グルーピング効果-2-
〜グルーピングのすすめ方〜
グルーピング効果-1-
グルーピング効果-3-
前回述べたようなのビジュアル化によって具象化した情報を,
@モノとして,
A物理的にあれこれ,動かし,
B情報間に“共通性”を見つけ出して,
Cグループ化(部分集合)していく
ことになるが,この共通性の発見がいわば1つのグループに括り直すための共通基準の発見にほかならない。そしてこれは,ただ似ているということで安易に括ればいいのではなく,習慣的には相互に矛盾しあう要素間に「交錯点」を発見し,1つの脈絡にすること,つまり「特異点」を見つけることであり,「同定」(湯川秀樹)する(違ったものを同じものとみなす)ことであり,それによって,ひとつに括れる枠組を形成する(括り直す)ことができるものでなくてはならない。
そこでは,「似ているということと同じだということとは違いますけれども,似ているという以上は,両方のどこかに共通点がある,何かの点で同じだということに気づいたことを意味します。……似ているということだけでなく,どういう点が同じかということに気がつくということが,本質的に重要だと思います。……似ているものは同じだと思う,そういうときに急所を抑えている,ポイントを抑えている。……2つのものが,どういう意味で同じと認めるか,その本質をつかむ」(湯川秀樹)ことが重要なのである。
異質なモノを“似ている”“同じ”と見なすには,両者の間でのカタチの異同の問題(つまり類似性)と,両者の間のつながりの問題(つまり関係性)があるが,似ているものの本質をつかむには,例えばニュートンが,りんごと月と“同定”したように,両者を1つに括る共通性を発見するためには,両者のカタチが円いという外見の類似性とは別の,両者をつなぐ“何か”,つまり両者を構成要素とする関係,構造の発見がなくてはならない,ということなのである。
こうした“関連性”をつなぐ“何か”を見つける手掛かりは,前述したアナロジーにほかならない。例えば,鳥の羽根と人間の手と魚の鰭に共通性を発見するには,山椒魚とか飛び魚とかコウモリといった,形は異なるが仕組みは似ている,といった両者の関係性をつかみやすいアナロジーを見つけるのがいい。そうしたアナロジーをスクリーンにして,より具象的につながる“何か”を見やすくできるのである。
後でも触れるが,似ている,類似性というのは,かなり曖昧でしかない。例えば,人間の手と鳥の翼の関係は,外観は異なるが,発生や仕組みは等価である(相同性という),こうもりの羽根と昆虫の羽根は,外観は同一だが,発生や仕組みは異なっている(相似性という),ここまで踏み込まなくては,共通性を発見したことにはならないのである。だから,仮に外見の類似性だけで括ったとしても,それをより厳密に,どこがどう似ているかをはっきりさせようとしていけば,必然的に,両者の関係性そのものに,つまり比例関係,因果関係,包含関係,入子関係,部分・全体関係,類と種関係等々,両者の関わり(関連性)がどうなっているのか,どういう関係があるのかへと踏み入らざるをえないのである。だから,仮に取っ掛かりは「似ている」というところから入るとしても,そこで共通性発見の作業を止めてはならない。
その意味では,この“共通性発見”のプロセスは,「ものがわかっていく」過程であり,それは,「素材となる情報の間の対応関係をつけていく過程」であるということができる。それを組み合わせていくプロセス,グルーピングしていくプロセスとは,一般化していくことであり,それは,「1つの対象についての考察からその対象を含む集合の考察へうつってゆくことである。あるいは又制限された集合からその集合を含むもっと大きな集合の考察にうつること」(ポリア)なのである。
ではわれわれにとって,共通性を発見する手立てとして,どんなものがあるのだろうか?手掛かりとして,アナロジーを例示したが,それを含めて,必要なチェックポイントとして,以下に15項目挙げておく。われわれに必要なのは,煩を厭わないことだ。元素記号を紙切れに1つずつ書き,それを丹念に並べ替えて,元素の周期律表を発見し,未知の元素を予測したメンデレーエフのように,律義に,1つひとつをチェックしていかなくてはならない。
@まだ細分化し足りないのかもしれない。機能,形状,属性,特性,手段,方法,もっと分割できる,もう少しブレイクダウンできるかもしれない。
Aあるいは,逆に細分化し過ぎてしまっているのかもしれない。そのために,1つ1つが意味の単位を失っているかもしれない。もう少し意味のある単位まで戻さなくてはならない。
Bまず似たところはないかと考えてみる。意味的,形式的,質的,形態的,構造的等々同じところが見つかるかもしれない。もちろん直ぐ見つかったもので進めてはならない。それは見慣れた(耳慣れた,聞き慣れた)ものの可能性が大きい。他にないか,更にチェックを進めなくてはならない。
C違いはどこにあるか。逆に,似ても似つかないものはどれか,差異は何か,違いは何か,そうすることで区別がはっきりする。似ていないものとそうでないもの,という2グループの境界線が見えてくる。
D別に言い換え(置き換え)られないか。それはどういうことかと,別に言い換えてみる,別のものにたとえてみる(比喩),他のものに置き換えてみる(拡大解釈,抽象化,縮小,逆さに,裏返す,伸ばす,縮める等)。同じになるかもしれない。この操作自体が,一層のバラバラ化になる。
Eそれを具体例で考えてみる。どういうときにどういうことがあったか,誰がどこで何をしたか,という具体例,具体的人物,具体的事物,具体的出来事で比べてみる。
F両者に関係づけられるものはないか(アナロジー)。一部でも,他を介した間接的でも,断続したつながりでも,僅かに関係づけられるものはないか,原因結果,表裏,前と後,一方が他方の部分,他方が一方の全体,目標と手段,地と図,相関,従属,相補,補完,入子,主客,陰陽,等々。
G無関係なものはないか。逆に,どんな意味でも無関係なものによって,最初のグループ化が図れる。
H関係や類似させる媒介(触媒)はないか。全く関係なさそうなのに,何か別のモノや言葉と関係づけると,間接的に似てきたり,その関係づけによって,全体の配置が見えたり,順序が見えてきたりするかもしれない。
I両者をそれぞれ別のモノ(似たもの,関係あるもの)に置き換えてみる。それぞれを別のものに置き換えると,共通項が見えるかもしれない。
C′= C′
‖ ‖
A ≠ M
J補充・補完してみたらどうか。何が欠けていないか,何か加えられるものはないか。もし,それを補ったら共通項が見つかるかもしれない。例えば補助線を引いただけで,解けた幾何のように。
K結合してみる,合わせてみる,重ねてみる。それぞれを一体化すると,共通項がみつけやすくなるかもしれない。
Lそれぞれを統一する(括れる)ものはないかと考える。両者をまとめるとどうなるか,両者共通の傘はないか,共通に括れる枠はないか,と考えてみる。
Mそれぞれを遡ってみる。それぞれが何に原因している(由来している)か,何がもたらしたものかと,背景・根拠・理由に遡ってみる。そうすると共通の起源(上流)であったりするかもしれない。
Nそれぞれを下ってみる。これからどうなるか,今後の方向,流れを考えてみると,下流では一本化しているかもしれない。また何のために,どういう方向へ向かっているか,何を目指しているかと,理想・目的を考えてみる。
共通性を見つけたら,それぞれにグループ化していく,そして各グループ毎に,その共通性を表示する(ラベリングする)。これがそのグループの標題,タイトルとなる。これもまた,要素をカードに書き出したときと同様に,具体的でビジュアルでなくてはならない。それは,そのグループのメンバーつまり,カード群全体が,
「何を言わんとしているか」
「何を問題としているか」
「何が似ているか」
「なぜ似ているか」
という,共通性の中身を標題とすることである。その括りがまた,それを単位とする文脈があり,関係があり,そこからグループ同士に新しい関係づけを見つける手掛かりとなっていく。
それには「これから炙り出そうとする」全体の中での関係をイメージできるように,それぞれのグループの中身を言い表した具体的なものであることが好ましい。抽象的概念的であるほど,既知の分類枠を想定しやすくなる。また一般化しにくい個別的なニュアンスをもったグループの括りであるほうが,他のグループとの(類似性あるいは関係性の)距離を測りやすいのである。それは,グループ間の関係づけをするときに,役立つはずである。
(以下続く)
グルーピングについては,「アイデアづくりの基本スキル」を参照ください。
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