側として,チームメンバーの一員として,「どうなってほしいか」を,チームの全体像からブレークダウンして,具体的に提示する。どういう役割を担ってほしいのか,その役割はチーム内でどんな意味があるのか,そのために何ができるようになってほしいのか,それは本人にどんな意味があるのか等々。そのとき,いま何が,どれだけできているかを具体的に示すことが必要である。

その際,現有リソースについて,十分できていること,あと少し努力すればできること,今後の課題になっていることをきちんと示す。あるいは,本人も気づいていない特徴に目を向けてやるのも大事である。

●具体的な仕事の中にいかせると感じさせること

 やりたいことのすべてが仕事の中で実現できるわけはないが,「やりたいこと(興味・関心)」と「やらなくてはならないこと(期待)」の接点を,具体的な業務にみつけられるよう,自分が生かせる,意味があると思わせるものを,一緒に考えていく。個人の(こうしたいという)目標とチームの(こうなってほしい)目標をつなげることで,日々の仕事ひとつひとつに,自分にとっての意味が見えてくるようにするのである。それには,本人のやりたいことがピンポイントで具体化されているほど,接点となる具体的な場面や仕事が見つけやすいはずである。

【チームメンバーとしての目標(しなくてはならない)と個人目標(したいこと)の接点】

このとき大事なのは,それをきちんと着地させるために,

@「やりたいこと」が,いまの仕事の中に,具体的に示せること,

Aさらに次の仕事や将来の仕事に,具体的に展望できるようにすること,

B「やれる」という感じをもてるように助言とサポートをすること,

C「やれた!」となるために,具体的な一歩を経験できること

である。その先にどんなステージが描けるのかを考えることは,ただ直近の仕事をこなすだけの対処療法で終わらせないために不可欠である。AをやったらB,BをやったらC,CをやったらD,というステップアップの全体像を具体化することで,ステージ毎に意味がでて,いま何が必要かが全体の中で見渡すことができる。そのとき具体的なモデルになる人物があるとなおいい。(了)

やる気については,“やる気”をどうカタチにするかを参照ください。


侃侃諤諤ページ
【目次】

冒頭


侃侃諤諤ページ
Critique Back Number81ページ Critique Back Number82ページ
Critique Back Number79ページ Critique Back Number80ページ
Critique Back Number77ページ Critique Back Number78ページ
Critique Back Number75ページ Critique Back Number76ページ
Critique Back Number73ページ Critique Back Number74ページ
Critique Back Number71ページ Critique Back Number72ページ
Critique Back Number69ページ Critique Back Number70ページ
Critique Back Number67ページ Critique Back Number68ページ
Critique Back Number64ページ Critique Back Number65ページ
Critique Back Number62ページ Critique Back Number63ページ
Critique Back Number60ページ Critique Back Number61ページ
Critique Back Number58ページ Critique Back Number59ページ
Critique Back Number56ページ Critique Back Number57ページ
Critique Back Number54ページ Critique Back Number55ページ
Critique Back Number52ページ Critique Back Number53ページ
Critique Back Number50ページ Critique Back Number51ページ
Critique Back Number48ページ Critique Back Number49ページ
Critique Back Number46ページ Critique Back Number47ページ
Critique Back Number44ページ Critique Back Number45ページ
Critique Back Number42ページ Critique Back Number43ページ
Critique Back Number40ページ Critique Back Number41ページ
Critique Back Number38ページ Critique Back Number39ページ
Critique Back Number36ページ Critique Back Number37ページ
Critique Back Number34ページ Critique Back Number35ページ
Critique Back Number32ページ Critique Back Number33ページ
Critique Back Number30ページ Critique Back Number31ページ
Critique Back Number28ページ Critique Back Number29ページ
Critique Back Number26ページ Critique Back Number27ページ
Critique Back Number24ページ Critique Back Number25ページ
Critique Back Number22ページ Critique Back Number23ページ
Critique Back Number20ページ Critique Back Number21ページ
Critique Back Number18ページ Critique Back Number19ページ
Critique Back Number16ページ Critique Back Number17ページ
Critique Back Number14ページ Critique Back Number15ページ
Critique Back Number12ページ Critique Back Number13ページ
Critique Back Number10ページ Critique Back Number11ページ
Critique Back Number8ページ Critique Back Number9ページ
Critique Back Number6ページ Critique Back Number7ページ
Critique Back Number4ページ Critique Back Number5ページ
Critique Back Number2ページ Critique Back Number3ページ
Critique Back Number0ページ Critique Back Number1ページ
Critique Back Number【目次】へ戻る

ホーム 全体の概観 侃侃諤諤 Idea Board 発想トレーニング skill辞典 マネジメント コトバの辞典 文芸評論

当サイト掲載の論文・論考,スキル・技法,チェックリスト,研修プログラム等々についてのご質問・お問い合わせ,あるいは,ご意見,ご要望等々をお寄せ戴く場合は,ppnet@d1.dion.ne.jp宛,電子メールをお送り下さい。
Copy Right (C);2016-2017 P&Pネットワーク 高沢公信 All Right Reserved