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TA(交流分析)は,集団心理療法の技法として開発されたが,パーソナリティ論,人間関係論へと広く応用されてきた。その特色は,
◇自己理解を,親子関係を出発点とした対人関係の視点でとらえる
◇対人関係の基本動因として,ストローク(人とのやりとり)欲求を重視する
◇「いま,ここ」の体験への気づきを重視する
◇勝ち負けではなく,わたしも0K,あなたもOKという共存共栄の人間関係を目指している
TA分析結果をもとに,コミュニケーションパターンがどう左右されるかを,いくつかの視点からみておく。
◇ストロークとは,「あなたがそこに存在していることは知っている,ということを知らせる機能のあるすべての働きかけ(振り)」である。身振り,手振り,口ぶり,目配せ,タッチ,接触,なぜる等々。誰もが自分の存在を認めてほしいという基本的欲求があり,その意味で,誰もがストロークを求めている。
《2つのストローク》
・タッチストローク《肯定的》 撫でる,さする,抱く,握手する,
《否定的》 たたく,殴る,つねる
・心理的ストローク《肯定的》 ほめる,励ます,うなずく,挨拶する,ほほ笑む
《否定的》 しかる,怒る,怒鳴る,睨む,禁止する
《条件付きストロークと無条件ストローク》
ある人の特定の行動に対して与えるストローク。
・条件付き肯定的ストローク 「親の言うことを聞くおまえはいい子だ」「勉強すればほめてあげる」
・条件付き否定的ストローク 「そういうことをするおまえは嫌いだ」「泣く子は捨ててしまうぞ」
・無条件の肯定的ストローク どんなことをしてもその存在を受け止める場合に与えられるストローク。「あなたは,わたしの大事な子よ」
・無条件の否定的ストローク どんなことをしても,その存在そのものが否定される。「おまえなんか見るのもいやだ,出ていけ!」
◇コミュニケーションの身構えを左右するのが,その人の「人生の立場」。これが,相手に対する反応傾向を決める。
@私は私にOKである。あなたは私にOKである
私はOKであるからあなたもOKである,のではない。あるがままのあなたと私の存在が共にOKである⇒一緒にやっていける。こういう人は,
・ものごとに正面から取り組む。
・現実的(目標達成可能,変更にも柔軟)
A私は私に0Kでない。あなたは私にOKである
自分の存在をみとめない⇒逃げる。こういう人は,
・人の目が気になる。
・他人と自分を比較して自分の無力さを感じてしまう。
B私は私にOKである。あなたは私にOKでない
自分に対する責任をとらない⇒攻撃的。こういう人は,
・妄想的,極端な不信感,憎悪→逆転すると,Aの立場に変わる。
C私は私にOKでない。あなたは私にOKでない
社会や人間に関心がない⇒どうしようもない。こういう人は,「あきらめ」
A〜Cの人は,事実関係に関係なく決めつけている。AとBの人は裏腹の関係。このどれかひとつの立場に固定しているわけではない。多く,人は相手や時に応じて変えている。その人が一番多くの時間をどの立場に割いているかで立場はきまる。
◇「人生の立場」によって,その人のストロークが左右されるのは,自分や他人を0Kと感じていれば,肯定的なストロークを取るからにほかならない。この「人生の立場」を決めるのが,ペアレント(Pと略称),アダルト(Aと略称),チャイルド(Cと略称)の「自我状態」。E.バーンは,この3つに応じた行動パターンがあるとした。
◎Pは,親を意味するペアレントの略。親からもらった録音テープ」とも言われ,親から受けた影響を自分の中に取り入れたもの。Pには,批判的部分と保護的部分の2側面がある。
・「他人に迷惑をかけるな」「絶対に失敗するな」「悪いことをしてはいけない」「日本人は甘えん坊だ」というのは批判的P
・子供にほほえんだり,「心配するな俺が何とかしてやる」「よくやった,ご苦労さん」というのが保護的P
◎Aは,成人を意味するアダルトの略。現実的な自我といっていい。現実の中で,問題を解決するにはどうしたらいいかを考える。そのためにデータを集め,分析し,確立を推測していこうとする。
◎Cは,チャイルドの略。幼少時代の想い出がよみがえり,子供のような感情と考えが自我を支配する状態。Cの自我には,自然のCと順応のCがある。
・自然のCは,生まれながらの自然の子供で,自発的で,創造的で,天真爛漫。
・順応のCは,親を意識した,親を喜ばせようとするか,親に反抗しようとする。親に従順になったり,ひきこもったりするCと反抗するCの2つの側面がある。
参考文献:S・ウーラムス&M・ブラウン&K・ヒュージィー『TA入門』(深沢美智子・六角浩三他訳 組織行動研究所 1978),エリック・バーン『人生ゲーム入門』(南博訳 河出書房新社 1967)
中村和子・杉田峰康『わかりやすい交流分析』(チーム医療 1984),杉田峰康他『交流分析入門』(チーム医療 1984),新里里春他『交流分析とエゴグラム』(チーム医療 1986)
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