“スクランブル法”で作り上げた「コンセプト」は,荒削りのラフスケッチに過ぎない。塑像をつくるにも,木組みに粘土で具体像に作り上げていくように,コンセプトもラフスケッチに肉付けしていく必要がある。それは,コンセプトのイメージを具体的に膨らませていく作業である。それには,たとえば,
誰が/何のために/何を求めて/どういうときに/どういう場所で/どの位なら/どんなふうに使うか
どんなタイプの,誰が,何をするか/どんな特有のことが起きるか/それは,どうなっていくか/これから,
どうなる可能性が高いか
等々について,具体的場面に即して,“完成イメージ”を具象化していく。何をしようとしているのか,それはモノづくりなのか,サービスなのか,ソフトなのか,仕組みづくりなのか等々,最終的に目指しているものは何か。
●コンセプト・イメージを完成させる〜“完成イメージ”具象化の手順
イ・作成したコンセプトを,具体的場面(シーン)に置き換えてみる
例えば,「客が並ぶ店」というコンセプトの,「客」を具体化すると,サラリーマン,おやじ,学生,若者,若い女性等々いろいろあるが,どれかに限定するには,まだイメージが広すぎる。そこで,
・どういう場所(場面)で
・どういうとき(機会,時間帯,時期)に
等々,使われている(買われている,利用されている)場面,シチュエーションを具体的に思い描いてみる。
ロ・それにふさわしい登場人物を設定してみる
その場面にふさわしい登場人物(たち)は
・誰(どんなターゲット,どんな対象,どんなグループ,どんな年齢層)が
ふさわしいのか,性別,年齢,職業,背景,来歴等々を描きながら,それに似た映画,アニメ,マンガ,小説を借りて,ストーリーを描いてみる。
ハ・その場面の効果を上げるには,どんな仕掛け(舞台装置)がふさわしいかを列挙してみる
・デートの二人
・親子(父と子,母と子)連れ
・家族連れ
・女子高校生連れ
・体育会系の一団
・学生グループ
・サラリーマンの一団
・OLの一団
等々によって,それに似つかわしい舞台装置は何かを,街,町並み,風景,季節,時間,衣装を含めて挙げてみる。
ニ・こうして,状況設定と登場人物によって,文脈が整い,ひとつのストーリーを描いてみる
・何のために(動機,ニーズ,欲求)
・何を求めて(期待して,関心・動機)
・どのくらい(予算,コスト,値頃感,頻度)
・どんなふうに(使用方法,利用方法)
ホ・出来上がったコンセプトのストーリーから,新しい何かが見えたか
・いままでにないモノに見える(それは,急いで手に入れなくては!)
・新しい意味(価値)が見える(へェ,そんな意味があるのか!)
・新しい効用が見える(そうか,そんな効果が期待できるのか!)
・新しい面白さが見える(ほう,それは是非やってみたい!)
・新しい世界が見える(それは一度行ってみなくては!)
・新しい生活が見える(あんな楽しい生活を送りたい!)等々
ヘ・コンセプトは,課題(解決しなくてはならない「問題」)と焦点があっているか
ト・コンセプトの展開上,何かネック,障害,問題となりそうなことはないか
”でなくてはならない。そのためには,たとえば,「(いままでにない)(いままでにない)うまいラーメン屋」のコンセプトも,「人が並ぶ店」だけでは,具体像に欠ける。並ぶのが,サラリーマンなのか,学生なのか,若い女性なのか,家族連れなのか等々によって,同じラーメン屋でも,
「大学生の並ぶ店」なら,割安でボリュームがあり,味はそこそこ
「体育会系のマッチョの並ぶ店」なら,安くててんこ盛りサービス
「女子高生の並ぶ店」なら,小ぶりで選択肢の多いおしゃれな店構え
「サラリーマンの並ぶ店」なら,安くて早くて,味で満足させる
「若い女性の並ぶ店」なら,うまくて雰囲気のある小奇麗なつくり
「家族連れの並ぶ店」なら,大人から子供までのバリエーションのある品揃え
等々と,まったく目指す方向も基準も違ってくる。ここまで具体化しなくては,コンセプトは完成したことにならない。コンセプトが企画づくりの“へそ”となるかどうかはここでのイメージの具体化と肉付けで決まる。
プロファイル化したものを実現していくのが,企画づくり作業のすべてである。その意味では,プロファイル化されたコンセプトが,実現手段の具体的検討をするための機軸となっていく。