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マネジメントに求められる
コミュニケーションスキル@〜話すスキル

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コミュニケーションの心理構造〜言葉のやり取りを支えるもの

@言葉のやり取りの底にあるもの
コミュニケーションは言葉のやり取りだけではない。コミュニケーションの心理階層は次のようになっている。

A関わり能力の根拠
 部下との関係づくりで必要なのは,次の2つである。
 ・語り合う能力(=分かりあうための,責任・使命からの役割行動)
 ・ふれあう能力(=共感しあうための,感情交流,自己開示)
 つまり,管理者としての役割行動からくる指示・命令や報連相だけではなく,部下の心と関わるためには,みずからの心が不可欠である。その鍵は,対人感度である。もう少し言えば,目配り,気配り,心配りである。それには,共感度がいる。聞く耳のことだ。メンバーの向き合っているものを共に向き合っていくことだ。
 たとえば,メンバーが大失敗をしたとする。その失敗の結果は責められても仕方ない。しかし,大事なのは,そのときメンバーが向き合っていた状況を,メンバーの立場で向き合って見ることだ。そして,役割行動から,責めるだけでなく,「どうすればよかったのと思うか」「他にどんな選択肢がありえたと思うか」と,本人に,本人の結果と向きあわせられることだ。それが次につながる。
 その状況を,そのときの,部下の立場から一緒になって見ていける姿勢を,共感性と言う。部下自身が別のやり方をすればよかったと気づきさえすれば,その結果の厳しい評価を,部下は受け入れるはずだ。管理者は,優秀な部下を使いこなす力が要る。
 人を使うには,合理的で理詰め ,敢えて言えば,建前的な「語り合う能力」だけではなく,恐れや不安や悔しさといった感情を 本音で受けとめる「ふれあう能力」も必要なのだ。

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自己開示できる表現力をつける〜ふれあう能力の根拠

◇ふれあう能力に必要なのはアサーティブな自己表現である。それは,「自分も相手も大切にした自己表現」である。自分の意見,考え,気持ちを率直に,しかしその状況に合わせて適切に表現できることを,アサー ティブと言う。 「自分も相手も大切にした自己表現」とは,自分が自己を率直に表現する権利があると同時に,相手にも,同じ権利があることを認めること。したがって,「相手の権利を侵害せず,率直に,対等に,自分の気持ちや要求を表現することである。

◇自己表現には,次の3種がある。

 @攻撃的(アグレッシブ)な自己表現 自分の意見,主張は大切にするが,相手のことはあまり眼中にない。結果として相手に自分を押し付けることになる。たとえば,並んでいるときに割り込まれると,「おまえ,ここはみんな並んでいるんだ,後ろに並べ」と大声で怒鳴る人。「私はOKあなたはOKでない」という姿勢。

 A非主張的(パッシブ)な自己主張 相手に配慮やおもんぱかりはするが,結果として自分の思いや主張を表現しなかったり,し損ない,自分を大切にしないことになる。たとえば,列に割り込まれると,一人でぶつぶつ言うが,我慢してしまう人。結局ストレスがたまり,被害者意識を募らせることになる。「私はOKでないが,あなたはOK」という姿勢。 この場合,口に出せず,引っ込めたため,あてつけがましい行動や態度で,口に出す代替行為をとることも含まれる。

 Bアサーティブな自己表現 自分も相手も大切にする自己表現。しかし自分の意見がとおるというのではないが,安易に妥協せず,お互いの意見を出し合い,譲ったり譲られたりしながら,相互に納得のいく結論を出そうとする。そのプロセスを大事にするから,葛藤が起こることを覚悟し,葛藤を引きうけていこうとする気持ちが強く出る。したがって,強く主張するだけでなく,相手の表現にも耳を傾ける。たとえば,列に割り込まれたときは,「ここは皆さん並んでいますから,後ろに並んでいただけますか」と冷静に,きちんと伝える。「私はOKあなたもOK」という姿勢。大切なことは,共有できる事実で語ることだ。

【管理者のアサーティブ度チェック】

目的・方向性,ビジョンを常に自問し,メンバーに明確に語るようにしている
メンバーとのベクトル合わせ,判断基準の刷り合わせを怠らない
メンバーの役割を明確にし,何をなすべきかについて話し合っている
メンバーに,途中経過,進捗状況,目標達成度についてオープンにしている
プランや企画立案に当っては,メンバーの知恵を集めるようにしている
メンバーに自らの問題意識をぶつけ,キャッチボールすることをいとわない
目標達成の障害となる行為,判断基準からの逸脱には,その理由を説明して,注意もし叱責もする
メンバーの状態や進捗度を見極めながら,いつでも声をかけたり,サポートの手を差し伸べる
メンバーの力量,成長目標について率直に現状を評価し,レベルアップへの支援も心がける
どんな難局,行き詰まりにも諦めず,メンバーの衆知を集めて乗り切ろうとしている
自分の問題や不都合についても謙虚に聞く耳を持っている
メンバーからの具申,提案,提言は必ず全体でオープンに議論する
自分の意思決定についてはオープンにし,その理由についても説明する
周囲から誉められたときは感謝の気持ちやうれしさを率直に表現できる
自分の知らないことがあったとき,「すいませんよくわからないのですが」と素直に聞ける
部下の仕事ぶりや日頃の対応で優れていると感じたときは率直にその気持ちを伝えられる
自分への不当な要求や批判には冷静に反論できる
たとえ重要な顧客やトップからの無理難題には,きちんと反論し拒否できる
部下の支援やサポートの要請には,自分の判断で不要と感じたときはきちんと説明し,拒否できる
自分の過ちやミスは率直に認めて,謝ることができる
自分の決断の過ちが明らかとなれば,直ちに修正するのをいとわない
結果責任については,自分自身が負うことは当然だと考え,常にその旨表明している

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bulletアサーティブな表現をするための基本ステップ〜DESC法

 アサーティブであるとは,自己主張的であればいいということではない。少なくとも,自分の要求や主張が,相手に受け入れやすいものでなくてはならない。そのためには,事実に基づいて,相手の受け入れやすい,相手がそれに乗っても損をしないと思わせるだけの土俵が必要になる。そのひとつのスキルが,次のDESC法である。

 D=Describe 自分のぶつかっている状況や相手の行動について,相手と共有できる客観的事実を描写する。自分の気持ちや感情を交えずに表現する。
 E=Express  Explain 自分のぶつかっている状況や相手の行動に対する自分の感情や気持ちを建設的に表現する
 S=Specify 相手に望む行動,提案,妥協案,解決策などを提案する
 C=Choose 肯定的否定的等々相手の出方を予想して,どう行動するか選択肢を考えておき,次の提案とする
 たとえば,会議中の喫煙でもうもうになったとすると,「会議が一時間続いて部屋がもうもうです」(D),「私は煙草を吸わないので喉が痛くなってきました」(E),「しばらく空気を入れ替えませんか」(S),「そうすればこのまま会議が続けられますが」(肯定的結果へのC),「でなければちょっと一息入れませんか」(否定的結果へのC)

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自己開示のためのスキル

◇アサーティブであることのスキル

 @自分を知ること 自分の気持ち,考えに正直であることが前提となる

 A共感的理解 相手が何を感じ,何を考えているか,相手の立場で理解しようとすること

 B受容 相手を受け入れられるには,自分自身を受け入れられなくてはならない

 C対等で相互尊重 権威や立場で相手を操作するのではなく,相手を知りたいという思い

 D自己信頼・自己尊重 自分を信頼することで,自分の内部の声に耳を傾けることができる

 E自責 相手を尊重する,相手に耳を傾けるのは,自分の責任でするということ。そうするのもしないのも自己責任

 F多様性を受容 自分と異なる多様性こそがチーム力に繋がる

 G感情を言葉にする 怒ってしまえば,感情そのものをぶつけたことになる。「私は怒っている」と表現することで,相手との理解の土俵ができる

 H非言語コミュニケーション 言葉以外のしぐさ,表情もまたコミュニケーションになっている。コミュニケーションのうち,言語は7%しか占めていない。残り93%のうち,55%が表情,38%が口調。

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感情を言葉にする効果〜間合いを取る

◇言葉の力は,2つある。
 ・指示の明確さ(対象指示性)
 ・自己表現力(自己表現性)
 ・フィードバック力(他者理解度性)
 である。管理者が言葉を発するのは,みずからの意思をキチンと伝えるためである。いくら指示が明確でも,意思のない言葉に力はない。 「私は〜と思う」「私は〜と考える」と,明確な自分のメッセージと意思を語る力とは,自己確信である。 しかし,さらに大事なのは,上記二つは主観的なものだ。それが,独りよがりにならず,相手に伝わっているかどうかを確かめる客観的な力があってはじめて,その人の言葉に力がある,といえるはずである。つまり,自分のいうことに対して,相手がどんな身振り,手振り,感情,言葉,振る舞い等々のフィードバックをしたかを,きちんと読み取り,相手がどう受け止め,どう感じ,どう理解してくれているかを,きちんと推し量り,つかむことが出来ることである。それが,自分の言葉の伝達力であり,言葉の力の源である。それは共感性と同じく,相手の目線で(自分の視点だけでなく,相手の立場や視点で)確かめられる発想の柔軟性があることをも意味している。

◇管理者の信頼のバックボーンは,言葉である。といって聖人君主である必要はない。怒りも腹立ちもなくすことはできない。それならなまじ「バカヤロー」と言いたい気持ちを隠すよりも,「おれは,バカヤローといいたい気分だ」と,アサーティブに言葉にすることだ。それが,感情を直接ぶつけるのとは違う,言葉によるやり取りを可能にするはずだ。感情を感情としてではなく,言葉として表現しようとしたことで,

  @自分の感情との間合いが取れる,

  A相手の感情とも距離を取れる。感情のやり取りを感情のぶつかりあいでなく,感情を言葉にするコミュニケーションの土俵ができる。

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自分の考え,気持ちを正確に伝えるスキル〜LADDERの手順

は,Look at の意味。自分の気持ち,欲求を振り返ること。たとえば,「困っている」「緊張している」「腹がたっている」「反対である」といった,相手に伝えたい自分の気持ち,感情を明確にしておくことである。

は,Arrangeの意味。相手に切り出すTPOを決める

は,Define problem situation つまり,自分のかかえている問題状況を明確にすること。そのときの鍵は事実に即して,ということ。

は,Describe your feelingsつまり,「私は……と思う」(これを“Iメッセージ”と呼ぶ)と,自分の気持ちを表現し,伝える。「おまえは」と怒りをぶつけるのではなく,「私は,君のその態度に腹がたっている」と表現することで,コミュニケーションの土俵に乗せることになる。

は,Expressつまり,以上の自分の気持ちを表現していく。

は,Reinforceつまり,自分の提案に相手が乗りやすいように,スパイスを加える。たとえば,「そうしたほうがあなたにかくかくのメリットがあるはずです」あるいは「そうしないとこういうマイナスがあります」といったようなメッセージを加える。

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相手を観察するスキル

 @共有できる事実をさがす

 いきなり自分の要求や感情を伝えるのではなく,相手にもわかる事実を伝えようとすることで,自分の感情を押さえることにもつながる。たとえば,列に割り込まれたとき,「ここは並んでいるんですよ」「列の後ろはあそこです」という。

A感情にとらわれない状況把握

 非難したくなっても,その気持ちを脇において,状況を観察する。そうすることで,相手の行為の理由や状況が見えてくる。観察するということは,状況や相手について見える事実を客観的に把握することであり,それを感情的でなく,言葉にできれば,会話の土俵ができる。「何でそんな態度をとるんだ」と怒鳴っても,問題は解決しない。売り言葉に買い言葉になるのなら,「そういう態度をとられると,僕としては君を助けてやる気持ちがなえてしまう」と言ったほうが,次へつなげられる。

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要求や希望を明確に表現するスキル

@具体的な提案をする

 観察された事実と自分の感情を区別できていれば,どうしてほしいかをきちんと伝えても,そのメッセージは伝わるはずである。具体的であるとは,5W1Hである。いつ(からいつまでに),何を,どうしてほしいのか。

A選択肢を提案する

 やるかやらないかというのは,提案ではない。相手の意志で選択できる可能性を,相手と一緒に考えても言いが,複数(できれば3以上)考えること

参考文献:平木典子『自己カウンセリングとアサーションのすすめ』(金子書房)
菅沼憲治『セルフアサーショントレーニング』(東京図書)

森田汐生『「NO」を上手に伝える技術』(あさ出版 2005)

コミュニケーションスキルA

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