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Critique Back Number 35


高沢公信"Critique"/2004.12.20

 

OJTをすすめる環境づくり
〜管理者は職場の風土そのものだという自覚があるか〜

 

  • OJTを進める雰囲気があるか

 部下にとって,OJTが進めやすい環境とは,管理者やチームメンバーが,本人の指導プロセスをサポートしてくれているという雰囲気があるかどうかだ。理想をいえば,チーム全員が,お互いに学び学び合える雰囲気をつくっているということだ。その雰囲気を作り出すのは,その職場の管理者自身に他ならない。そうした雰囲気,自分が必要なときに,聞きやすく,教えをこいやすい,あるいはそれを受け入れる姿勢がある,と言うことだ。

 そのためには,

 @上司自身が,オープンなマインドをもっていること

 A部下への共感性があること

 の2点が重要である。

 @は,手を受け入れるだけでなく,自分自身のことや自分の状況もオープンにできる姿勢だ。たとえば,自分が緊急の仕事に追われてパニックになっていいるとき,部下から教えを請われたとする。そのとき,

 ・オープンでなくてはならないと思い,無理して笑顔をつくり,時間をつくる

 ・オープンでなくてはと思っていたのに,パニック状態のため,それどころではない,と声を荒げてしまう

 ・オープンでなくてはと思っていたのに,それどころではない状態で,「悪い,後にして」と言ってしまい,そのまま忘れてしまう

 ・パニック状態のところに,部下から声を掛けられたので,「悪いが,いま緊急の仕事に追いたてられて手が離せない。一時間待てるか?」とか,自分の状況を説明して,「急がないようなら,後にしてもらう。

 どれを取るかだ。大事なのは,相手のために時間を取りたいが,それどころではないので,時間をずらしてくれるようにと言葉にして説明できるかどうかだ。

 Aは,共感性だが,これは部下とどう関わるかという視点だ。部下との関わりで必要なのは,話しあい能力(責任・使命からの役割行動)とふれあい能力(感情交流,自己開示)である。

 管理者としての役割行動からくる指示・命令や報連相の「〜しなくてはならない」だけではなく,部下の心と関わらなくてはならないということだ。そのためには,みずからの心がわかっていなくてはならない。自分自身の気持ちや感情をさておくのではなく,自分自身の本心,本音が自分でわかっているかどうかだ。本心は別のところにあるのに建前でものを言っても,部下は3日で上司を知り,上司は3年して部下を知るで,すぐに部下は見透かす。


  • 管理者はOJTの環境である

 おのれ自身を知ってはじめて部下への対人感度が高まる。いわゆる目配り,気配り,心配りでも,自分の気持ちがわかっているから生まれる。そこに共感度があるのである。聞く耳ができる。メンバーの向き合っているものを共に向き合っていくことができる。

 たとえば,メンバーが大失敗をしたとする。その失敗の結果は責められても仕方ない。しかし,大事なのは,そのときメンバーが向き合っていた状況を,メンバーの立場で向き合って見ることだ。そして,役割行動から,責めるだけでなく,「どうすればよかったのと思うか」「他にどんな選択肢がありえたと思うか」と,本人に,本人の結果と向きあわせられることだ。それが次につながる。その状況を,そのときの,部下の立場から一緒になって見ていける姿勢を,共感性と言う。部下自身が別のやり方をすればよかったと気づきさえすれば,その結果の厳しい評価を,部下は受け入れるはずだ。管理者は,優秀な部下を使いこなす力が要る。人を使うには,合理的で理詰めの「話しあい能力」だけではなく,恐れや不安や悔しさといった感情を受けとめる「ふれあい能力」も必要なのだ。

 @とAの両方に不可欠なのが,アサーティブであるかどうかだ。それは,自分の意見,考え,気持ちを率直に,しかしその状況に合わせて適切に表現できるだけでなく,同時に相手も同じようにそうできることを認めて,相手の主張,思い,感情にも耳を傾けられる姿勢だ。

 思いの中には,怒りや反発,苛立ち等々のマイナスの感情も含まれる。自分の思いを,感情そのものとして発露するのではなく,冷静な言葉にして表現する姿勢がいる。自分の感情や本音を自覚していないから,感情に振りまわされる。怒鳴ってはじめて自分の感情に気づくのではなく,その自分の怒りを承知した上で,いかに自分が相手の行為に腹を立てているかを冷静に表現できることが必要なのだ。感情に振りまわされるのではなく,感情をコントロールするには,それなりの自己認知が必要であり,おのれを知ることは,管理者の前提である。


【管理者のアサーティブ度チェック】

部下の仕事ぶりや日頃の対応で優れていると感じたときは率直にその気持ちを伝えられる
自分のやりたいこと,チームの目指すことについて,メンバーにいつも語りかけている
自分が緊張したり,パニックになっていることを自分でも認める
メンバーが雑談しているところにも,気楽に加わることができる
メンバーに「どう今晩一緒に飲むか」と誘ったときに,断られても,それを受け入れられる
自分が知らないことがあったとしたら,メンバーにその説明を求めることができる
自分が困ったとき,メンバーや同僚にに支援を求めることができる
メンバーの意見が自分と異なったとき,ムキにならず,受け入れられる
自分の問題点や不都合を指摘されても,謙虚に聞く耳を持っている
部下から反対意見を出されても,冷静に彼我の分析をし,自分の反論を伝えられる
どんな難局,行き詰まりにも諦めず,メンバーにその状態を伝え,衆知を集めて乗り切ろうとする
自分の過ちやミスは率直に認めて,それを認めて誤まることができる
メンバーの問題行動や誤りをきちんと指摘したり,批判できる
周囲から誉められたときは感謝の気持ちやうれしさを率直に表現できる
自分の行動を批判されたとき,それにきちんと受け答えできる
たとえ重要な顧客やトップからの無理難題でも,きちんと反論し拒否できる
顧客や上司からの長話や長電話を,自分から切り上げる提案ができる
自分の話の腰を折ったり,中断したりする相手に,きちんとこのときの気持ちを伝えられる
メンバーや上司の過度の好意をわずらわしいとき,その旨をきちんと伝えて断れる
部下からの支援やサポートの要請にも,自分の判断で不要と感じたときはきちんと説明し,拒否できる

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