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企画の立て方・作り方1

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1.企画は3つの問い直し
2.問題意識をどう掘り下げるか
3.「問題」を「課題」にする

4.「課題」をどうテーマに落とすか
5.テーマの検証からコンセプトへ
6.コンセプトは企画の“へそ”である
7.コンセプトをつくる
8.コンセプトのプロファイル化
9.コンセプトの実現手段を煮詰める
10.コンセプト実現手段の具体化手順
11.企画構想をまとめる
12.行動計画を練り上げる
13.企画にまとめる

 企画づくりを理屈ではなく,マニュアルチックに展開したいと考えている。誰でもが,その手順通りに展開していけば,それなりに企画のカタチにはなる,といったように。

 しかし,実はそのカタチに魂がなければ意味がない。企画すること自体は目的ではなく,企画したことを実現すること,更に言えば,そもそもの企画にいたった,企画によって解決しようとしている「問題」,つまりそもそもの問題意識そのものを達成しなくては,企画する意味がない。それこそが,魂である。したがって,まずは,“企画の魂”に触れるところから始めなくてはならない。

企画の出発点は「思い入れ」である

 企画の「企」の字は,「人」と「止」と分解される。「止」は,踵を意味し,「企」は,「足をつま先立て,遠くを望む」の意味とされる。「画」は,はかりごと,あるいは「うまくいくよう前もってたくらむ」の意味である。当たり前のことながら,企画とは,「現状より少し先のこと」を実現するプランを立てること,ということになる。

 この「現状より少し先のこと」が,いわば企画のアイデアといわれるものに当たるが,大事なことは,アイデアだけでは企画にはならない,それをどうすれば実現できるかの具対策を伴ってはじめて企画になる,ということである。しかし,この言い方では,企画の外側を撫ぜたにすぎない。一体,何が企画の出発点かが,ここにはないからだ。

 企画の出発点は,少しきざに言い方になるが“思い”である。現状への自分の思いである。「もっと何とかならないか」「ここはこうならないか」「もっとこうできないか」「こうなればいいのに」「こうできたらなァ」等々。これを問題意識と呼ぶ。それは,現状へ「問題」発見であり,それを何とかしたい,という思いである。少なくとも,どんなにかっこいい企画も,出発点は個人の思い入れからしか出発しない。その個人的な思い入れなくては,何ひとつ新しいことは始まらない。その意味で,企画の出発点とは,個人の問題意識,あるいは解決したい「問題」そのものである。

  

 それを「問題」にするのも自分なら,それを見過ごしにするのも自分である。たとえば,24時間風呂。多くの人が,毎日何の気なく風呂に入ってきたのに,誰も当たり前と思って気にもとめなかった,あるいはチラリとは思っても一笑に伏した,「何もしないで毎日湯が沸いていたらな」という願望を見過ごしにせず,「解決したい」と思った者がいたのである。「何とか毎日風呂を沸かす無駄を何とかならないか」と考えたか,「一々湯を沸かすのは面倒だ」と考えたかはわからないが,それを空想に終わらせないだけの強い思いを懐いた者がいたのである。その動機が何であったにせよ,その思いが直ぐに忘れてしまう思いつきではなく強く,深かったからこそ,それをどうしたら実現できるのかの工夫へとつながったのである。この思いなくしては始まらないのである。

 更には,その「使い残しの風呂水を飲めるようにできないか」と考える人がいた。だからそれを濾過する「携帯浄水器」が開発されるところに至る。あるいは,外から電話でスイッチを入れられないか,指示する人の平熱に合わせて適正温度を見極めるサーモスタット付きの風呂はないか,シャワーだけ洗面時に使えないか等々。いわば,こうした思いは,際限はない。言ってしまえばわがままだからだ。しかし,わがままとは裏返せば,現状への要望水準が高いと言うことでもある。

 だから,これを拾い上げる端緒となるのは,「このままでいいのか」「何とかならないか」という,現状をよしとしない思いである。それは,現状への不便や不平不満や不愉快だけでなく,現状への願望,夢,空想である。それを「何とかしたい」との思いがないかぎり,企画は始まらない。そこにこそ,「足をつま先立て,遠くを望む」という「企」の意味がある。これこそが,“企画の魂”である。

企画の3つの構成要素

 だから,企画は,間違いなく「問題解決」なのである。

 誰もが見過ごしたり,当たり前として見落としていることを見逃さず,「問題」(これが,企画の頭=何を解決すべき(実現したい)問題としたか)にし,

 それを何とか解決したいと考え,その解決案をカタチ(これが,企画の胴=どう解決をカタチにしたか)にし,

 その実現策(実施プラン)を具体化(これが,企画の脚=どう実施の手順を具体化したか)する

 これが,企画の3つの構成要素である。

 第一は,現状への問い直しである。このままでいいのか,何とかならないのか,という問いを通して,こうしたい,こうすべきだ,こうなってほしい,こうすればいいのに等々といった「問題」が見えてくる。ウォークマンは,どこでもステレオが聞けないコトを「問題」にし,ファミコンはキーボードのあるパソコンによるゲームのマニアックさを「問題」にし,フロッピーディスクは,いちいちケースから出さなくてはならないLPレコードのわずらわしさを「問題」にし………と,これがいわば,「企画」の種である。現状に,何を「問題」にするかで,企画はまったく変わる。もちろん,現状には,自分の生きているいまもあれば,技術の現状もある,情報の現在もある。ヒト・モノ・カネ・チエ・コト・トキ・コトバのすべての現状が「問題」となりうる。ヒト・モノ・カネは説明の必要はないが,チエはノウハウ/知識を指す。コトは,状態だから,ヒトとモノ,モノとモノ,チエとモノ等々といった関係も含まれる。コトバは情報。実は,「問題にする」というのは,「ヒト」を「どうしたい」,「モノ」をどうしたい,ということを意味する。例えば,「ヒト」とはどういうヒト(例えば芸能人を想定してみる)で,その「ヒト」の何をするのか,「ヒト」づくりなのか,「ヒト」育てなのか,「ヒト」探しなのか,「ヒト」救いなのか,「ヒト」ハントなのか,等々。

 第二は,解決の仕方の問い直しである。その「問題」をどうすれば解決できるか,実現できるかという,「解決」の問いを通して,新しい解決のカタチを見つけ出していく。問題が新しからといって解決の仕方が新しいとばかりは限らない。同じ「問題」でも,当然解決の仕方は変わる。例えば,24時間風呂でユニークだったのは,熱帯魚のサーモスタット・ヒーターを応用した湯船に浮かべるフロート式の装置だ。例のレジオネラ菌騒動で人気落ちだが,それで終わるかどうかは現状への思いによって決まる。問題があるということは解決しなくてはならない新たな固定観念があるということである。それは,レジオネラ対策を立てたというような,24時間風呂に別の解決の仕方を考えるということではないのである。いままでの24時間風呂をひとつの現状として,まったく別の「問題」の立て方が求められている。いままでの思いの延長線上ではなく,別の要求水準,例えば,それに入れば,湯が柔らかく,皮膚の老化防止になるとか,皮質保護に有効とか,皮質のみずみずしさを保つのに有効とか,普通の風呂以上の満足,利点,価値,楽しみを創り出すといったような。

 第三は,実現の仕方の問い直しである。どうすれば実現できるのか,どういう手段・手順なら具体化できるのか,を詰めていく。そのとき,実現手段そのものを,売りものにするという発想転換もありえる。例えば,組みたて自動車の「キットカー」は,実現手段そのものを,「解決のカタチ」にしたから,そのアイデアの実現の仕方は,車検・車庫証明の不要,免許証の種類といった現実に走行を可能とする手続きの具体化となる。

「何を解決したいのか」が企画の目的となる

 とすれば,企画は,現状に見過ごさなかった「問題」を,どう解決するかにつきる。企画の目的,あるいは意味は,その「問題」を解決するコトである。だからこそ,始めの思いが重要である。個人発明家ならいざ知らず,組織人としての企画なら,まず個人的な思いの深さがなければならない。それなくてどうして他のメンバーや上司に,その面白さ,優れている点を伝えられようか,そうして初めてメンバーへの伝播力が生まれ,それがメンバーに思いを共有化させる原動力となる。その辺りは次回で触れることになるが,まず企画は個人の思いからしか始まらないことを確認しておきたい。自分がほしいもの,自分が実現したいもの,自分が買いたいもの,自分が使いたいもの……等々でなくてどうして他人がほしがるものになりえようか。その自分の思いが実現できたかどうかが,客観的な評価とは別に,企画した人間にとっての企画評価の前提である。

 つまり,企画は,結局,問題意識(の発生)に始まって,問題意識(の実現)で終わるのである。

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「問題」にする意識(気持)がいる

 さて,「問題意識」であるが,とりあえず,こう定義しておく。「誰も問題にしていないことを意識的に「問題」にすること」。この意味は,「問題」を考えることで,あきらかになろう。

 「問題」はあるのではない。誰かが「問題にする」ことによって,初めて「問題になる」。だから,皆が大騒ぎして「問題になる」からといって,「問題にする」に値いしないことはある。逆に,自分たちのミスを見ないふりし,なかったことにすることで,「問題にしない」ことはできかるかもしれないが,クレームがそうであるように,自分は問題にしたくなくても,顧客の方が「問題にする」ことで,「問題になる」だけである。

 だから,「問題になる」前に「問題にする」ことが必要になる。例えば,

 「疑問」を「問題にする」(問題にできる)主体的な役割意識
  「不安」を「問題にする」(問題にできる)当事者意識の責任感
  「不足」を「問題にする」(問題にできる)カスタマーマインドの生活感
  「不満」を「問題にする」(問題にできる)アウトサイドインの時代感覚
  「理想」を「問題にする」(問題にできる)目的意識の方向感覚
  「願望」を「問題にする」(問題にできる)現状に満足しない批判精神

 等々。これが問題意識である。しかし,考えてみれば,こうして「問題にする」「問題」とは,自分の側に「〜したい」「〜あるべき」との思いがなければ存在しない。〜を実現したい,〜をしたい,〜しなくてはならない,〜すべきだ,等々という思いがあるからこそ,現状を「問題」にすることができる。

 だから,問題意識を掘り下げるスキルより前に,前提として,目的意識や自分自身のやるべきテーマ,果たさなくてはならない使命・役割等々がなくては話にならない。いまはどうか知らないが,以前チューナーを買うと必ず,T字型のFMアンテナがついてきた。これは,ほんの間に合わせにしか使えない代物だが,それは,指向性(感度分布)がないからだ。しかし,これに,TVのアンテナ線(フィーダー)を切って,前後につけてやると,強い指向性をもつ。

 これと同じで,問題意識の感度や深度は,指向性(何について)があって初めて研ぎ澄まされる。目的意識のないところでは,感度もセンスもアンテナも働かせようがないのである。もちろん,だからといって,これが自分の問題意識のないことへの言い訳には使えないことは言うまでもない。

 扇谷正造氏は,問題意識を,

 @「空気にツメをたてろ!」

 A原点に立ち返って問題を洗い直す

 B煮詰めてモノをいろいろな角度から考える

 と,された。「空気にツメをたてろ!」とは,あえて波風のないところに,波風を立てることと言ってもいい。「意識的に問題にすること」とは,この意味である。「原点に立ち返って」とは,何のために(目的),何をする(目標)ためなのかを洗い直せということだ。「いろいろな角度から考える」とは,「タテヨコナナメ十文字」に考えることだ。が,このアドバイスも,そもそもの目的意識が欠けていればから念仏に終わる。

 さて,以上を前提にして,どう問題意識を掘り下げるかに入ることにしたい。

●「問題」への感度を高める前提

 「問題意識」を掘り下げるとは,ついつい「当たり前」のこととして,「問題にしない」固定観念に流されないようにする,ということだ。そのためには,次の3つの基本スタンスから始めなくてはならない。

 @知っていることをアテハメない

 現状(いまあるもの),前提(いままでの経緯),条件(与えられた制約)を,鵜呑みにしない,そのまま当てはめない「知っている」「わかっている」「やったことがある」という思い込みが一番まずい。わかっている!と思ったら,「本当にそうか?」と振り返らなくてはならない。

 A正解はひとつではない

 問い方によって見え方が変わってくる−問い方が変われば正解は変わる。問いによっ て,分からない(知らない)ことが見えてくる,何が知らないことかが見えてくる。  「答」がわかったら終わりではなく,出発点である。別の答を探さなくてはならないのである。人の見つけた答をなぞって何が面白いか。

 Bキャッチボールする

 問わなければ,分からないことがある。問いかけて初めて,見えてくることがある。現場,現物,現実に当たる,誰かに問い掛ける,キャッチボールによって,情報の幅と奥行が現れる。 

 最後のキャッチボールについては説明がいる。この“キャッチボール”には明確なイメージがある。例の3Mのポストイット開発をめぐる逸話で,シルバー氏が,接着剤を開発していて,貼ってもすぐ剥がれてしまうものを創り出した。彼はそれを「失敗」とはみなさず,社内の技術者に,この特性を生かした使い道を考えてくれないかと主張したのである。それに応じて,いつも聖歌に挟む付箋に不便を感じていたフライ氏が,その使用方法として,ポストイットを発想したのである。

 ここには,大事なポイントが2つある。第一は,自分から人にアイデア(考え)を問い掛けるということ。第二は,失敗作という先入観にとらわれず,何とかできないかと受けとめる「聞く耳」をもっている人がいたということ。これが,Bの趣旨である。カーネギーは『人を動かす』の中で,「二人の人がいていつも意見が一致するならそのうちひとりはいなくてもいい人間だ」と言っていた。人の意見が異なること(つまり異見)は当たり前なのである。むしろその違いを発想の多様性として生かせ,ということである。後でも触れるが,例の「ブレインストーミング」はまさにキャッチボールを機能させるためのルール,つまり,異見をいかに活かしていくかの仕掛けと考えるべきなのである。とすれば,何も何人かが集まらなくてはできないのではなく,こちらから,「これどう思う?」と問い掛けていく姿勢があれば,電話やEメールがそのままブレインストーミングになっていくはずなのである。そして,これこそが,人脈が必要な唯一の根拠なのである。

●「問題意識」を掘り下げるスキル

 これは,位置,時間,立場,着眼点,状況等々を意識的変えて,「問い直し」てみるということだ。ここで問題なのは,現状の「いま・ここ」を「ありのまま」ではなく,多角的に見るにはどうしたらいいか,ということだ。筆者は,問い直しの切り口を,次の4つに整理して考えている。これを,勝手に“バラバラ化”と名づけている。

 @視点(立場)を変える 

 いまの位置・立場そのままでなく,相手の立場,他人の視点,子供の視点,外国人の視点,過去からの視点,未来からの視点,上下前後左右,表裏等々

 A見かけ(外観)を変える

 見えている形・大きさ・構造のままに見ない,大きくしたり小さくしたり,分けたり合わせたり,伸ばしたり縮めたり,早くしたり遅くしたり,前後上下を変えたり等々

 B意味(価値)を変える

 分かっている常識・知識のままに見ない,別の意味,裏の意味,逆の価値,具体化したり抽象化したり,まとめたりわけたり,喩えたり等々

 C条件(状況)を変える

 「いま」「ここ」だけでのピンポイントでなく,5年後,10年後,100年後等々

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 ここでいう,「変えてみる」とは,それを意識してみるという意味だ。例えば,「視点を変えてみる」の,「視点を意識してみる」とは,「〜と見た」とき,「いま自分は,どういう視点・立場からみたのか」と振り返ってみるということだ。そのとき,会社の立場で見たのだとすれば,それ以外の,父親として見たらどうなるか,客の立場で見たらどうなるか,………等々,別の視点にもうひとつは気づけるはずである。その意識的な「問い直し」が,少なくとも問題意識の端緒なのである。

  多角的な見方をするための4つの切り口


A視点を変える

(1) 位置を変える 
(2)立場を変える
(3)方向を変える
(4)価値(気持)を変える
 (5) 機能(働き)を変える
 (6) 目のつけ所を変える
(7)データ(情報)を変える


C意味を変える

(1)まとめる(一般化する)
(2)具体例で考える(具体化する)
(3)言い換える
(4)(全体と,他と)対比してみる
(5)区分を変える
 (6) 連想する
(7)喩(たと)える


B見かけを変える

(1)カタチを変える 
(2)大きさを変える
(3)量を変える 
(4)性質を変える 
(5)状態(あり方)を変える
(6)動きを変える 
(7)位置(順序)を変える 
(8)構造(仕組み)を変える
(9)関係(つながり)を変える
(10) 似たものに変える
(11) 現れ方(消え方)を変える

 
D条件を変える

(1)理由(目的)を変える
(2)目標(主題)を変える
(3)対象を変える
(4)主体を変える
(5)場所を変える
(6)時を変える
(7)やり方を変える
(8)水準を変える
 (9) 前提・制約を変える

 バラバラ化(問題意識を掘り下げる)のスキルとしては,この他に,いわゆるチェックリストやブレインストーミングがある。これについては,次に触れたい。その後「企画課題」をどう絞り込むかへとつなげることとしたい。それは,企画の全体像とはどういうものかを描くことになるはずである。

3.「問題」を「課題」にする

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