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企画の立て方・作り方3

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1.企画は3つの問い直し
2.問題意識をどう掘り下げるか
3.「問題」を「課題」にする

4.「課題」をどうテーマに落とすか
5.テーマの検証からコンセプトへ
6.コンセプトは企画の“へそ”である
7.コンセプトをつくる
8.コンセプトのプロファイル化
9.コンセプトの実現手段を煮詰める
10.コンセプト実現手段の具体化手順
11.企画構想をまとめる
12.行動計画を練り上げる
13.企画にまとめる

 テーマは,具体的行動目標だから,ある意味で,自分の取り上げた「問題」を解決するのに適切かという,問題意識を掘下げるための,内向きのチェックだけではなく,競争相手,実現可能性等々,現実的な意味が,具体的に問われなくてはならない。

●「テーマ」を検証する

 企画テーマが,具体的な行動目標であるということは,モノなら何をつくるのか,コトならどういうことをするのか,コトバならどういうメッセージをどう発信するのか,チエなら,どういうものをどういうスタイルでカタチにするのか等々を具体的に絞ることを意味する。その絞込みは,「何を,どこまで,どういうふうに,するのか」を具体化できていることである。これをして初めて「テー。その手順は,以下の作業となる。

 @テーマの条件の確認

 「テーマ」が,具体的な行動目標であるということで直面するのは,それを実行する上での現実上の前提,制約である。

 ・成果レベルはどこか(達成しなくてはいけないのは何か)

 ・前提条件は何か(組織の事業領域との適合,起案先,決裁者等)

 ・制約事項はないか(組織の限度,予算,スケジュール,人員等)

 ・外部状況に変化はないか(経済環境,国や公共団体の施策変更,住民意識等)

 A企画テーマ(の範囲)の確認

 「テーマ」で,誰が,どういう立場・役割で,どんなことを,どの程度するのか,の範囲を限定する。

 ・誰(と誰)が主体か(その立場/役割・分担はどうするのか)

 ・何をしようとしているのか(「目標=期待される成果」は何か)

 ・その必要要素/必要条件は何か(厳密に言えば,絶対条件(絶対に譲れないこと)

  と相対条件(できれば望ましい希望)とに区分し,何が欠けたらテーマの実現に不

  足なのか)をはっきりさせる

 ・ターゲットは何か(対象は何か)

 ・どこでどう展開するか(活動領域,展開チャンネルはどこか)

 ・いつ(からいつまで)実施するのか(期限の猶予はあるか)

 ・その予算/価格(どんな制約があるか)

 ・競争相手の有無(先行者があるか)

 Bテーマの意味づけ

  テーマを実現することの意義・価値を再確認し,企画実現の意味づけをする。

  ・それをすることによってどんな効果が期待できるのか

  ・それをすることのメリットは何か/それが果たす機能・役割は何か

  ・いままで取り上げられたことは?/似たものは?/いまでの経過はどうか?

   失敗したか成功したか

  ・それはやる値打ちがあるか/それにはどんな新しさ(面白さ)があるか

確定テーマの妥当性チェックリスト

  ◆方針・戦略面から

   ・組織の目的にふさわしいか

   ・組織イメージに合っているか

   ・規制,許認可等,法律上の制約はないか

   ・これを実施しないことのマイナスはどれほど大きいか

   ・これを着手したことによるマイナスはどれくらいか

   ・知的所有権との抵触のおそれはないか

   ・知的所有権を獲得する可能性はあるか

  ◆マーケット面から

   ・どういう対象をねらっているのか

   ・公共団体,国レベルの動きはあるか

   ・それの将来性はあるのか

   ・住民(消費者)はこのニーズにお金を払うか

   ・既存活動との競合はないか

   ・参入に障害/障壁はあるか

   ・従来のチャンネル・活動手法と一致しているか

  ◆開発・製作面から

   ・技術的な新しさはあるか

   ・いつでも着手可能か

   ・現有設備,人員で着手可能か

   ・人的,経済的資源はあるか

   ・これに着手することによって技術的な発展可能性はあるか

   ・後続活動を準備できるか

  ◆財務面から

   ・事業の経済的規模はどれほどのものか

   ・開発コストは妥当か

   ・初期投資に見合う回収ができるか

 Cテーマの分析・情報収集

  テーマをタテ・ヨコ・ナナメ・十文字に掘り下げる。

  ◇歴史的分析

   ・同種・同類テーマの過去の経緯の洗い出し,今後のトレンド予測

   ・過去の商品(事業)のライフサイクル,どんな変遷をたどったか

   ・現在の競合・類似テーマとの比較,同一対象の異業種での動き

   ・成功事例・失敗事例

  ◇構造的分析

   ・業界での仕組み(製造,販売方法,販売チャンネル,競争状況)

   ・市場構造(大きさ,広がりの可能性,周辺・異業種からの参入可能性)

   ・顧客構造(ユーザーの特色)

   ・需要構造(その範囲,傾向,限界)

   ・競争構造(競合相手,隣接領域(異業種)の動向,代替・カバーするものの有無)

 こうした「テーマの確定」を試みる意味は,企画づくりを続けていくことへの確信をえることにある。「問題」から「テーマ」具体化へのプロセスを通して,問題を“内向き”からのみ掘下げ,作業全体を俯瞰していない。改めて,広い視野から全体をチェックし直し,テーマの条件づけ(テーマを成立させるのに必要な要件,条件)を洗い出すことになる。

 この作業は,テーマのめざすもの(ゴール)の範囲を想定する(絞り込む)ことであり,テーマ成立に何が不可欠かを収束させる作業となる。必然的に,次回に触れる,テーマのコンセプト(達成水準)づくりへとつながっていくのである。

●「問題」→「課題」→「テーマ」の展開例

 以上のように,テーマを確定させるまでの流れを,前回例示した,「課題」のタイプ別に簡単に整理してみると,次のようになろうか。

  目標設定型 問題対策型
絞り込んだ「問題」 不精者,体の不自由な人,老人で思い立ったらすぐ別世界へ旅立てるもことはできないか いすの座り心地の悪いのを何とかしたい
現状分析 計画をたてるのがおっくう/個別プランだと高額/健常者主体の観光地/老人や体の不自由な人は安心して旅行できない/行ってみたいところは交通やアクセスが面倒/車中心になっている/安かろう・辛かろうのプランが多い いすが作業にあっていない/長時間座わっていられない/机とあわない/じっと座って読書しているのではない/単なる備品でしかない/誰も深刻に考えていない

課題 「ドアを開けたらそこは旅先」
「思い立ったときが旅立ち時」
「作業者と作業にフィットしたいす」
「長時間デスクワークのためのいす」
立場 旅行代理店同類のサービス提供者 事務機器メーカーの開発担当者
テーマ  「どこでもドア・ツアー」の開発
(ドア・ツー・ドアのわがまま旅プラン)
「作業者が,自分の姿勢と作業内容にあわせられるいす」の開発
テーマの意味 高齢化時代の年金生活者向け企画個性と個別ニーズに細かく対応 いすの開発を通して新たなオフィスづくりを展望
テーマの分析 類似テーマは?/既にないか?/コスト的にあうか?/市場はあるか
類似品・競合品は?/既にあるもの以上に個別ニーズに対応できるか?/他社の成功例は?失敗例は? 

 あくまで,この流れはひとつの目安である。この順序を通らなくてはならないというものでもない。ただ,この流れで,実は,前に述べたように,問題→課題,課題→テーマ,のそれぞれにおいて,洗い出し(列挙,拡散)→絞込み(収束)を繰り返すことで,そのつど,多角的に検討することになるところに意味がある。

 さて,この「テーマ分析」から,“コンセプト”へと展開することになる。たとえば,上記の「『どこでもドア・ツアー』の開発」というテーマなら,「どらえもんのポケット」というコンセプトに,「作業者が,「『自分の姿勢と作業内容にあわせられるいす』の開発」というテーマなら,(適合と健康の二重の意味で)「フィットネスチェア」というコンセプトに,することで,そのテーマの現実化の方向性が明確化される。

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 ここで言う“コンセプト”は,当然ながら,キャッチフレーズやキャッチコピーとは違う。コンセプトは,大きくわけて,

 ・「テーマの訴求点」(何をしたのか,どこが新しいのか)を明確化するもの

 ・「テーマの達成水準」(創ろうとするものの“新しさ”をどこまで実現するか)を明確化するもの

 という,2つの意味がある。

 “解決案(アイデア)”が比較的容易なものは,それができてから,その意図(狙い)をイメージ化する意味のコンセプト(テーマの何が焦点なのか,キャッチコピー的に特徴をクローズアップさせる)でもいいが,“まだない新しいもの”を目指す場合,テーマの「新しい意味」を表現することには変わりないが,単に新しさを訴えるだけではなく,テーマを「どこまで実現する(したい)」のか,という目標水準(達成水準)を明確にし,“実現アイデア”を検討するときの条件(何を,どこまで実現するか)をはっきりさせ,企画づくり作業の基準とする,という意味をもった“コンセプト”でなくてはならない。

 ここでは,後者を前提に,話をすすめたい。

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●「テーマ分析」から“コンセプトづくり”へ

 いま触れたように,「コンセプト」には,

 @創ろうとしている企画の「新しさ」の表現(「企画の意味づけ」)

 A創ろうとしている企画の目指しているもの(達成基準)の明確化(「企画の方針」)

 の2つの意味がある。

 @コンセプトは「創ろうとしている企画」の新しさ(特徴・効用・値打ち)を明確に意味づけるものである

 「コンセプト」の「新しさ」が,何が,どう,どの程度なのかを,次の4つで表現する。

  @テーマの方向性の指示
 
 「テーマ」に込めた意図(「何を重視しているか」「何を大切にしているか」),願望(「何がしたかったのか」「何を実現させたいか」)といった「狙い」をはっきりさせる

 Aテーマの範囲(境界)の確定
 
「テーマ」を,どこまでやるのつもりなのか(ほんの手直しか,抜本的な見直しか)という,取り組みの「覚悟」を明らかにする      

 Bテーマの価値(意味)の掲揚
    「テーマ」のもつ「新しさ」「強み」「特徴」「コトバ」として明示する

 Cテーマの感性の表現
 
   「テーマ」のもつ「面白さ」「楽しさ」「熱中」「イメージ」として表すこと

 お気づきのように,こうした「コンセプト」の明確化には,「テーマの確定」作業をきちんとやっていればいるほど,何が新しさで,何をめざしているのか,が鮮明になっており,容易に焦点が絞りやすいはずである。

 当然,「テーマ」が同じでもコンセプトは異なる。コンセプトが異なることによって目指すものは変わり,達成水準も違う。達成水準が違えば,実現方法も違うし,当然達成結果も変わることになる。

 Aコンセプトは,企画づくりを通しての“旗印(方針)"となる

 コンセプトの意味づけによって,テーマが目指すこと(達成基準)(どこまで,どれくらい)を明確化する。それによって「テーマ」の“落としどころ"が明確になり,企画づくり作業を通して,その基準や水準となり,「ずれ」や「逸脱」を正す規範となる。

 また,「何を重視するか」「何を優先させるか」の判断基準として,何を取り,何を捨てるかのメリハリをつけ,企画の“目玉”(何が他と違うのか)の焦点が絞り込みやすくなるはずである。

●“コンセプト”をつくる

 以上からもおわかりのように,コンセプトは,二重の意味で,企画のへそである。

 第1は,企画づくりのへそである。企画づくり作業の基準であり,水準であるという意味で,企画をつくっていく上での“コアビジョン”である。

 第2は,企画そのもののへそである。目指す企画そのもののもつ意味と新しさの中心となる部分,コアアイデア”である。

 となると,コンセプトがもつべき条件は,

 ・イメージが具体的である(わかりやすい)こと

 ・ターゲットにマッチしていること

 ・他(他の競争相手)との違いが明確であること

 ・組織のイメージに外れていないこと

 ・新鮮であること

 でなくてはならない。したがって,コンセプトに表現すべき要件とは,

  ・テーマの価値(値打ち,新しさ)と意味(必要性,重要性)を表していること

  ・テーマの方向(何を目指しているか,意図)を示していること

  ・テーマの射程(どこまでやるつもりなのか,覚悟)を明示してあること

  ・テーマの感性(ウキウキ,ワクワク,ゾクゾク)を感じさせること

 となろうか。

 具体的にコンセプトをつくるスキルは次回にご紹介するとして,コンセプトがどういう位置にあるかを,問題→課題→テーマ→コンセプトの流れを一覧化して,次に示しておきたい。ひとつの例として,「忘年会」を「企画」するという例を取り上げてみた。あくまで,企画づくりを一望するための,ジョークとしてご覧戴ければありがたい。

「企画」をカタチにする

 毎年不評の「忘年会」の幹事になった若手社員が,「いつもの忘年会はちっとも面白くない」との問題意識で,次のような設計をした,という仮定で,「企画」の構造を考えてみた(「企画づくりの流れ例」参照)。    

 ただ,ひとこと付け加えると,この場合,「忘年会」をすることを前提としていいのかどうかは,また別の問題である。それをしなくてはならない,真の「目的」 は別のところにあり,その(解決の)ためには,「忘年会」の「企画」ではなく,別のもの(しないことも含めて)のほうが,その目的にかなうことはありうるのである。

 それはともかくとして,この例をみて戴ければおわかりのように,問題→課題→テーマ→コンセプトの中身を入れ替えると,別の企画のカタチになるところがミソなのである。このフローと構造が,企画づくりの筋なのである。このことをご理解戴ければ,ここでの意図は果たせたことになる。

7.コンセプトをつくる

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