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OJTのためのコミュニケーションスキル

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bullet自己開示できる表現力をつける

管理者に必要なのはアサーティブな自己表現である。それは,「自分も相手も大切にした自己表現」である。自分の意見,考え,気持ちを率直に,しかしその状況に合わせて適切に表現できることを,アサーションと言う。

 自己表現には,

 @攻撃的(アグレッシブ)な自己表現 自分の意見,主張は大切にするが,相手のことはあまり眼中にない。結果として相手に自分を押し付けることになる。たとえば,並んでいるときに割り込まれると,「おまえ,ここはみんな並んでいるんだ,後ろに並べ」と大声で怒鳴る人。「私はOKあなたはOKでない」という姿勢。

 A非主張的(ノン・アサーティブ)な自己主張 相手に配慮やおもんぱかりはするが,結果として自分の思いや主張を表現しなかったり,し損ない,自分を大切にしないことになる。たとえば,列に割り込まれると,一人でぶつぶつ言うが,我慢してしまう人。結局ストレスがたまり,被害者意識を募らせることになる。「私はOKでないが,あなたはOK」という姿勢。

 Bアサーティブな自己表現 自分も相手も大切にする自己表現。しかし自分の意見がとおるというのではないが,安易に妥協せず,お互いの意見を出し合い,譲ったり譲られたりしながら,相互に納得のいく結論を出そうとする。そのプロセスを大事にするから,葛藤が起こることを覚悟し,葛藤を引きうけていこうとする気持ちが強く出る。したがって,強く主張するだけでなく,相手の表現にも耳を傾ける。たとえば,列に割り込まれたときは,「ここは皆さん並んでいますから,後ろに並んでいただけますか」と冷静に,きちんと伝える。「私はOKあなたもOK」という姿勢。大切なことは,共有できる事実で語ることだ。

【管理者のアサーティブ度チェック】

目的・方向性,ビジョンを常に自問し,メンバーに明確に語るようにしている
メンバーとのベクトル合わせ,判断基準の刷り合わせを怠らない
メンバーの役割を明確にし,何をなすべきかについて話し合っている
メンバーに,途中経過,進捗状況,目標達成度についてオープンにしている
プランや企画立案に当っては,メンバーの知恵を集めるようにしている
メンバーに自らの問題意識をぶつけ,キャッチボールすることをいとわない
目標達成の障害となる行為,判断基準からの逸脱には,その理由を説明して,注意もし叱責もする
メンバーの状態や進捗度を見極めながら,いつでも声をかけたり,サポートの手を差し伸べる
メンバーの力量,成長目標について率直に現状を評価し,レベルアップへの支援も心がける
どんな難局,行き詰まりにも諦めず,メンバーの衆知を集めて乗り切ろうとしている
自分の問題や不都合についても謙虚に聞く耳を持っている
メンバーからの具申,提案,提言は必ず全体でオープンに議論する
自分の意思決定についてはオープンにし,その理由についても説明する
周囲から誉められたときは感謝の気持ちやうれしさを率直に表現できる
自分の知らないことがあったとき,「すいませんよくわからないのですが」と素直に聞ける
部下の仕事ぶりや日頃の対応で優れていると感じたときは率直にその気持ちを伝えられる
自分への不当な要求や批判には冷静に反論できる
たとえ重要な顧客やトップからの無理難題には,きちんと反論し拒否できる
部下の支援やサポートの要請には,自分の判断で不要と感じたときはきちんと説明し,拒否できる
自分の過ちやミスは率直に認めて,謝ることができる
自分の決断の過ちが明らかとなれば,直ちに修正するのをいとわない
結果責任については,自分自身が負うことは当然だと考え,常にその旨表明している

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bulletアサーティブな表現をするための基本ステップ〜DESC法

 D=Describe 自分のぶつかっている状況や相手の行動について,相手と共有できる客観的事実を描写する。自分の気持ちや感情を交えずに表現する。
 E=Express  Explain 自分のぶつかっている状況や相手の行動に対する自分の感情や気持ちを建設的に表現する
 S=Specify 相手に望む行動,提案,妥協案,解決策などを提案する
 C=Choose 肯定的否定的等々相手の出方を予想して,どう行動するか選択肢を考えておき,次の提案とする
 たとえば,会議中の喫煙でもうもうになったとすると,「会議が一時間続いて部屋がもうもうです」(D),「私は煙草を吸わないので喉が痛くなってきました」(E),「しばらく空気を入れ替えませんか」(S),「そうすればこのまま会議が続けられますが」(肯定的結果へのC),「でなければちょっと一息入れませんか」(否定的結果へのC)

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自己開示のためのスキル

◇アサーティブであることのスキル

 @自分を知ること 自分の気持ち,考えに正直であることが前提となる

 A共感的理解 相手が何を感じ,何を考えているか,相手の立場で理解しようとすること

 B受容 相手を受け入れられるには,自分自身を受け入れられなくてはならない

 C対等で相互尊重 権威や立場で相手を操作するのではなく,相手を知りたいという思い

 D自己信頼・自己尊重 自分を信頼することで,自分の内部の声に耳を傾けることができる

 E自責 相手を尊重する,相手に耳を傾けるのは,自分の責任でするということ。そうするのもしないのも自己責任

 F多様性を受容 自分と異なる多様性こそがチーム力に繋がる

 G感情を言葉にする 怒ってしまえば,感情そのものをぶつけたことになる。「私は怒っている」と表現することで,相手との理解の土俵ができる

 H非言語コミュニケーション 言葉以外のしぐさ,表情もまたコミュニケーションになっている。コミュニケーションのうち,言語は7%しか占めていない。残り93%のうち,55%が表情,38%が口調。

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自分の考え,気持ちを正確に伝えるスキル〜LADDERの手順

は,Look at の意味。自分の気持ち,欲求を振り返ること。たとえば,「困っている」「緊張している」「腹がたっている」「反対である」といった,相手に伝えたい自分の気持ち,感情を明確にしておくことである。

は,Arrangeの意味。相手に切り出すTPOを決める

は,Define problem situation つまり,自分のかかえている問題状況を明確にすること。そのときの鍵は事実に即して,ということ。

は,Describe your feelingsつまり,「私は……と思う」(これを“Iメッセージ”と呼ぶ)と,自分の気持ちを表現し,伝える。「おまえは」と怒りをぶつけるのではなく,「私は,君のその態度に腹がたっている」と表現することで,コミュニケーションの土俵に乗せることになる。

は,Expressつまり,以上の自分の気持ちを表現していく。

は,Reinforceつまり,自分の提案に相手が乗りやすいように,スパイスを加える。たとえば,「そうしたほうがあなたにかくかくのメリットがあるはずです」あるいは「そうしないとこういうマイナスがあります」といったようなメッセージを加える。

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相手を観察するスキル

 @共有できる事実をさがす

 いきなり自分の要求や感情を伝えるのではなく,相手にもわかる事実を伝えようとすることで,自分の感情を押さえることにもつながる。たとえば,列に割り込まれたとき,「ここは並んでいるんですよ」「列の後ろはあそこです」という。

A感情にとらわれない状況把握

 非難したくなっても,その気持ちを脇において,状況を観察する。そうすることで,相手の行為の理由や状況が見えてくる。観察するということは,状況や相手について見える事実を客観的に把握することであり,それを感情的でなく,言葉にできれば,会話の土俵ができる。「何でそんな態度をとるんだ」と怒鳴っても,問題は解決しない。売り言葉に買い言葉になるのなら,「そういう態度をとられると,僕としては君を助けてやる気持ちがなえてしまう」と言ったほうが,次へつなげられる。

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要求や希望を明確に表現するスキル

@具体的な提案をする

 観察された事実と自分の感情を区別できていれば,どうしてほしいかをきちんと伝えても,そのメッセージは伝わるはずである。具体的であるとは,5W1Hである。いつ(からいつまでに),何を,どうしてほしいのか。

A選択肢を提案する

 やるかやらないかというのは,提案ではない。相手の意志で選択できる可能性を,相手と一緒に考えても言いが,複数(できれば3以上)考えること

参考文献:平木典子『自己カウンセリングとアサーションのすすめ』(金子書房)
菅沼憲治『セルフアサーショントレーニング』(東京図書)

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