1.企画は3つの問い直し 7.コンセプトをつくる 8.コンセプトのプロファイル化 9.コンセプトの実現手段を煮詰める 10.コンセプト実現手段の具体化手順 11.企画構想をまとめる 12.行動計画を練り上げる 13.企画にまとめる “コンセプト”は,別に「テーマ」の概念(意味内容)を表現するものではない。むしろ,正確な意味では,客観的な意味内容をどうシフトさせるか,偏らせるか,に“コンセプト”をつくる意味がある。誤解を恐れずに言うなら,コンセプトは,テーマの私的な方向づけなのである。テーマに,ウエイトづけし,シフトさせ,ある意味で特定部分にフォーカシングすることなのである。そうしたフォーカシングが,そのまま受け入れられたものが,固有名詞が一般名詞化したカタチで生き残っていくことになる。もちろん,ネーミングとコンセプトはイコールではないが,「セロテープ」「ウォークマン」「カップヌードル」「ごきぶりホイホイ」「ほか弁(ほっかほっか亭)」「ポストイット」「(スーパー)ガン保険」等々をみると,何にシフトし,どこに焦点を当てたかが鮮明に見えるはずである。 ●コンセプトをつくるスキル さて,そこで,コンセプトをどうつくるかである。このためのスキルが,“スクランブル法”である。これは,池辺陽氏のデザインスゴロクを簡略なステップ化した岩崎隆治氏のトライアングル法の変形版である。そのすすめ方は,次のようなステップとなる。 1,取り上げるテーマの確認。
2 ,テーマに何が必要なのか,欠かせないのか,必要な「条件」,構成する「要素」,「要因」等々を,具体的に洗い出し,ラベルに書き出す。
3 ,ラベルを,グループ化していく。
4 ,グループ化が終わったら,それぞれのグループ毎に,その各ラベルが何を主張しているかを読み取って,全体を的確に表現できる言葉で,タイトルをつける。5 ,グループ群の中から,重要性の高いものを9グループ選び出し,優先順位をつける。
6 ,9グループの中の,優先順位の高い,1位,2位,3位の3グループを選び出し,(フォーマットの)トライアングルの一番外の角に,それぞれ置く。7 ,次に,優先順位の4,5,6位を取り出し,各辺の真ん中に,先に置いた2つのグループと関係がありそうなものを,それぞれ置く。8,更に,優先順位の7,8,9位を取り出し,各コーナーに,先に置いた3つのグループと関係がありそうなものを,それぞれ置く。 9 ,テーマは要するにどういうことなのかを,キイワード(キイ・イメージ)として中心に書き入れる。
キイワードは,イメージに置き換えたい。イメージで表現するメリットは,言葉で要約したり,説明しただけでは伝達しにくい,微妙なニュアンスが受け止められやすいところにある。 10,結論として,最適コンセプトを見つける。
スクランブル法フォーマット
別図のように,「うまいラーメン屋」というテーマのコンセプトをつくってみることができる。優先順位8〜9位を配置するときに,図のようにイメージ化しておくと,それを積み重ねることで,全体のコンセプトを見つけ出す手段とすることができる。 (C)高沢公信 “コンセプト”は,ただテーマの条件を整理してキイワードに置き換えたままでは,未使用の風船でしかない。どこまで大きく膨らむものなのかまるでわからない。どこまで膨らむかは,まだ単なる「そうなるはず」の潜在的な可能性にすぎない。「企画」は,その風船に込めたキャパシティ以上に膨らむことはない。とすれば,企画がどこまで膨らむかは,風船に設計したユメの規模次第なのである。それを確定するのがコンセプトのプロファイル化なのである。 ●コンセプトを膨らませる つまり,“スクランブル法”で作り上げた「コンセプト」は,まだ企画コンセプトとしては完成していない,荒削りのラフスケッチに過ぎないのである。塑像をつくるにも,木組みに粘土で具体像に作り上げていくように,コンセプトもラフスケッチに肉付けしていく必要がある。それは,コンセプトのイメージを具体的に膨らませていく作業である。それには,に即して,そのイメージをどこまで具象化していけるかがやり方としては便利である。たとえば, 誰が あるいは どんなタイプの,誰が,何をするか 等々。これを手順化しておくと,次のようになろう。 @作成したコンセプトを,具体的場面(シーン)に置き換えてみる 例えば,「客が並ぶ店」というコンセプトの,「客」を具体化すると,サラリーマン,おやじ,学生,若者,若い女性等々いろいろあるが,どれかに限定するには,まだイメージが広すぎる。そこで, ・どういう場所(場面)で ・どういうとき(機会,時間帯,時期)に 等々,使われている(買われている,利用されている)場面,シチュエーションを具体的に思い描いてみる。 Aそれにふさわしい登場人物を設定してみる その場面にふさわしい登場人物(たち)は ・誰(どんなターゲット,どんな対象,どんなグループ,どんな年齢層)が ふさわしいのか,性別,年齢,職業,背景,来歴等々を描きながら,それに似た映画,アニメ,マンガ,小説を借りて,ストーリーを描いてみる。 Bその場面の効果を上げるには,どんな仕掛け(舞台装置)がふさわしいかを列挙してみる ・デートの二人 等々によって,それに似つかわしい舞台装置は何かを,街,町並み,風景,季節,時間,衣装を含めて挙げてみる。 Cこうして,状況設定と登場人物によって,文脈が整い,ひとつのストーリーを描いてみる ・何のために(動機,ニーズ,欲求) ・何を求めて(期待して,関心・動機) ・どのくらい(予算,コスト,値頃感,頻度) ・どんなふうに(使用方法,利用方法) D出来上がったコンセプトのストーリーから,新しい何かが見えたか ・いままでにないモノに見える(それは,急いで手に入れなくては!) ・新しい意味(価値)が見える(へェ,そんな意味があるのか!) ・新しい効用が見える(そうか,そんな効果が期待できるのか!) ・新しい面白さが見える(ほう,それは是非やってみたい!) ・新しい世界が見える(それは一度行ってみなくては!) ・新しい生活が見える(あんな楽しい生活を送りたい!)等々 Eコンセプトは,課題(解決しなくてはならない「問題」)と焦点があっているか Fコンセプトの展開上,何かネック,障害,問題となりそうなことはないか 以上のように,あれこれと具体的場面を想定しながら検討したコンセプトの具体像を,別表のような“コンセプト・プロファイルシート”にまとめる。まだこの段階では,実現策は具体化していないので,まだ細部の煮詰まっていないラフなものになる。ただし,たとえラフとはいえ,これ以降の企画づくりの作業は,このプロファイル化したコンセプトを実現するために,何を,どうするかを具体的に詰めていくことになるので,何をしようとするかの意図と狙いは明確化されなくてはならない。 ●なぜコンセプトのプロファイル化が必要かコンセプトは,企画づくり全体の見取り図でなくてはならないのである。そのためには,たとえば,「うまいラーメン屋」のコンセプトも,「人が並ぶ店」だけでは,具体像に欠ける。並ぶのが,サラリーマンなのか,学生なのか,若い女性なのか,家族連れなのか等々によって,同じラーメン屋でも, 「大学生の並ぶ店」なら,割安でボリュームがあり,味はそこそこ 「体育会系のマッチョの並ぶ店」なら,安くててんこ盛りサービス 「女子高生の並ぶ店」なら,小ぶりで選択肢の多いおしゃれな店構え 「サラリーマンの並ぶ店」なら,安くて早くて,味で満足させる 「若い女性の並ぶ店」なら,うまくて雰囲気のある小奇麗なつくり 「家族連れの並ぶ店」なら,大人から子供までのバリエーションのある品揃え 等々と,まったく目指す方向も基準も違ってくる。ここまで具体化しなくては,コンセプトは完成したことにならない。コンセプトが企画づくりの“へそ”となるかどうかはここでのイメージの具体化と肉付けで決まる。 プロファイル化したものを実現していくのが,企画づくり作業のすべてである。その意味では,プロファイル化されたコンセプトが,実現手段の具体的検討をするための機軸となっていなくてはならない。 また,ここまで具体化して初めて,「課題」との整合性はどうか,「テーマ」とのリンクはできているか等の可否がチェックできるのである。 以上が,コンセプトという風船のキャパシティを確定する作業と言っていい。この作業が済んでこそ,いよいよ,コンセプトを具体化していくプロセス,つまりコンセプトの描いた風船の膨らみを具体化していく作業に入るのである。 プロファイル・シート例 (C);高沢公信 9.コンセプトの実現手段を煮詰めるへ次ページへ ページトップへ |
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