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Critique Back Number 52


高沢公信"Critique"/2007.9.20

 

こうすれば企画はカタチになる【2】
〜忘年会を例にして〜

 

企画に何を見るか〜企画には何が必要か
企画に当って何をすべきか
企画づくりの基本スタンス〜誰のために企画するのか
自主企画と依頼企画の違い
企画づくりの流れ
企画づくりは仮説の連続です
コツさえわかれば企画にできる
企画したいことを構造化する


 企画は,通常自分の「こんなものがあればいい」という関心や「こうしたい」という問題意識だけで立ち上げることは少ないと思います。

 たとえば,よくあるのは,

@上司や関係者から「〜について企画してくれないか」といった指示や要請,要望

A関係部署や出先から「〜について企画にならないか」といった依頼や問い合わせ,要望

B部下や後輩から「〜について企画したいのだが……」といった相談や申し入れ,依頼

C客先やユーザー等から「〜について企画はないのか」といった要求や問い合わせ,要請

D顧客からの要望から「〜について企画してみてはどうか」といった問題意識

E自分自身の仕事上で「〜について企画にならないか」といった問題意識や思いつき

 上司から,「〜について企画してくれないか」という指示があったとき,「何をすればいいか」を考えるため,通常は「よそはどうしている」と,横並びで同業他社,他省庁,他部署,他業界,他国はどうしていると考えるところから,はじめるのではないでしょうか?

 しかし,そういう発想は,本コースでは外して考えようと思います。もちろん,そういう企画づくりが無意味とはいいません。

 たとえば,温泉饅頭。どの温泉地にもあるお土産ですが,最初の発案者は,自分の温泉地の何かを解決しようとしてはじめたはずなのです。たとえば,いい土産ものがない,名産がない,客を呼べる名物がない等々。しかし,それを真似た温泉地が,うちもと真似ただけなのだが,結果として,自分たちの名産がないという問題を解決していたとすれば,それでも企画であることには変わりがないからです。

 しかし,ここでは,オーソドックスに,独自にいいアイデアを考えていくというプロセスを中心に企画づくりを考えてみたいと思います。

 その意味では,企画づくりは,

 @企画は,立てることが目的ではないはずである

 Aその企画を立てて,何を実現したいのか(目的)がはっきりしていなければならない

 Bそれがはっきりしなくてはアイデアは面白さや成功例を拾い集めることになる

 C目的がはっきりしていなくては,その企画が適切だったかどうかの評価ができない

 ということなのです。まず,企画は,何を実現(達成)するために立てるのか(目的),現実をどう動かそうとするのか,の確認からはじめなくてはなりません。

 自分の企画でなければ,その依頼主のそれによって実現したいことを確認することが,きかく目的のすりあわせになるはずなのです。

 「このままでいいのか」という“現状への問い”(これが問題意識)から企画は始まるのですが,その“問い”は自分自身の問いだけとは限りません。上司,顧客・ユーザー,関係者,部下(後輩)等々の“問い”かもしれません。しかし,それを明確な企画(の達成すべき)目的と定めたときから企画は始まるはずなのです。

 では,依頼された場合と自分の問題意識から企画にする場合と,どこがちがうのでしょうか?ちょっと考えてみてください。

 依頼された企画も,その趣旨を実現しなくては依頼に答えることになりません。そうすると,その依頼「〜について企画して欲しい」の依頼主旨によって,何を達成したいのかを確認せざるを得ません。それをさかのぼることは,依頼主(個人とは限りませんが)の問題意識を明確にすることになるはずです。

 依頼企画も自主企画も,そのアプローチの仕方は違っているようにみえますが,何を解決すべく企画を立てるかを明らかにするために,そもそもの問題意識を明確にするところから出発する必要があるのです。

 たとえば,依頼企画の場合,図表1−7のように,その目的(その企画によって何を解決しようとするのか)を探ると,依頼主の問題意識,何を問題としているかを明確にしなくてはなりません。更には,忘年会の例と同様,その問題の背景までさかのぼらなくてはならないでしょう。それをすることで,当初の「〜について」という企画依頼でも,その目的を実現するためには,依頼とは別の企画の方がふさわしいことに気づくこともあるのです。この掘り下げは,下図の自主企画の掘り下げと同じはずです。

 しかし,自主企画でも,具体的な問題からスタートするよりは,何となくぼんやりとした関心や問題意識から企画したいことを考え,それによって実現したいことは何かとさかのぼっていくということのほうが多いのではないでしょうか?そのとき,結局依頼企画を立てる場合と同じことをしているのです。

 下図は,前の依頼企画の図を一部手直ししただけです。結局,企画の出発点は,それが自分であれ,他の誰の発案であれ,「〜についての企画」という要請を鵜呑みにするのではなく,それは何を実現(解決)するためなのかを絞り込むことからはじまる,ということなのです。

【ぼんやりした企画したいものから問題を絞り込む流れ】

 結局,企画づくりは,

 @はじめから,現状への問題意識からスタートとして,企画を立てていく場合,

 A顧客や上司の「〜についての企画」から企画し始めたが,実質まったく別の規格を作らざるをえないことがわかった場合,

 B自分がぼんやり「〜について企画」と思ってスタートとしたものが,実質その目的にさかのぼったところ,全く別の企画を必要とした場合,

 のいずれの場合も,何を本当に解決するのかを確かめようとすると,図表1−9のように,問題意識を洗い出さなくてはならないのです。

 それぞれ企画のスタートの仕方は違っても,結果として,図表1−10の点線で囲んだ部分の企画づくりの流れとなっていくことを確認していただきたいと思います。

 以下で,順次考えていく企画づくりの流れは,自分のぼんやりした企画から,真の問題を明確にし,それを解決するために何をしていくかを考えていく,下図の赤い破線で囲んだ部分の流れを取ります。

【ぼんやりした企画したいものから問題を絞り込む流れ】

 その流れを一覧化すると,下図になります。忘年会を例に,本コースで考える企画づくりの流れに沿って,企画づくりをフロー化したものです。このフローと構造が,ここで考えている“企画づくりの筋”となります。

 これをフレームにすれば,下図になります。アイデアの是非や用語,また各細部の不明点はそのままに,どういうふうに企画していくかだけを眺めておいてください。


 下図は,一見ひとつながりでしかないように見える,先ほどの企画づくりのフローの流れひとつひとつが,仮説のつながりでしかないことを示しています。

 つまり,「若い人が参加したがらない」という問題を選び取ったところから,企画が始まっているのであり,もし別の,「宴会だけの忘年会を嫌っている」「他社はもっと面白い」を取り上げたとしたら,また別の流れになるはずなのです。

 企画というものが,結局自分の判断で切り取った一連の流れであること,したがって,別の選択をすれば,全く別の企画の流れになり,異なる案になるのです。

以下続く

企画づくりの全体像については,『企画の立て方・作り方』をご覧ください。


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