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職場で効果的なコミュニケーションをどう実践すればいいのかU


コミュニケーションは何のために必要なのか
チーム内コミュニケーションの3つのレベル
コミュニケーションの中身と求められる能力
コミュニケーションの土俵をつくる

コミュニケーションの手段と機会
どうコミュニケーションをスタートさせるか
コミュニケーションの機会を逃さない


コミュニケーションの目的は,職場の目的達成のために,各人が何をするかの分担をはかり,それぞれの分担した機能が,有機的に機能するよう,常にベクトルを合わせることである。そのために,各職場毎に,いつ,誰と誰が,何を,どこで,どういうときに,どういうカタチでコミュニケーションをとれるようになっているか,その仕組みとツールが共有化されていなくてはならない。

 

 では,具体的にどうコミュニケーションをはかればいいのか。コミュニケーションは自分の話したことではなく,相手に伝わったことが,自分の話したことである。相手にできるだけ届くように,まずは,相手に聞く姿勢になってもらうための準備作業がいる。両者が土俵を意識して初めて伝える・聞くの関係が始まる。どのレベルのコミュニケーションでも,相互の間で,お互いに「どういうテーマ(話題)」を話をしているかについて共通認識ができていなければ,すれ違いざまの挨拶にすぎない。共通に何について話しているという土俵がないところでは,コミュニケーションは成立しない。仮にコミュニケーションしても,「言った,言わない」が起きる。

まず,一対一の対話なら,たとえば,「いまちょっといい?」「いま,5分いい?」「ちょっと話がしたいのだが,いい?」とはじまるだろうし,ミーティングなら,事前のアジェンダの周知からはじまる。その意味では,もともと盛り上がっている雑談に,友人関係でもないものが,途中から加わろうとすることには無理がある。その場合,「話に加えてもらってもいいか?」と,了解をとり,「何の話?」と,話題を教えてもらうことが,そのコミュニケーションの土俵に乗せてもらうための礼儀というものである。

 コミュニケーションの機会はさまざまあるが,そのつど何のためにそれをするのかという目的意識を明確にもち,それを相手にも伝えなければ,単なる情報のやり取りで終わる。当然ミーティングの目的と立ち話の目的は違う。

●報連相

 たとえば,報連相,報告というのは,仕事のPDCAの共有化,仕事の進捗状況のすりあわせであり,連絡とは,業務情報の共有化,知識,情報のレベルあわせであり,相談とは,問題状況の共有化,現場で起きていることの見通しをキャッチボールすることである。上司にとっては,現場で何が起きているかを知る機会であり,部下にとっては,どこまで自分が責任をもち,上司やチームがどれだけサポートしてくれるものなのかを,確かめ,すりあわせる場でもある。とするなら,このひとつひとつが,上司と部下との間で,パブリックを作り上げていく機会そのものである。その中で,大事なことは,仕事はチームでするものであり,自分で解決してはいけないことや解決できないことは,それを解決できるレベルに上げて,チームや上司,あるいは更に上に上げて,解決するようにはかることであり,決して自分でかかえこんだり,背負い込んだりしないですむためにこそ,報連相という,コミュニケーションの土俵があることを,相互で確認していく場でもある。

●ミーティング

ミーティングは,何のために開いているのか。たとえば,全員に方針や考え方を周知徹底する,全員で決めたという手続きが必要,全員の意見を聞きたい,全員が顔を合わせる唯一の機会,問題意識を共有化等々。それには,ただ漫然と開くのでなく,まずリーダーとして,どんなミーティングにしたいのか,を明確にしなくてはならない。たとえば,全員に意見を言ってほしい,ただ順次発言を廻すだけでなく,自由闊達な,ブレーンストーミング的なやり取りができるミーティングをしたい,云々。

もし全員がそこに参加することに意味があるのだとすると,それを意味あらしめるためには,そこに参加し,議題に意見を交わす必要があるからではないのか。仮に,メンバーの話を聞くということを目的においたなら,儀礼的に発言を求めるだけでは意味がない。意見が出ないなら,出るように,あるいは出したくなるように,会議前の準備作業で,あるいは会議のプロセスで,更には会議終了後のフォローで,工夫をしなくてはならない。

たとえば,ミーティングの事前に,ひとりひとりと話をしてみる,テーマや議題について周知をはかる。またミーティングの進め方としては,出た意見をボードや模造紙に文字化し,発言者から切り離し,それについて論ずるようにする,その役を若手に振ってみる,若手にミーティングの進行役を任せてみる。あるいは,ミーティングの席を毎回変えてみる,若手だけとミーティングをしてみる,事前にベテランに根回しし,しばらく発言を我慢させ,若手だけの意見を徹底的に求める,ミーティングのあと,若手ひとりひとりと振り返りをしながら,感想を求める等々。

会議などで,意見がないのは,何も考えていない,考える必要に迫られない,意見はあるがいいたくない,言うとあとでベテランから嫌味を言われたりして不利益になる,意見はあるがいっても仕方がない等々があるだろうが,まずは,意見を言わないで済ませてしまうことに,会議のもち方や問いかけ方に問題がある。意見を言いたい言いたくないのレベルではなく,当事者として,絶対意見を言わなくてはならないのなら,言わなくてはならない状況をつくらなくてはならない。少なくとも,儀式のように,意見を求めるだけの風土を変えなくてはならない。

たとえば,若手から発言を求め,それをきちんと聞く。場合によっては板書する。意見を求めて,「別に,」という返事なら,そこで終えない。「別に,と言うのはどういう意味?」と聞いていく。黙っていても,ただ待つ。聞くとは,聴き切る姿勢だ。相手が何を考えているのか,あるいは何も考えていなのも含めて,言い尽くすまで,待つこと,待てることだ。「特に考えていませんでした」と応えても,それで終わりではない。「いま,どう思うかを考えて」「そう聞かれて,どう感じた?」と聞く。困惑しようが,引かれようが,会議が,皆の意見を求めるために開くのなら,それはリーダーの決断で動きはじめるはずだ。ただ,それは追求でも吊るし上げの場ではない。どんな発言であれ,発言があれば,途中で評価したり批判することなく,最後まで言い尽くさせる。そういう反応や雰囲気で,ここで意見を言ってもいい,意見を言ってよかったと感じさせる雰囲気が醸成されるようにしなくてはならない。それは,リーダーにしかできないことなのではないか。

●雑談・立ち話

 日々何気ない雑談したり,立ち話をする。それをどう意識的なコミュニケーションの手段にするかだ。例えば,上司が,日に何度も,「どう?うまくいってる?」とか,「必要があったらいってね?」などと声をかける,とする。そうすれば,初めはうるさく感じても,少なくとも,上司が自分を気にかけてくれていることだけは伝わる。3回以上接触があると,親しみを感じるというデータもある。それを,いわば,相手との土俵づくりのきっかけにするのである。後は,日に何度か,立ち話で,情報交換ができるようになればいい。形式ばった報連相とは別に,私的に報連相を重ねられるようになるだろう。信号待ちの30秒程度の立ち話でも,積み重ねることで,十分相手とのパブリックを広げることはできるのである。


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