- 研修の狙い
- 問題は誰にとっても問題とは限らない
「問題」はいつも誰かの目を通してのみ“問題”となる。どこかに「問題がある」のではなく,誰かが「問題にする」ことによって「問題になる」。それには,ふたつの意味がある。
@「問題」は,誰にとっても「問題」とは限らない
その人にとって「問題」と思えても,他の人にとっては何でもないこともありえる。もし,誰の目から見ても「問題」なら,実行する,つまり誰が,いつ,どういう解決をするかだけが問題となる。だから,ここでいう「問題」とは,誰も気づいていないが,いずれ大きな広がりをもつだろう「問題」,まだ誰も気づいていない危機となる「問題」,まだあまり気にとめられていないが,必ず顕在化する「問題」等々。
A問題をみないふりしたら,存在しないのと同じである
自分の感じた問題と向き合い,何とかならないだろうか,考え始めたとき,始めて問題は解決しなくてはならない事柄として目の前のある。これを,問題意識と呼ぶ。問題を感じることは,誰にでもできるが,それに向き合わない限り,その問題は,ないのと同じである。誰も問題にしていないことを,(誰も問題にしていないからこそ)意識的に「問題にする」ところからしか,「問題」は
顕在化しない。
B問題とされても,誰もがそれを解決しようとするとは限らない
問題と課題は違う。飲み屋で上司の悪口,会社の批判をしているのは,その人がそれを問題だと思っているからかもしれない,多くは酒の肴として,翌朝は忘れてしまう。誰もが自分が解決すべき問題だと受け止めるとは限らない。その問題を,自分が解決すべき問題として,具体的に考え始めたり,行動を起こし始めたとき,その「問題」は,その人にとって,「課題」になる。そのとき,今まで通りでは,今のままでは,過去の延長線上では解決できないことに気づく。そこで,はじめて自分にとって創造性が必要となる。ちょうど毎日風呂に入っていて,いつもお湯だったらいいのにと考えても,大半は風呂から上がった瞬間に忘れるのに,それを忘れず,自分の問題として解決した人がいたから,24時間風呂が世の中に存在するように。
- 問題が何かが説明できるか
問題とは,期待値と現状とのギャップである。期待値がチームの目標なら,チームとして問題が共有化できないとすれば,チームメンバーで目標が共有化されていないことを意味する。期待値が,個人としての目指すもの,「なりたいもの」「ありたいこと」「そうしたいこと」「そうなっていたい状態」であるとすれば,自分がどうしたいかが明確でなくては問題は明確にならない。問題とは,どうしたいかを明確になっていて初めて問題となりうる。
誰が見ても,明らかな問題を,発見するとはいわない。それは誰が,どう解決するかだけが問題だからだ。
問題の種類によっては,たとえば,現状回復のような場合,その原因を突き止めて,それをクリアすれば,問題が解決したことになる場合もある。
しかし,多くは,その現状復帰そのものだけでは問題の解決にならないことも多い。たとえば,他社との競争の中では,より高いところに,達成目標を置いて,より問題の幅が大きくなり,解決しなくてはならないことが多くなることも少なくない。問題解決では,問題の中身にとらわれたり,原因究明に突進するだけではなく,その問題の構造そのものを考えることのほうが重要であることが少なくない。
どちらが正しいかではなく,その問題の構造から,あるいは,それによって達成したい目的から,その問題の大きさをとらえなおし,最適な解決を考えなくてはならない。このときこそ問題発見力が求められる。
以下の基本マインドと基本スキルを,実習を通して身につけて戴きます。まずは、自身の仕事,職場に対する問題意識のないところに問題発見力はないということを前提に,
@基本は自覚であるので,まずワークシートにポジションに伴う役割を自分自身の目で,自分を棚卸しすると共に,自己たちの役割・責務の遂行度をグループ討議を通して刷り合わせる。
A現状への問題意識を掘り下げるにはどうしたらいいのか
B何をすべきか(何ができるか)=課題を見つけ出していくにはどうしたらいいのか
C各自の持ち寄った「自分の課題」を検証し,その解決のプランニングを立案する。
Dグループにおいて,Cの中から,自分たちの解決すべき課題を設定し,その課題の構造を分析し,解決案をどう立案していくかを,グループ討議を通してまとめ上げる。
事前課題で,日ごろの問題を「気になるシート」に記入し,各自の持ち寄った問題から,チームワーク、チームでのコミュニケーションをめぐる課題を絞り込み,その解決プランを立てていく。自分一人の問題発見力があればいいのではない。チームとしての問発見決力を高めるためには,いかに,メンバーの問題意識を見逃さず,チームとしての問題意識とし,チームとしての課題につなげていくかが求められる。それが役割意識であり,目的意識である。
●基本的方針
基本的方針は,次のふたつです。
@研修は,基本的に自己確認と自己点検の場である
A答えは,自身の中にある
●研修の進め方
研修の進め方は,
を基本的枠組みとし,講師と個人個人とのキャッチボール(はっきり言えば質問と答え)を通して,全体として確認しながら,進めていきます。
ツールとしては,
@ワークシートによる個人作業
Aグループでの相互での擦り合せ
を用い,問いかけと答えを通して,一方的ではなく,自分自身の問題と向き合いながら,自分の答えを考えていただくように進めていきます。
●進め方の根拠
一般論としてのマネジメント理論や仕事の仕方を学んでも,自分が何をすべきかを考えなければ,マネジメントも役割遂行も実行できません。中堅にしろ,管理者にしろ,ひとりひとりがおかれている状況も,それに向き合うひとりひとりの考え方も違います。まず必要なのは,自分は何をするためにそこにいるかを,考えることです。そこではじめて,自分が何をすべきかを,自分の問題として考えるスタートに立てます。それなしの理論はただのお勉強にすぎません。
●時間配分
ひとりひとりの点検は,その場のひとりひとりの力量に左右されますが,
@自己点検 20〜30分
A相互点検 30分
B全体点検 30分
C講師とのキャッチボールと整理・まとめ 30〜40分
が,扱うものによって差はありますが,全体の時間配分の目安です。相互点検結果は,その発表を聞きながら,それについて,メンバーとキャッチボールしながら,講師がコメントし,それを管理職全体の問題として,整理しまとめます。
【第1日】
問題意識を研ぎ澄ますものは何か
時間 |
内容 |
進め方 |
9:00
9:30 |
オリエンテーション
「この研修の目指すこと」 |
◇問題意識が課題形成の前提だが,問題意識はあるのではない。目的意識のないところに役割意識はなく,役割意識のないところに問題意識はない。自らが解決主体とならないところに問題意識はない。その自己確認を出発点とする。
《使用するもの》
・
ワークシート
・ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
@まず問題意識が出発点となる。そのためには,「何のために」という問い(それが目的意識であり,それなしには問題意識はない)に鍵があり,それが研修全体を通しての宿題でもあることを,冒頭に確認する。
時間
|
内容 |
進め方 |
9:30
11:00 |
自分のポジショニングと役割行動のチェック
役割意識のないところ問題意識はない。自らのなすべき課題は,組織での自分の位置に求められている目的を果たすために何をすべきかというチェックなくしてはありえない。
・組織の目的・ビジョン
↓それを達成するために
・本年度の目標
↓それを達成するために
・自分の役割は何か |
◇自身の役割を,全社の中でのポジションの自覚から始める必要がある。各自の結果をめぐり,グループ討議,全体討議におけるキャッチボールを通して,自身の現状をチェックする。
《使用するもの》
・ワークシート
自分の目標と役割の明確化
自分のポジショニングと役割期待
・ ツール
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
役割は,公式に求められるものだけではない。それなら,誰がその任についても同じとなる。自分が,その役割を主体的にどう位置づけ,何をしようとするかを,主体的に考える姿勢こそが必要となる。ここでは,役割意識の前提となる目的意識を確認しつつ,「目的意識のないところに役割意識なく,役割意識のないところに問題意識はない」を強調する。問題意識は,役割意識があってこそ,意味がある。
時間
|
内容 |
進め方 |
11:00
<昼食>
15:00 |
問題発見のリーダーシップとコミュニケーション
問題を発見したとき,どうするのだろうか。それが自分の業務に関わる問題なら自分が何とかすればすむ。しかしもしそれが自分の裁量を超えた問題なら,どうするのか。自分には無理と見なかったふりをするのか,それともそれを解決するのに必要な上司や周囲に働きかけていくのか。いま必要なリーダーシップとは,これなのではないか。そこには,
・人を巻き込むに足る旗が立てられているか
・それを実現するためにどれだけ働きかけるか
が必要になる。鍵になるのは,コミュニケーションである。 |
◇自分の役割を確認した上で,そこでどんなリーダーシップが求められるのか,そのためにどんなコミュニケーションが必要なのか。
《使用するもの》
・ワークシート
リーダーシップを振りかえって
コミュニケーションギャップを振り返る
・ツール
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
自分が問題と思うことを,誰もが問題と思うとは限らない。だからこそ,自分が問題と感じていることを,構造として,共有化できるカタチで示さなくてはならない。しかし,相手はまた異なる問題を問題視しているかもしれない。その共通の土俵は,チームとしての目的(何をするためにこのチームは存在し,何をすることを求められているのか)であり,それを確認していくところに,上位者をも巻き込むリーダーシップが求められる。リーダーシップを生かすのはコミュニケーションスキルである。
時間
|
内容 |
進め方 |
15:00
16:00 |
問題とは何か〜問題の共有化
「問題」とは,自分やチームが,「こうしたい」状態や目標,「こうあるべき」と考える水準や基準とでき(てい)る現状との“ギャップ”である。それを意識しているものにとってのみ,それを妨げる障害や不足を「問題と(して意識)する」ことになる。その意味で,問題の解決は目的ではない。 |
◇自分が問題と思うことを,ひとにも問題と思ってもらうためには,問題の共通の枠組みを必要とする。そのことの確認をする。
《使用するもの》
・ワークシート
事前課題シート
・ツール
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
問題が誰かの目を通してのみ“問題”となるのだから,共通な問題が“ある”のではなく,ひとりひとりが問題にしている問題を,共通な問題に“する”というプロセスを経る必要がある。そのためには,自分が問題と感じていることを,人も問題と感じてくれるような,問題を提起する枠組みが必要になる。たとえば,
と問題を説明したとすると,問題とする“基準”,たとえば達成すべき目標,維持すべき水準,保持すべき正常状態,守るべき基準等々が共有化されていなければ,問題とするとは限らない。“問題”を共有化できるかどうかを考えることは,チームの現状を確認することにもなる。
時間
|
内容 |
進め方 |
16:00
17:00 |
事前課題をグループの課題とする
個人の問題を,グループの課題としてまとめていく。個々の課題は,目的がある。共通の目的達成のための手段である。その観点から,共通目的達成のために何をすべきかという,課題を見つけ出し,その原因を洗い出し,解決策を案出することを通して,課題解決プロセスを共有化する。
|
◇問題は,組織の問題である以上,個人の問題意識から出発していようとも,全体の問題として,解決しなくてはならない。そのためには,個人の問題から,どう全体の課題へとまとめていくかが常に求められる。
《使用するもの》
・ワークシート
事前課題シート
・ツール
ブレインストーミング
|
【プロセスの狙い】
各人の「気になるシート」の中から,グループとして問題を一つ選び出し,グループとしてそれをどう解決していくのかを,具体的に考えていく。この刷りあわせプロセスが,メンバーとの共通する土俵の確認につながるはずである。「そういう問題があるのか」「それは自分が経験したことと共通する」等々
【第2日】
問題解決の大枠を決める
時間
|
内容 |
進め方 |
9:00
10:00 |
《講義》
「問題の明確化〜何が問題か」
《実習》
「問題の明確化と分析」
@グループとしての問題の絞込み
↓
A本当は何が問題なのかの明確化 |
◇問題解決は,
@何が問題か〜何を問題とするか
Aどうなったら解決したことになるのか
B解決のために何をするのか
の3つのステップがいるが,一番不可欠なのは,何を問題にするか,どうなったら解決したことになるのかを,明確にすることだ。ここでのポイントは,その重要性を確認することである。
《使用するツール・スキル》
・ワークシート
・ ツール
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
「問題の明確化」,つまり「何が問題か」あるいは自分たちは「何を問題とするか」を決めることが,問題解決の出発点である。それは,問題解決のゴールと現状とのギャップを決めることだ。
まず自分が問題にしているにしろ,相手が問題にしているにしろ,問題としていることを明確にし,何を問題にしているのか,を共通の土俵,共通の枠組みで考えなければ,その問題は相互で共有化されないし,これが共有化されなければ,問題解決は,チームの解決行動となることはない。
時間
|
内容 |
進め方 |
10:00
11:00 |
《実習》
「期待値の確認〜どうなったら解決したことになるのか」
《実習》
「何を問題にしたかの発表と検討」
問題分析の鍵は,期待値の明確化と現状の正確な把握である。こうなっていなくてはいけないのに,こうなってほしいのに(期待値),そうなっていない(現状)。問題があるから対処するのではない。それなら,単に問題処理をしているだけだ。 |
◇問題の明確化とは,期待値と現状の距離を決めることである。言葉を変えると、どうなったら解決したことになるかを決めることである。以下は、その確定した距離を何によって埋めていくかを決めることとなる。ス
《使用するもの》
・ワークシート
問題分析シート
・ツール
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
期待値の明確化,どうなったら問題が解決したことになるか,どう(いう状態に)したいのかがはっきりしなければ,何が問題かがきまっていないことになる。正解があるわけではないが,最初の問題を検討していく中で,それが解決するとはどうなることか,どうなったら解決したことになるのか,を考えていくうちに,期待値が動く。それは理想状態なのか,完了状態なのか,変化自体なのか,行動レベルなのか,行動形態なのか等々。それによって確定した期待値と現状とのギャップが,解決すべき問題となる。
期待値を明確化する作業で大事なことは,それを実現するために,何をどれだけ動かさなくてはならないか,という現実感覚があることである。意識して,大きな相手に挑もうとするのと,気づいたら組織全体を動かさなくてはならないことになっていたというのでは,天地の差だ。問題解決は,いずれにしろ,現実を動かそうとすることなのだということを忘れてはならない。ここで,リーダーシップが現実の問題となってくる。
時間
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内容 |
進め方 |
11:00
12:00 |
《実習》
「ギャップを埋める方法を決める〜どう問解決するか」
現状から期待値へと上げるために,できていないこと(原因)をクリアしていくか(原因分析型)か,そのためにやらなくてはならないこと(目的・手段)を洗い出していくか(目的・手段分析型)かを決めていく。これが問題解決の奉公を決めることになる。
|
◇問題の距離の埋め方には,@原因分析,A目的・手段分析,の2つのアプローチがある。@はトラブルやクレームなど「できて当たり前」のことができていない場合であり,Aはより高い目標とのギャップをどうクリアしていく場合となる。
《使用するもの》
・ワークシート
課題分析シート
・ツール
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
@原因分析型は,期待値実現の障害となっていること(支障原因)を,なぜそうならないか,「なぜ」「なぜ」と特定化していく,つまり何がないのか,あるいは,何ができていないか等々,できない理由や要因を洗い出す。
A目的手段分析型は,期待値実現の手段(必要手段)を,そのために何をしたらいいか,何があればいいか,何ができればいいか等々を,ブレイクダウンして,できる手段(行動)を洗い出す。
@は(なぜ実現できないのかと)できない理由を,Aは(どうすれば実現できるかと)できる手段として挙げていく問いの立て方の違いであって,構造的には裏表の関係になる。ただ,何かを実現しようとする目標達成型の場合,過去からの時系列の中で,後ろ向きになる原因分析型より,未来指向の目的手段型の方が発想しやすい。どちらが正しいかという問題ではなく,どちらが,現実の問題解決により有効かという視点から考えていい。たとえば,原因分析は,ピンポイントで原因にたどり着かなければ意味がない。そういう問題の場合に有効であり,目的・手段分析は,問題を未来に設定した目標達成のためにどうするかを考えるのに向いている。
時間 |
内容 |
進め方 |
13:00
16:00 |
《実習》
「問題解決の大枠を考える」
解決プランの鍵は,それを達成するために何をするかを,どれだけ具体化できるかにかかっている。それは,現実の問題解決でも同じで,それが単なる掛け声で終わってしまうのは,誰が,いつから,何から,どう着手するかまでが,詰めきれていないからだ。そこまで詰めなければ,実践のリスク,障害は見えない。つまり,「できるはず」が,「できたつもり」になる。
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◇期待値と現状の距離を,以下にスモールステップにブレークダウンしていくかである。その組み合わせが解決策になる。グループとして,それをどう分析していくかをグループ内で情報交換,討議し,全体でディスカッションすることを通して,組織としての解決行動のあるべき仕組みを考える。
《使用するもの》
・ワークシート
課題分析シート
目標達成計画書
・ツール
ブレインストーミング
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【プロセスの狙い】
期待値と現状との距離を解決要因(解決行動)で埋めていくことになる。たとえば,ギャップを埋める大きなも問題を@ABあるとし,問題@の距離をうめるために,同じように解決要因abcとし,要因aの距離を埋めるために,同じように解決要因イロハとするというように,問題@をスモールステップ化していく。問題ABも繰り返すことで,ギャップ全体をスモールステップ化していくことになる。(要因は,目的手段分析では手段,原因分析では原因と読みかえる。)
それをツリー構造に描きなおせば,下図のようになる。これが解決手段の洗い出しになっている。
時間 |
内容
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進め方 |
16:00
17:00 |
《実習》
「問題解決の点検〜それで問題は解決できるのか」
《まとめ》
解決策立案のポイント
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◇ここでは,解決策ではなく,設定した問題の幅をきちんと解決できる手段を洗い出せているかどうか,解決への方向性を確認することが狙いである。
《使用するもの》
・ワークシート
問題分析シート
・ツール
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
この作業のポイントは,期待値を実現するための大きな柱となるものを見つけることである。ここで洩れがあれば,以後の作業は意味を失う。期待値を埋めるために必要な大きな柱を,@ABだとすると,少なくとも,期待値との距離全体に比べると,解決行動の的は小さくなる。
【実際の進行では,変更される場合があります】
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