現状分析と情報分析の原則とノウハウ〜「問題状況」をどう掘り下げるか
@状況は起こっている事実を,評価を交えずにことで列挙する
○事実の描写は,5W2Hで,モノとコト,ヒトとヒト,ヒトとコト,ヒトとモノ等の関係で表現する。
何(誰)が(誰と誰が,何と何が,誰と何が)/何処で(何処から何処まで)/何を/いつ(いつからいつまで)/どれだけ(量・多寡)/どのように(どういう手段・方法,ステップで)
○コトの幅と奥行は,次の3点によって確認する。
・コトの時間的な位置関係(時系列・経過,時間的な変化,時間の共時的奥行,歴史的経緯等々)
・コトの空間的な位置関係(配置・序列,位置関係,配置関係,広がりの幅と奥行)
・誰からのパースペクティブか(誰が/どの視点から見たものか)
Aどう状況を把握するのか
○状況を俯瞰する
○“コト”をどうつかむか
◆コトを絞り込む−絞り込み方で“読み”が変わる
・「誰が」のピンポイント化→視点の絞り込み
・「“何処”か“いつ(何時)”」のピンポイント化→場所・時間の特定
・「全体像」=構想の焦点→何処からの,誰からのパースペクティブか
⇒因果関係・時系列・変化の流れ・構造の視点を明確にする(パースペクティブの限定)
・ことは細分化する→「〜できない」ではなく,「〜のとき〜ができない」と,“とき”“ところ”等々,「〜」の部分を絞り込めば絞り込むほど,問題は限定され,対策が立てやすい
◆コトの配置関係によって状況の見え方が変わる
・“こと”を関係するもの同士括り直して,それぞれをカード化し,配置して位置関係をつかむ
・“こと”のウエイトづけをする。
・“こと”のパースペクティブは,ウエイトの低いもの程遠ざかるかたちで,配置し直すことでできる。
@情報の要件
◇情報とは,「伝達された(る)何らかの意味」である。そのためには,3つの要件がある。
・情報の発信者と受信者がいること
・伝えられるべき何らかの意味(内容)をもっていること
・受け手に伝わるスタイル(様式・形態)で表現されていること
A情報の見かけ〜“情報”はいつも私的である
◇“情報”は発信者のパースペクティブ(私的視点からのものの見方)をもっている。発信された「事実」は私的パースペクティブに包装されている(事実は判断という覆いの入子になっている)。
◇情報(報告/記事)には3つの偏りがある。
・発信者(目撃者)による主観(発信者に理解された範囲で意味づけられた情報)
・報告者(伝聞者=記述者)による主観(記述者に理解された範囲で意味をまとめられた報告情報)
・受信者(読み手)による主観(読み手に理解された範囲で意味を読み込まれた情報)
@問題意識で必要情報を絞る
爆発的な情報量が増えても,個人の情報消費量には限界がある。どれだけ情報流通(コミュニケーション手段)が増え,情報量が増えても,そのすべてを個人で使い切れないどころか,持て余す。ではどう情報と付き合うのか?大事なのは,キャッチボールと同様,自分の問題意識,何を「解決したいのか」が明確でなくてはならない。これが情報を必要とする目的である。
A仮説をサーチライトに探索範囲を絞る
◇ベイトソンの質問;
「幼い息子がホウレン草を食べるたびにご褒美としてアイスクリームを与える母親がいる。この子供が,
@ホウレン草を好きになるか嫌いになるか,
Aアイスクリームを好きになるか嫌いになるか,
B母親を好きになるか嫌いになるか,
の予測が立つためにはほかにどんな情報が必要か。 |
これが,情報を必要とする端緒である。つまり,そこから,次の姿勢が必要となる。
・第一は,「何をしたいのか」「何をはっきりさせたいのか」「何を解決したいのか」がはっきりしなくては,海岸の砂から一粒の砂金を探すようなものである。
・第二は,「どこが問題になるか」「どこがつぼになりそうか」「ここがあやしい」といった仮説が必要となる。
上記の質問でも,自分なりに“当たり”をつけなくては情報の当たりもつかない。
◇あるメッセージに含まれている情報の不確実性を減らすために必要な量の情報をシャノンは,次のように定義した。情報量I,得られる可能性のあるメッセージ数Mとするとき,
I=log2M あるいは言い換えると,M=2I
つまり,「イエス」「ノー」のいずれかの選択だけが存在するとき,そのメッセージで1ビットの情報が得られる。情報1ビットは,「イエス」「ノー」2通りの可能性からの選択を表す,というわけである。
とすると,1ビットの情報とは,あるメッセージを言い当てるために尋ねなくてはならない「イエス」「ノー」(つまり,オン・オフ)の質問数に等しい。「イエス」「ノー」いずれかの1回の選択で,一つの質問が解けていく(不確実性が減る)ことが1ビットである。
情報量は,質問数で測ることができるのである。
@目的を明確化する 何のために,何をしようとしているのか,設問の目的,理由,意義を明確化すること。
A目標(求める成果)を絞り込む 目的にとって必要な情報にはどんなものがあるかを明確にする。このためには,目的に必要な条件,要因,要素を徹底的に洗い出し,優先順位に従って必要情報に置き換えなくてはならない。
B必要情報の条件づけをする 求める情報を明確にするには,情報の条件づけをしておく必要がある。つまり,目的達成に絶対欠かせない条件(絶対条件)と,不可欠ではないが目的達成にとってより望ましい(好ましい)効果を与えるであろう条件(希望条件)に整理しておく。これによって,情報の選別基準を明確にすることができる。この条件を切り口として,必要条件を洗い出していく。それには,絶対条件をクリアした上で,できるだけ希望条件を適えられる情報(ターゲット)に絞り込んでいく。
C求める情報を的確な設問に置き換える 必要な情報が明確化されていても,そのままの形でどこかにしまわれていない。求める情報が的確な応答として返ってくるように,具体的な設問に置き換えていかなくてはならない。
D求める情報の探索方法,場所・相手を具体化する 「誰にどんなやり方で,何処で,どんなデーターベースで,探索したらいいか」を列挙する。直接情報源やそれにアクセスする方法が見つからない場合は,それについて知っている人ないしそれについて探索できる情報源といった手段情報で代替する。
@バラバラ化によって枠組みを崩す
@)ただ集めて→つなげて→つじつまを合わせるだけではない(それなら,正解を探していることになる)
A)ただ未知の部分を埋めるだけではない(それでは,既知の枠組みを壊せない)
B)えられた回答が予想通りであれば,問う意味がない(設問を立てた既知の枠組みの範囲内にすぎない)
C)情報の枠組みを拡大していく問いでなくてはならない(出発点の枠組みの中で精緻化しても既知の範囲)
A問いの構想を立てる〜見えなかった“つながり”をどう見つけるか
「問い」のバラバラ化によって,崩れた対象に,一定の連続性,連環性,方向性,関連性が見つける。その“つながり”を一種の「仮説」(仮定)にして,対象の不確実性を減少させ(対象の意味をつかまえ),「見かけ」の奥行を見届ける(これで,単なる「質問」を「設問」に変える)。“つながり発見のスキル”は,
・分解する(ブレイク・ダウン,フロー,ツリー図,フィシュボーン,組成分解,構造分解等)
・グルーピングする(加除,加減,乗除,削る・足す,モジュール化,関係づけ,関連づけ等)
・組み合わせする(組み替え,結合,連結,つなげる等)
・アナロジー(類比・類推,連想,イメージ,対比,比喩,変形,代用・代替等)
の4つがある。この他に,ポリアの問題解決チェックリストのような,チェックリストが有効である。こうした方向性をもった意味ある「問い」のつながり(ネットワーク化)構想によって,情報群を通した,新しいカタチ(仮説)が見えてくる。
◆分解型の設問ネットワーク
@系統図(ツリー)状に設問をブレークダウンする
全体構造を樹状に分解する方向を仮定すると,選択肢を経る毎に,曖昧さは減少し,具体化・特定解へと絞られていく。方向性なく進めるよりは,一定の方向性(仮定)をもたせておく方が,効率的である。
A目的→手段連鎖で設問をブレーク・ダウンする
「全体構造を樹状に広げていく」方法は,目的(目標)のための手段は何か,その手段(下位目標)のための手段はないか,と目的→手段の連鎖として,設問のネットワークを組み立てることもできる(これは,組織・システムのようなコトあるいは商品のようなモノの働き(役割・機能)の場合は目的→機能に置き換えてみる)。
B原因→結果連鎖で設問をブレーク・ダウンする
目的→手段連鎖を,目的を結果に,手段を原因に置き換えれば,原因→結果の連鎖として組み立て直せる。
C原因→結果連鎖で設問をブレーク・ダウンする
目的→手段連鎖を,目的を結果に,手段を原因に置き換えれば,原因→結果の連鎖として組み立て直せる。
・世界状況は→国内状況は→業界状況は→社内状況は→職場の状況は→メンバーの状況は……
というように,広げた状況から個別の状況に,順次ブレイク・ダウンしていく設問の仕方がある。また,例えば,ある人の職業を言い当てるために,設問を立てていくには,
・自営か勤め人か→公務員か民間か→メーカーかサービスか→重厚長大か軽薄短小か→……
と,外から順次二者択一式に絞りをかけていくというものもある。かつてテレビの「二十の扉」という番組で,「それは動物です」という切り口から,20の質問で答にたどりつくというものがあり,
・それは動物です→人ですか?→今も生きていますか?→実在ですか?……
と,二者択一の質問を20回繰り返していく。それは,いわば220(1,048,576)分の1に細分化していくことである(例えば,イエス/ノーの選択1回を1ビットとすると,5回で,25=32通りになる)。
◆グルーピング型の設問ネットワーク
@タコ足式の設問ネットワーク
ある問題について,仮定した設問を核にして,関連する設問を,ランダムに蛸足式に拡散させていく。必ずしも,関連性を一貫させなくても,それに関連するものは何か,それとつながるものは何か,と核の設問の周囲をぐるぐる回る形でもかまわない。核設問は,厳密な意味の中核ではないから,それを変えていくことで,設問の幅を広げる。ただし,必要項目を整理しておかないと,堂々巡りに陥る危険がある。
この拡散のさせ方には,ランダムに広げる他に,中心から周辺へと,
・社内事情→業界事情→経済界事情→政府の規制→外国の圧力・規制→世界市場の事情……
と,問題を順次,論理的に同心円で拡散させていくことができる。
A関連図式(連関,つながり)の設問ネットワーク
蛸足式のランダムな設問の関連性をもっと徹底的に一貫させて,芋づる式にしたもの。関連するものは何と何か,それぞれに更に関係の深いものは何と何か……,と設問をつなげながら組み立てていく。この場合,まったく思いつくまま洗い出し,それをグループ化して整理していくこともできる。またその組み合わせから,別の視界が開けることもある。
◆組み合わせ型の設問ネットワーク
異質のものを組み合わせることで,ピース自体の出自にかかわりなく,全く新しい全体像を見つけ出す
・部分に焦点を当て,全部ではなく1部分で組み合わせを見つけていく(代理型)
部分に焦点を当てて,全部ではなく1部分で組み合わせを見つけていく(部分に偏った仮説型の変型)
・何か媒介を使って(似たものの輪郭を借りる)輪郭のモデルを創り出す(仮説型)
何か媒介を使って(似たものの輪郭を借りる)輪郭のモデルを創り出す。グルーピングで得た全体の関係性から,何かになぞらえられる(見立てられる)アナロジーを発見し,個々の組み合わせを導き出す。まず全体の枠組を発見するアナロジーを見つけなくてはならない。
・ランダムにいろいろ組み合わせて輪郭を創り出す(発見型)
ランダムにいろいろ組み合わせて輪郭を創り出す。グループ化した情報群同士を,逐次組み合わせて,新しい可能性を見つけていく。例えば,機能別区分とそのサブグループ群の組み合わせを探るために,各機能毎にサブグループのカードを並べ,スライド式に順次ずらして組み合わせを検討する。
機能1 |
サブ1 |
サブ2 |
サブ3 |
サブ4 |
サブ5 |
サブ6 |
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機能2 |
サブ1 |
サブ2 |
サブ3 |
サブ4 |
サブ5 |
サブ6 |
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機能3 |
サブ1 |
サブ2 |
サブ3 |
サブ4 |
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↑
選択した組み合わせ
◆アナロジー型の設問ネットワーク
@連想式に次元を広げる設問ネットワーク
タコ足式の連想だと,どうしてもある一定次元をつなげやすい。そこで,思いつき的に拡散させるにしても,もう少し飛躍をさせるには,アナロジー(イメージによる想像)を駆使するのが便利である。同じ言葉で考えているだけではつながらないものが,イメージを介在させることで,飛躍できるのである。
A類推式の設問ネットワーク
与えられた条件や情報の枠組みを考えるとき,そのまま掘り下げるのではなく,その特定の状況を,別の状況設定に(仮定して,仮想して)置き換えて,問題の枠組みを変えて考えてみる。そうすることで,与えられた問題の枠組みの中では,気づかなかった別の視界(「問題」)が見えてくる。
B拡大(縮小)式の設問ネットワーク
通常の視点で見ている限り,情報の深度や幅が深まったり広がったりすることは別として,特別に距離感が変化することはないが,対象との距離を意識的に変えることで,近づけば拡大するし,遠ざかれば縮小する。裏側に回れば裏返したことになる。上から見れば俯瞰したことになる。
◇情報探索は,@目的とA目標(期待される成果)を確認した上で,
B必要情報(絶対条件・希望条件)(それでどういうことが知りたいのか)
C設問へ置き換える(知りたいことをつかむには,何を尋ねたらいいか,具体化する)
へ,と具体化する。このとき,Bは,@Aに基づいて,できるだけ多く列挙し(このとき,設問ネットワークによる仮定が必要になる),その目的達成のために必要な優先順位(ウエイト)をつけ,それに沿って,順次Cで,それを得るためにはどういう問い方をしたらいいかという設問の形に置き換える。これが具体化(特定化)されるほど,情報源のアクセス先も特定される。そして,
D探索方法・場所(設問に対する情報を得る相手・場所・方法)の形で集約する。これが,収集した情報の評価にもなるはずである。
E「探索方法・場所」は,Cの設問への最適の情報を,「誰に,どういうところで,何処で,どんなデータベースで探索したらいいか」を列挙する。当初は,かくかくの情報を,どこそこで,誰々から手に入れるという形で,厳密に具体化(特定化)しにくい。直接情報源にアクセスできる方法がみつからなければ,それを手に入れるための手段情報で代替し,特定化できたところから,順次絞り込んでいく。
@ヒトメディア(知人,スタッフ,同僚,家族,キーマン,斯界の権威者,専門家,学者,ユーザー等)
Aマチメディア(店舗,街角,公共施設,繁華街,デパート,スーパー,ディスカウントショップ等)
Bマスメディア(新聞(全国紙,地方紙,経済誌,専門紙,スポーツ紙),雑誌(月刊誌,週刊誌,専門誌,ファッション雑誌,趣味誌,ライフスタイル誌),テレビ,ラジオ)
C商品メデイア(商品,新製品,商品カタログ,通販カタログ,パンフレット,PR誌等)
D口コミメディア(噂,伝聞,雑踏での会話,車内の会話,井戸端会議,タウン誌等)
E業界メディア(業界紙(誌),仲間内,社内,取引先,同業者,販売店,販社(問屋)等)
Fデーターベース(国内外の商用データーベース,記事検索FAXサービス(日経,朝日等),人物データーベース,産業統計データーベース,企業情報データーベース,雑誌・書籍データーベース,図書館(国会図書館,公文書館,地域図書館,専門図書館,業界図書館,大宅文庫等))
Gパッケージメディア(ビデオソフト,LD・CDソフト,テープソフト,電子ブック,ゲームソフト等)
H公的メディア(政府刊行物,官報,政府・地方自治体・業界団体等公的機関のレポート,調査報告書,市役 所・区役所・県庁・官庁そのもの)等々
Iネットワークメディア(インターネット,ボランティア組織,NPO,NGO等々)