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企画の立て方・作り方2

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1.企画は3つの問い直し
2.問題意識をどう掘り下げるか
3.「問題」を「課題」にする
4.「課題」をどうテーマに落とすか
5.テーマの検証からコンセプトへ
6.コンセプトは企画の“へそ”である
7.コンセプトをつくる
8.コンセプトのプロファイル化
9.コンセプトの実現手段を煮詰める
10.コンセプト実現手段の具体化手順
11.企画構想をまとめる
12.行動計画を練り上げる
13.企画にまとめる

 「問題」と「課題」は違う。「問題」は,「ガツンと一発」ではないが,酒場の紫煙と共に,ごまんとある。しかし,それは他人事にすぎない。それを解決するために自分は何をしなくてはならないか,と考えるところで,初めて「問題」は「課題」となる。企画は,そこから始まる。

企画の基本構成

 企画は,その(自分が)「解決すべき問題」(課題)の“解決案”と,その実現プラン(“解決策”)を具体化することである。それは分解すると,次の3つの構成になる。

目的−意味 「何のためにそれをするのか」(何を解決するのか)⇒これが企画の「課題」

目標−目指すもの「(そのために)何をするのか」(解決案)⇒これが企画の「アイデア」

方法−やり方 「どうしたら実現可能なのか」(解決策)⇒これが企画の「実現策」

問題群

問題

 

課題 企画の目的
 
テーマ   企画の目標

 コンセプト
 
コンセプトの具体化
 
  実施のプランニング  企画の実現策

 この「企画」づくりの作業については,追々触れていくことになるが,少し先走りすれば,その概略は,次の3つを具体化していくことなのである。

 @解決すべき「問題」の具体化

 現状で取り上げた「問題」を,「何をすべきか」まで個別化する。つまり,「問題意識」(このままでいいのか→何とかならないか)→「問題」(何がどう問題なのか)→「課題」(その解決のためにどうしたらいいか)→「テーマ」(その解決のために何をしたらいいか),と次々と絞込み,特定化していくことである。

 A解決手段の具体化

 アイデアのカタチを実現するための手段を特定化する。つまり,「テーマ」(何を実現するのか)→「コンセプト」(テーマの狙いは何か)→「実現手段の具体化」(何によってどう実現するか),と何をするかのカタチを具象化していくことである。

 B実現のシナリオの具体化

 アイデアを実現するための実施プランと実現の確実性を詳 細化する。つまり,「実施プラン」(誰と誰が,いつからいつまでに,どことどこで,どういうステップで,どういうやり方で,どれくらいのコストで)→「確実性の検討」(実施上のリスク・実現可能性の分析),と実施の手段と手順を具体化していくことである。

●企画の要件

 当然のことながら,現状に「問題」を見つけたからといって,企画になるとは限らない。問題を解決するアイデアを思いついたからといって,企画に値いするとは限らない。まして,実現したからといっていい企画とは限らない。では,企画の要件は何か。それは,当たり前のことだが,次の“3つの新しさ”である。

●(発見した)「問題」の新しさ−人の気づかない新しい「問題」を発見すること

●(解決の)カタチの新しさ−既成概念にとらわれぬ(解決の)カタチを創り出すこと

●実現させる方法の新しさ−前例や過去の経緯に縛られず実現の仕方を創意工夫すること

ここでいう“新しさ”とは,新規さだけでなく,改善・改良,応用・転用も含むが,企画は「問題」の新しさだけではない。たとえば,

 「24時間風呂」は,「問題」(24時間入浴可能化)は新しいが,カタチ(サーモスタットや循環等々)は古い

 「老人用オムツ」は,「問題」(老人用おしめ)は古いが,カタチ(紙オムツ)は新しい

 「アタック」は,「問題」(洗剤のコンパクト化)は既に(ライオンで)試みられたが,カタチ(酵素による洗浄力アップ)は新しい

 「プリウス」は,「問題」(二酸化炭素の削減)は古いが,カタチ(ガソリンと電気のハイブリット化)は新しい

 「バリアフリー」は,「問題」(高齢化)も新しいが,カタチ(すべての居住空間,什器が対象)は新しい

 「インターネット取引」は,「問題」(電子商取引)も新しいが,カタチ(流通)も新しい

 「MP3」は,「問題」(ネット配信による録音)は新しいが,カタチ(携帯性のステレオ)はなじみのもの

 「キットカー」は,「問題」(マイカーの組み立てキット)は新しいが,カタチ(キットもの)はおなじみのもの

 等々,どこに新しさがあるかが問題ではなく,その実現がどれだけ使う側にインパクトを与えるかにある。そのインパクトの新しさが,どこにあるか,だけだ。

●企画の特異点

 少し先走りしすぎた。まず,「問題」から「課題」の絞込みへ話を戻さなくてはならない。

曲線で交点や角になっている点を,通常点に対して特異点と言うが,企画づくりでは,問題から課題を絞り込む収斂点を,そう名づけていい。ここは,企画づくりの分岐点であり,中心点なのである。

「現状」(これが企画の「背景」)で何を「問題」にしようと,また何を絞り込もうと,そのために何を「課題」とするかで,企画はがらりと変わる。たとえば,「プリウス」開発の端緒となった問題意識は,「いつまでも同じ車のつくり方をしていていいのか?このままの開発で,21世紀に生き残れるのか?」という豊田英二氏の危機感にあった,と聞く。そこから始まったプロジェクトでも,「小さなパッケージで,燃費の良い車」というコンセプトにとどまり,ここからヴィツになっても,単なる低燃費車になってもおかしくない。そのとき,

 ・取り上げた「問題」が,現状で「企画」にするにふさわしい重大な問題なのかどうか

 ・絞り込んだ「課題」が,現状で「問題にした」ことの解決となっているかどうか

 が問われれば,「新しい車づくり」を解決するのは,「新しいエコカー」という課題でなくてはならない。そうでなくては,出発点となった問題意識にそぐわない。課題は何よりも,問題意識(の問題にしたこと)に応えるものでなくてはならないからだ。

●「問題」から「課題」へ

 問題から課題への絞込みは,「問題」のビックバン(大爆発)でなければならない。

 この作業は,基本的に,“洗い出し"(枚挙・列挙)⇒“絞り込み"(収束・集約)の繰り返しである。洗い出しでは,多角的に眺め回して,ある意味で発散・拡散させ,絞り込みでは,それを一点に集約していく。このねらいは,

 ・曖昧なものを次第に鮮明にしていく

 ・幅広く(ヌケやオチなく)拾い上げ,順次特定化していく

 ・いままでのいきさつや行き掛かりにとらわれず発想しやすくする

にある。この徹底にも,バラバラ化のスキルは有効である。

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  「課題」と「テーマ」とは違う。「課題」は,「問題」を目的として,それを解決(達成)するために何をすべきか,何をしたらいいかを絞込み,「テーマ」は,「課題」を目的として,それを解決(達成)するために何をすべきかを絞り込む。「問題」から見て,3段階のブレイクダウンとなる。「テーマ」までに具体的な行動目標になっていなくてはならない。

課題の明確化

自分の絞り込んだ「問題」を解決(達成)するには,「どうする」ことが,最もすべきこと,したいこと,必要なこと等々なのかと,「課題」を洗い出し,ひとつに絞っていく。その絞込みのスクリーン(網の目)の要件,つまり,課題として何を明確にしておけばいいかは,次の3点となる。

@「どこの/何の(誰の)」(地域/対象)を  (←これは企画対象を何にしたかで決まる

A「どういうこと(問題/原因)のために」(理由)(←これは何を「問題」にしたかで決まる)

B「どういうことを達成(解決)したらいいのか(すべきなのか,したいのか)」(目指すこと=期待成果)

 ここでは,Bを,ヒト・モノ・カネ・コト・チエ・トキ・コトバの「どれ」を「どうする」のかを絞り込むことになる。「どうする」とは,達成する,解決する,実現する,改善する等々を方向づけるが,その方向には,当初の「問題の仕方」に応じて,大別,次のような2つの(解決の)カタチがある

@高い目標(理想,将来像)を実現したい(望ましい状態・モノの現実化)目標設定型

 いままで作られたことのない,他にないモノ・システム・制度・事業,いままでなかった,こういうものがほしい,こうありたいというニーズに応える,独自技術の用途開発,応用,使用方法の展開等々,“「こうしたい」ユメや願望の実現

 たとえば,「問題」=「不精もの,体の不自由な人,老人でも,思い立ったらすぐ別世界へ旅立てることはできないか」(という願望)→「課題」=「ドアを開けたら,そこは旅先」という夢の旅行プラン開発

A現状を改善・向上したい(不都合の原因,障害の改善・改善)問題対策(対応)型

 求められている水準(売上高,利益率,品質,サービス等)に達していない,逸脱している,必要なレベル(規格,規定)に達しない,競合相手の勝てない(シェア,売上高)等々,“現実の不便・不満・不都合の解消

 たとえば,「問題」=「椅子の座り心地が悪く疲れやすい」(という不都合)→「課題」=「作業者の仕事と姿勢にフィットした椅子」という現状改善

 この2点を,前に述べた,新規/改善・改良/応用・転用の,3つの「新しさ」でマッピングすると,「課題のマッピング」表のように整理できる。その「新しさ」を具体化させるとすると,現実的には,結局のところ,次のような切り口に収斂させられるはずである。

・モノづくり(製品開発,既存製品の見直し,既存設備の見直し・改良,土地開発・用地開発,新規施設づくり等のハコづくり等々)

・ヒトづくり(ヒトの教育・育成,タレントの発掘・開発,作家や芸術家の発掘・育成)

・コトづくり(モノやヒトづくりのシステムや制度,イベント,遊び・スポーツ・ゲーム等のステージづくり,システム支援のSCM・ERP等のソフトウエア等々)

・チエづくり(生産技術・商品開発等のノウハウそのもの,あるいは知識,技能,ノウハウ等を集積するナレッジマネジメントのようなソフトウエア,ISO取得支援等々)

・コトバ(情報)づくり(ITに関わるマスメディア,ミニコミ,パッケージメディア,データーベース,ホームページ,地域分化・歴史・史跡そのものの発信等々)

・トキづくり(イベント,〜祭り,〜シーズン,〜の季節,オークション,オートクチュール,深夜〜,超特急〜,1時間以内,30分〜円,24時間サービス等々)

・カネづくり(ベンチャーキャピタル,ヘッジファンド・デリバティブ等の金融商品等々)

 別の「する(DO)」と組み合わせることで,「つくる(MAKE)」以外も可能だ。もちろん,その場合「何も作らない」「何もしない」「一切手を加えない」という選択肢もある。

●「テーマ」へ落とし込む

「テーマ」は,「課題」を達成するのに何をすべきか,何をすること(あるいはしないこと)が最も効果的か,何があれば(あるいは何がなければ)いいのか,を多角的に洗い出すことから始まる。問題⇒課題の流れが,ビックバンであったように,課題⇒テーマの流れも,同じようにビックバンであり,洗い出し(枚挙)→絞込み(収束)の徹底の作業となる。

 キャッチフレーズ風に言えば,「課題」から「テーマ」への落とし込みは,

 「課題」は(問題の)解決の方向(目的)を示し,

  「テーマ」で具体的な解決の目標(行動の対象)を定める。

 となろう。重要なのは,課題は,ゾーンレベル,領域層レベルの絞込みでもいいが,テーマは,具体的に何をするかの行動レベルまでの絞込みになっていなくてはならないことだ。言い換えれば,具体的な仕事(業務)レベルまで落とさなくては,テーマとしての具体化はなされていないことになる。

 したがって,「企画テーマ」の要件は,

 具体的な行動の「個別目標」(何をする,何をつくる,何を表現する等)まで,特定されなくてはならない。(←具体的に“すること”が「何か」まで,明確になっていること)

 となろう。たとえば,先の例でいえば,「ドアを開けたら,そこは旅先」という夢実現タイプの「課題」なら,テーマは「ドア・ツー・ドアのわがまま旅プラン」の開発,となる。また,「作業者の仕事と姿勢にフィットした椅子」という現状改善タイプの「課題」なら,テーマは「作業内容と作業姿勢にフィットさせられる椅子」の開発,となる。

 この「問題→課題→テーマの流れは,たとえば,「温泉地の名物」をめぐって問題を洗い出したとすると,下図のように階層化できるはずである。

問題→課題→テーマの流れの階層

問題   地域の地盤沈下  地域の名産品がない  過疎化  地場産業の衰退  既存の名物が売れない

      ↓          ↓                   ↓

課題    温泉饅頭       新しい名産品の開発     既存品のアピール   共通ブランド

      ↓           ↓          ↓

テーマ   七色()饅頭        温泉饅頭       イメージキャラクターの採用

 あくまで,この階層は相対的なものにすぎない。たとえば,温泉饅頭が,問題・課題・テーマのどこにきてもいい。問題に何が来るかで,具体化されるテーマの絞られ方が変わるだけである。たとえば,「温泉饅頭」が「課題」となったら,テーマは,より具体的,どういう饅頭にするかまでを,詳細に詰めなくてはならなくなるだけである。

 無駄な作業のようでも,「課題」の絞り込み抜きで,問題→テーマと直結させると,「問題」を何のために解決するかの目的が欠けることになり,安易な真似や類似発想(「うちでも温泉饅頭を出そう云々」)になりやすいし,テーマが単なる問題の裏返しになりやすい。また,幅広い範囲で検討せず,それが是か非かの検討抜きに,いきなり限定したテーマに入ることになり,問題の部分解決にしかならないおそれがある。

 「課題」は問題群全体の解決の最適(優先)解決であり,テーマは,課題全体の最適(優先)解決とならなくてはならない。「課題は解決の方向(目的)を示し,テーマで具体的な解決の目標を定める必要がある」とは,この意味である。

5.テーマの検証からコンセプトへ

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