このためには,それが本人だけの孤独な戦いではなく,その努力自体が,メンバーから支えられ認められ,支援がえられ,メンバーとして受け入れられていると感じさせるものでなければならない。なぜなら,「こうすれば」できるという見通しには,ここまでは自分でできるが,ここからは助力があればできるという判断が必要なときがある。成功感で,もうひとつ必要なのは,なんでも自分でやりとげることだけではなく,周りの力を借りて,一人ではできない高いハードルをクリアする経験なのだ。でなければ,自分の力以上の仕事をすることはできない。本人のやる気だけに問題を完結させるのではなく,周囲も巻き込んで仕事をやりとげていく力を育てていくプロセスこそが,チームのパフォーマンスにとっても欠かせぬことなのである。
以上を整理すると,やる気を引き出し,持続させるのは5つである。
@その気になれる意味や価値(やりたいことかやりたいもの)がある
Aやってみて,「やれた!」という成功感を味わう(実績をつむ)
B自分にもできる(こうすればできそうだ)と思える(自信をつける)
Cそうやっている自分の努力をメンバーが認めている(承認される)
Dメンバーとして受け入れられていると感じられる(有効感がある)
やりたいと思うものがあっても,自分ができると思えなければ,やる気にはつながらず,やりたいと思っても,どうやればいいかが見えなければ,やってみようとは思わない。またやりだしても,達成の目途が立たなければ,意欲は萎えるし,まして誰も自分のやっていることを認めてくれなければ,やる気は続かないのである。
そう考えると,メンバーのやる気を育てるのは,チームリーダーやチームメンバーが,部下を育てることに関心をもち,その気にさせる仕掛けをつくることが不可欠だとわかるのである。つまり,
@本人にやりたいことを見つける機会があり,
Aそれをやりとげるための助言やヒントをもらうことができ,
B自分にできると感じられる体験をつむチャンスが与えられ,
Cそれを後押しし,励まし支える雰囲気があって,
D一歩一歩やれたという成功感を積み重ね,
Dチームに必要な人間だと認められる
ことが必要なのである。それはマネジメントとしての課題なのである。(以下つづく)