チェックリストを使いこなして発想力アップ
@チェックリストを使ってみる
チェックリストを、具体的に例にあげながら、その使い方に触れておきます。発想の基本スキルにあるチェックリストの中から、オズボーンのチェックリストを取り上げますと、次の通りです。
オズボーンのチェックリスト
・他に利用できないか/現在のままで新しい用途はないか/少し変えて他の利用法はないか
・他からアイデアが借りられないか/一部借りたら/これに似たものはないか/他に似たアイデアはないか/過去にこれと似たものはないか/何かマネできるものはないか/他に当て嵌められないか/誰のマネができるか
・変更したらどうか/新しく変えてみたら/曲げたらどうか、形を変えたら/意味、色彩、動作、音、香り、形式、包装、方法を変えてみたら/その他の変更をしてみたら
・大きく(あるいは多く)したら//何か加えたら/もっと時間をかけたら/回数(頻度)を多くしたら/もっと強くしたら/もっと高くしたら/もっと長くしたら/もっと厚くしたら/もっと速くしたら/もっと多くしたら/馬鹿でかくしたら/最大にしたら/誇張したら /他の価値を加えたら/他の成分を加えたら/倍にしたら/掛け合わせたら
・小さくしたらどうか/何か減らしたら/もっと小さくしたら/もっと濃縮(凝縮)したら/小型にしたら/もっと軽くしたら/もっと低くしたら/もっと遅くしたら/やめたら/少なくしたら/分割したら/ひかえめにしたら
・代用したらどうか/誰かほかの人にやらせたら/何かほかのものにしたら/ほかの成分にしたら/ほかの材料にしたら/ ほかの場所にしたら/ほかのやり方にしたら
・入れ替えたらどうか/構成分子を入れ替えたら/タイミングを替えたら/他の型に替えたら/向きを替えたら/上下を替えたら/他のレイアウトにしたら/他の順序にしたら/原因と結果を入れ替えたら/ペースを変えたら/日程を変えたら
・反対にしたらどうか/積極(肯定)と消極(否定)を変えたら/反対にしたら/裏返しにしたら/後ろ向きにしたら/逆さまにしたら/役割を逆にしたら/立場を変えたら/主客を転倒したら/逆に言ったら
・結合したらどうか/混合、合成、詰め合わせ、アンサンブルにしたら/組みにしたら/目的を結合したら/アイデアを結合したら |
これを発想のツールとして、下図を例に、みなさんも、実地に考えてみてください。
いかがでしたか?これまで以上にでましたか?それとも出しにくかったですか?
もし、チェックリストがあれば、いくつでもアイデアが出ると期待していた方はがっかりされたことだと思います。ひょっとすると、以前より出なかった可能性があります。
それは、発想技法というイメージに期待して、受動的になったからだと思います。以前のとき、自分で必死に考えようとされたのに比較すると、受身に回ったのではありませんか?
A使い方で変わるチェックリスト効果
チェックリストを発想のツールに使うというのは、その項目と照らし合わせれば、自動的にアイデアがでるというものではありません。そんなところてんを押し出すような便利なツールがあるはずはありません。
チェックリストを使うときも、その他の発想技法を使うときもそうですが、使う側の主体的な姿勢が問われているのです。
どういうことかといいますと、チェックリストの場合、たとえば「他に利用できないか」というチェック項目を何も考えず読み流していっても、決してアイデアにつながることはないのです。必要なのは、そのチェック項目を、自分の狭い発想への刺激として、それとキャッチボールすることなのです。
オズボーンのチェックリストを例にとって、具体的に考えてみます。
たとえば、「変更したらどうか」の項にあります、「曲げたらどうか、形を変えたら」という項目を例にとってみます。これをただ流すのではなく、
曲げてこういうカタチになったというのもある、
ここからいろいろな方向に曲げてみるというのもある、
カタチを曲げて変えるのもある、
カタチを変えてこういうふうに見えるもの、というのもある
等々と、その項目を切り口にして、あれこれと可能性を考えることなのです。それは、チェック項目を刺激に、自分自身の記憶と知識とのキャッチボールをするということなのです。チェック項目をひとつの外部情報として、自分自身を刺激するように、あれこれキャッチボールしてみる素材とするということです。
情報にするとは、その言葉を鵜呑みにするのではなく、その言葉の意味、イメージ、条件等々を様々に問い直して、様々に考える素材にする、という意味です。
そう考えていくと、曲げてこういうカタチになるものとして、
ゴム風船を無理やり折り曲げて重ねたところ
パン生地を丸めて半分のところに切れ目を入れたところ
練ったそば粉を曲げて重ねたところ
針金を曲げて作った知恵の輪
ワッフルのケーキを曲げて重ねたところ
あるいは、カタチを変えてこうなったものとして、
半分破れた金魚すくいの紙
ハンバーガーのパンに包丁で切れ目を入れたところ
かかとを小さくしたダイエット用のスリッパ
切れ目を入れたスイカ
半分残ったデコレーションケーキ
等々と、ひとつの項目から、いくつでも発想の種が出てくるはずです。たとえば、
「何か加えたら」
「もっと多くしたら」
「馬鹿でかくしたら」
「最大にしたら」
「もっと高くしたら」
「もっと長くしたら」
「もっと厚くしたら」
といった、大きさに関わる項目については、既に第1章で試みたのと同じことになりますので、この項目とのキャッチボールの仕方だけ例をあげてみますと、たとえば、何か加えるというのは、今から何かをしようとしているところ、し忘れているところ、何かを加えると完成する、何かをし忘れたので追加しようとする等々が考えられるはずです。
たとえば、「馬鹿でかくしたら」という項目とキャッチボールすると、馬鹿でかいとはどのくらいか、ボールと比較して大きいという意味か、ごま粒と比較して大きいという意味かという、これ自体の基準量をあれこれ考えるということがあります。また、それから何処まで大きくするのか、東京ドームか、人工衛星か、地球か、太陽か、星雲か等々といった、大きくする比例度の感覚もあるでしょう。
さらには、馬鹿でかくする、そのいまのものを何処に置くかで、その大きさ比は変わってきます。たとえば、スリッパに見えたのを例にあげたとしますと、
大人のスリッパ
といえば、子供のスリッパを基準においていることになります。
相撲取りのスリッパ
というと、大人のスリッパを基準においていることになります。それを具体化していくと、
小錦のスリッパ
ジャイアント馬場のスリッパ
というふうに挙げていくことができます。たとえば、
「もっと時間をかけたら」
を例にとってみますと、
ここからスタートして何らかのカタチになるところ、
時間を経てこうなってしまったところ、
もう少し時間があればもっと違ったものになるのに時間がなくてこうなってしまった、
等々が想定できます。とすると。
毛糸を丸く巻き始めたところ
止まりかけているコマあるいは回り始めたコマ
望遠鏡を横切った飛行機雲
割れた皿を合わせて接着しようと試みているところ
もっと模様をつけるつもりが忘れて一本棒の切れ目しかないフランスパン
ひび割れて亀裂の入った鏡餅
等々が上げられるはずです。
発想は発想する土俵が具体的であればあるほど、具体的な連想を生み出しやすいのです。その土俵は、何かを思いつく手がかりを、チェック項目が与えてくれていると考えればいいのです。
「他の価値を加えたら」
も、同じように考えると、たとえば、価値を、いい価値悪い価値、新しい意味古い意味、思い出という情緒、不安という情緒等々と広げていけます。また、
「他の成分を加えたら」
も、線を加える、色を加える、質を加える、肌あいを加える、臭いを加える、香りを加える等々とキャッチボールすることで、「合併で消された社章」とか「お香をたいているところ」「便器」といったイメージを浮かべやすくなるはずです。
このあたりで、止めますが、すべての項目とキャッチボールすれば、必ず何かが出てくるというわけではありません。が、少なくとも、固まっていた脳のネットワークに新しい回路が浮かんだり、忘れていた回路が再生したりする手がかりにはなるはずです。
ブレインストーミングと同様、チェックリストも、それを刺激として、自分の中に、自分の異質さを発見する条件づけ、として使えるはずなのです。