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Critique Back Number 67


高沢公信"Critique"/2010.11.20

 

問題意識をどう育てるか【1】

問題意識とは
問題とは何か
問題を意識するとはどういうことか
どういう問題を意識するのか
どうすれば問題を意識しやすくなるか
求められている問題意識とは何か
問題意識を高めるチームとしての取り組み
チームとしてのモニタリングのしかけをつくる


ここで「問題意識を育てる」を考察しようとする問題意識は,ふたつである。

@問題意識をもつということで何を期待しているのか

 管理者が,部下に問題意識を持て,という言うとき,何を期待しているのか。どういう仕事の仕方,仕事への姿勢を期待しているのか。その目標状態を明確にしているのだろうか。逆の言い方をすると,問題意識をもった仕事の仕方をすると,何が違うのか。チームの成果にどう影響するのか。その期待は部下にどう伝えられているのだろうか。あるいはそのモデルが,上司自身あるいは他のメンバーにあるのか。

A個人の努力に期待することでいいのか

問題意識ということで求めているのは,目の前の仕事に流されず,そのタスクに自分なりの仮定や仮説,つまり問いをもって仕事をすること,たとえば,

●このままでいいのか

●他に方法はないのか

●何のためにしているのか

●どういう状態にしたいのか

●そのために気になることはないのか

 ●どんなアプローチがあるのか

 ●他にアイデアはないのか

 といった,与えられた課業の幅と奥行きを意識することを期待しているようだが,それを部下個人の努力や創意だけをあてにする姿勢でいいのか。この点を以下で考えていく。


意識とは,「〜の意識」だから,「〜」を意識しているとき,われわれは「〜」が何かを知っている。それが花であれば,花とは何であるかを知っているから,花を意識する。問題意識という場合,「〜」は問題のことである。それを「問題」と意識するには,問題が何かを知っていなくてはならない。われわれは知っていることしか意識できないからだ。

 では問題とは何か。認知心理学では,“いまはこういう状態である”という初期状態(現状)を,それとは異なった別の“〜したい状態”(目標状態)に転換したいとき,その初期状態が“解決を要する状態”つまり“問題”と呼ぶ。言い換えると,眼前の状態を“問題”とするかどうかは,目標状態をもっているかどうかによる。つまり目標状態がなければ,問題は存在しない。

 問題はどこかにころがっているのではない。誰かが問題にすることによってしか,問題にはならない。しかし誰かに問題でも自分には問題ではないこともある,自分が大騒ぎしても誰も問題と思ってくれないこともある。もともと共通の問題があるのではない,共通の問題にするだけである。しかし,とりあえず自分がその問題と向き合い,何とかならないだろうか,と考え始めたとき,はじめてその問題は自分が解決しなくてはならない問題として目の前にある。これが,その人が問題を意識している状態である。

 初期状態(現状)と目標状態とのギャップが問題だとすれば,何を問題として意識するかは,何を目標状態におくかによって違う。たとえば,

 ●理想との乖離を問題だと思う(理想との差を問題にする)

 ●立てた目標や基準の未達や逸脱を問題と思う (未達を問題にする)

 ●不足や不満を問題と思う(欲求水準が満たされないことを問題にする)

 ●価値や判断の基準からの逸脱を問題だと思う(価値との距離を問題にする)

 等々といった差になる。

 たとえば,「遅刻」を問題にしたとしよう。それは,あるべき基準との差を問題にしたことになる。しかし,世の中ではそんなことを問題にしていること自体が問題だとして,いつもわくわくできる職場になっていないからだ,という目標状態との差に問題を変えると,理想とのギャップを問題とすることになる。

 わくわくする職場を目標状態にして気づく問題では,メンバーの元気や落ち込みに目が向く,遅刻しないことを目標状態にして気づく問題では,時間すれすれに飛び込むメンバーに目が向く。こうした問題への意識の差は,良し悪しではなく,その問題解決で何を目指そうとするか(目的)によって変わるのである。たとえば,ひとりひとりの創意工夫を発揮してもらうことを目指せば,そのためにどうしたらわくわくする職場をつくれるかを問題意識としてもつことになり,メンバーの落ち込みが引っかかる。一方,ミスなくロスなく仕事を完結するということを目指せば,どうすればきまったことを守れるか,を問題意識としてもち,わずかな遅刻も見逃せないこととして引っかかってくる。


 つまり,その目的に応じて,目標状態が違い,意識する問題が変わるのである。ここで問われているのは,ひとりひとりの問題意識ではなく,メンバーに問題を意識しやすくするために何が必要なのかなのである。

 たとえば,ゼロ災害を目指して,清掃が行き届いた状態を意識していれば,わずかな埃,汚れにも目が向く。新たの商品開発を目指して,ひとりひとりのアイデア力を意識していれば,わずかな発想の芽にも敏感になる。それに目が向かざるをえないはずである。それによって実現したいもの(目的)がどれだけ意識されているかによって変わるのである。とすると,個々人のスキルやマインドだけではなく,チームとして,何を目指しているか,そのためにどういう状態にしたいのかが,明確であるかどうか,それをチーム内でどれだけ徹底できているかどうかに左右されるのである。目的意識によって問題意識は決まるのである。

そうしてみると,ここで期待されている問題意識とは,目指している目的からみて,「本当の問題は何か」「もっと大きな問題はないのか」と,問題そのものを問い直す姿勢,あるいは意識的に問題を立て直す姿勢と言えるのである。それは,逆に言えば,目指す目的にとって,どういう状態になっていればいいのかという,目標状態そのものを問い直し,場合によっては,新たに目標状態を設定し,いままでなかった問題を見つけ出すことをも意味しているのである。つまり,問題意識にとって本当に重要なのは,目的実現のためにどんな目標状態でなければならないのか,そうなるとどんなことが問題になるのかと,問題そのものを立てられることなのである。(以下つづく)

問題意識については ,問題意識を育てる問題意識と気づきの共有化を参照ください。


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