【 ステップ2 】ゴールの設定
ゴールセッティングについて,こんな調査結果がある。1953年の米国エール大学の卒業生に対して,次のような質問をした。
「あなたはゴールを設定していますか?」
「そのゴールを書き溜めていますか?」
「そのゴールを達成するために計画がありますか?」
この3つの質問すべてにイエスと答えたのは,全学生のたったの3%にすぎません。そして,20年後に追跡調査をしたところ,この3%の学生は,残りの学生に比べると,結婚,職業,健康状態において,満足度が高く,生活全般で成功を収めていた。その上,驚くべきことに,1953年の卒業生の総資産額の9割以上は,この3%の手に集中していたという。
コーチングスキルを持つ経営者,上司は,部下に徹底的にゴールセッティングを促す。コーチングの聞くスキル,承認のスキル等を使うことで,より効果的に部下のゴールを引き出すことができる。
ゴールセッティングのための質問は,ここをご覧ください。代表的には,次のようなものがあります。
「1年後,何を達成していたいですか」
「その時,手に入れているものはなんですか」
「そのゴールの先は何ですか」
「ゴールはコーチングの基盤をなすものです。コーチングは,クライアントに自分が望むことを明瞭に表現し,良い夢を見て,これらの夢に脚をつけて,夢が走り出すのを助けることなのです。」
(ジョセフ・オコナー&アンドレア・ラゲス『NLPでコーチング』)
なお,ゴールセッティング,「目標
の明確化の構造については,「目標の明確化に必要なこと」をご覧ください。
【 ステップ3 】現状の明確化
現状に対する正確な認識があってはじめて,その間にあるギャップが明確になる。ゴールに対して,現状では足りないもの,ゴールを達成するために必要なスキルやリソース,ゴールを達成するまでの プロセスで生じる障害,その障害を乗り越える方法,これらが明確になるほど,相手の中におのずと行動がみえてくる。
現状明確化の質問には,次のようなものがある。
「実際にやってみてどうでしたか」
「理想を100点とすれば,今は何点をつけられますか」
「いっしょに仕事をしている人は,なんと言っていますか」」
【 ステップ4 】ゴールと現状の間にあるギャップの分析
コーチングの目的はクライアントに行動を起こさせること。ところが,頭で理解したことと,行動の間には深い溝がある。理解したからといって行動に移せるわけではない。では,どうすれば行動を起こせるのか? コーチング・フローでは,【ステップ3
】で「現状の把握」をしたあと,「ゴールと現状の間にあるギャップの分析」の【 ステップ4 】に移行する。
そこでのコーチの役割は,クライアントが自分に合った行動を自分で見つけることができるようにすること。そのためには,自分がどこに行こうとしているのか,実際には何をしているのか,何が障害となっているのかについて,はっきりさせることが必要となる。ゴールと現状のギャップに焦点を当てる質問は,ここをご覧ください。代表的なものには次のようなものがある。
「やったほうがいいのに,やれていないことは何ですか?」
「やめたほうがいいのに,やり続けていることは何ですか?」
「ゴールに近づくために必要なリソースは何ですか?」
「曖昧にしていることは何ですか?」
(1)ゴールのヴィジョン,
(2)現状の把握,
(3)ギャップの認識
以上3つのどれか1つでも曖昧にしたままで。短絡的に行動だけを変えようとしても,決してうまくいかない。
コーチング・フローの中で,この段階までに,「いかにゴールのヴィジョンを鮮明に描くことができているのか」ということと,「どのくらい現状をリアルに把握できているのか」という二つのことが,その間のギャップの認識と実際の行動に大きく影響する。
【 ステップ5 】行動の決定
ゴールと現状とのギャップが明確になると,そのギャップを埋めるために必要な行動が明らかになりやすい。現状を明らかにするプロセスが大切なのは,クライアント自身が,自分がとるべき行動をその中で認識していくことができるからである。
クライアントがゴール達成に向けて行動を起こすとき,行動のアイディアを生み出すだけではなく,そのアイディアを行動に移すことのできる,もう1つのアイディアが必要になる。そこで,この【ステップ5
】では,コーチはクライアントのアイディアを引き出し,実際にクライアントが行動を起こせるようサポートする。どのような行動をとるのか,それを決定していくための質問は,ここをご覧ください。代表的なものには次のようなものがある。
「どのような行動計画を持っていますか?」
「いつ,どこで,誰と,どのようにやりますか?」
「今すぐできることは何ですか?」
「それを知るために何ができるでしょうか?」
ゴールとのギャップを埋めるために必要な行動は何か,まずはそれを知ることが,実際に行動を起こしていくために欠かせない大切な要素なのです。
【 ステップ6 】フォローする
ゴールを立てたものの,そこに向かうプロセスがうまくいかなかったり,ゴールの達成が難しくなることはある。クライアントが,約束どおりに行動を起こすかどうかは,クライアント自身だけではなくコーチにとっても重要になる。
クライアントが行動を起こすには,コーチのフォローが不可欠。コーチングで最も大切なのは,クライアントを実際に行動させること。確実に行動を起こすまでフォローすることが必要となる。
フォローする上において,最も効果的なのは,上記1〜5までのコーチング・フローを繰り返し,
(1)行動を起こしてみてどうだったか
(2)現状はどうか
(3)現状とのギャップは何か
(4)今どんな行動を取っているか
を聞く。そして,特に課題となっている領域に焦点をあて,そこを明確にすることをメインにコーチングをしていく。行動プランが明確になった後のコーチングセッションは,フォローの繰り返しと言える。
フォローアップを確実にするためには,そのための質問や提案を用意すること。フォローアップのための質問は,ここをご覧ください。代表的なものとしては,こんなものがある。
「今話したことについて,来週また時間をとって話しませんか」
「ことについて成果を確認できるまで,1ヵ月はサポートしたいと思います」
「困ったことがあったら,いつでも相談してください」
「行動を起こしたら,どうだったか教えてください」
「行動を確実にするために,私にできるサポートはありますか」
また,行動にリスクが伴うことや,非常にチャレンジを要する内容のものである場合,行動を行う事前に勇気づけをし,事後にやってみてどうだったかを振り返る「サンドイッチする」というコーチングスキルを活用するのも,効果的。
フォローアップは,行動を起こさせることを確実にするだけでなく,その行動内容を評価する意味がある。そのためにも,フォローアップはコーチングフローの中でも,大切な領域であるのです。