「考える」ための基本スキル〜考えを展開する
「分ける」は,いまあるカタチ,いまある意味,いまある条件,いまある構造,いまある位置関係,いまある流れ等々を分解することで,新しい関係づけを見つける。
・ツリーに分ける 垂直分解(系統図,機能分解,目的・手段),水平分解(役割区分)
・フローに分ける 流れのパターン(時系列,因果関係,起承転結)
・配置に分ける 位置関係,布置関係等々パースペクティブ(遠近法)の関係
・構造に分ける 組成関係,骨格構造等々立体的関係
・状況に分ける 5W2H,ヒト・モノ・カネ
・時間を分ける 時間の流れをスロー・速くしたり,ストップモーション
「分ける」をチェックする目安は,
・もう少し細かくならないか
・他の分け方はできないか
・何か前提にしていないか
・自分で条件を設定していないか
・型にはめていないか
・他の視点はないか
・見落とし,ヌケはないか等々
わけるという例では,たとえば,一体だったものを分けることで,それ自体が商品になったりする。たとえば,
有名店のラーメンが,その出し汁自体を商品とする,
手打ち蕎麦店の,手打ち作業自体を客に経験させることを商品とする,
環境の,排出量自体を取引する,
あるいは自社の事業をどうするといった場合にも,その選択肢を,売却,アウトソーシング,分社化,MBO(部門責任者が企業から買い取る),合弁方法等々と分けてみる
「グルーピング」は,バラバラになった情報の中に,意味のある「つながり」(基準)を見つけて,バラバラの「地」に「図」を見つけ出す。
「醜いアヒルの子の定理」(渡辺慧『認識とパタン』)によると,二羽の白鳥の類似度とアヒルと白鳥の類似度は,同じである,とする。二羽の白鳥の類似性を列挙していったとして,身体の形,羽根,翼,嘴,目の形と色,色,生態,食物,生息場所……等々。その上で,次に白鳥とアヒルの類似性を,目が二つ,鼻の穴が二つ,口がひとつ,耳が二つ,嘴があり,羽根があり……と,数え上げていくと,両者の共通点の数はほとんど変わらなくなる。類似性をこういう共通点の数で計るなら,どんなものも同じ程度の類似性をもっている。
どんなものにでも共通点があるとすると,似ているから「共通点」が見つかるのではなく,「共通点」を見つけるから似ているのである。両者はつながるのではなくつなげる。共通点は創り出すものなのである。
「グルーピング」をチェックする目安は,
・まず似たところはないかと考えてみる
・違いはどこにあるか。逆に,似ても似つかないものはどれか
・別に言い換え(置き換え)られないか
・両者に関係づけられるものはないか,無関係なものはないか
・両者をそれぞれ別のモノ(似たもの,関係あるもの)に置き換えてみる
・結合してみる,合わせてみる,重ねてみる
・それぞれを統一する(括れる)ものはないかと考える
・それぞれを由来・背景・根拠・理由に遡ってみる
・それぞれをこれからどうなるか,下ってみる等々。
業種のくくり方とか商品アイテムのくくり方を,別種にし直したりすることで,従来と異なる市場を発見することがある。たとえば,プラスが出した小型の文具セットは,確かに小型文具品をセットにしただけのようだが,事務用品という実用性からファッションやおもちゃの領域を開拓したことになる。あるいは,ドレッシングを調味料の棚に並べるのではなく,生野菜の販売棚にくくることで,店としての食べ方の提案になっている。
「組み合わせる」は,異質の分野のもの,異なるレベルのものを組み合わせることで,ピース自体の出自にかかわりなく,新しい全体像を見つけ出す。全体だけでなく,その一部分同士からも新しい組み合わせを見つける。
代表的組み合わせは,ラジオとカセットを組み合わせたラジカセ。昨今は,電子レンジで調理する手軽さから,米飯と具材を組み合わせたセット米飯が花盛りだ。マツタケ釜飯,ホタテ釜飯,五目釜飯等々。MPU(マイクロプロセッシング・ユニット)は,コンピュータの中央処理装置(CPU)を1チップに集積したものだし,LSIはIC1000個以上を集積したものだが,これも組み合わせ例。あるいは,デスクトップファクトリーと呼ぶ,精密機械用の超自動組み立てラインも実用化されている。
「アナロジー(類比/類推する)」は,似たもの,異分野の例になぞらえる,たとえる見たてること。似た「〜を通して」見る(考える)ことです。
たとえば,スタッドレスタイヤの目的は,雪道を滑らないこと。ではそれに役立つものはないか,北極の白熊はなぜ滑らないのか,その手の構造を通して見て考える。
・白熊の手は爪がある,それを役立てられないか
・白熊の手の皮膚は筋肉との間がルーズで接地面が広がる,その構造を利用できないか
・白熊の手は毛が接地面の水を弾き出す,その仕掛けを利用できないか
等々,「白熊の手の機能を通して」見ることで,その機能からタイヤに使えるアイデアを見つけ出そうとする。
アナロジーを見つけるには,次の3つの着眼点がある。
・全体に関係が似ているものを見つける
・部分(核)から他とのつながりを見つけ,そこから逆算して関連するものを吸引する
・部分と部分の関係の断片から全体像を見つける