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情報力とは何か

  • 次の「記事」から何を読み取りますか?

愛知万博修正迫る

 

 自然との共生をテーマに,愛知県瀬戸市などで開催が予定されている2005年日本国際博覧会(愛知万博)について,事務手続きを取り仕切る博覧会国際事務局(BIE 本部パリ)が,万博と一体になった跡地利用計画を厳しく批判し,計画の全面的な修正を迫っていることが明らかになった。朝日新聞が入手した昨年11月のBIE首脳陣と通産省担当者との会議録によると,BIEは「国際博覧会を利用した土地開発事業にすぎない」と非難,現計画のままでは承認できないとの見解を示した。
 通産省や愛知県は現時点では,跡地利用計画を変更せず5月のBIE総会で万博計画全体を登録してもらう考えだ。しかし,環境団体や博覧会協会内部からも同様の批判が噴出しており,跡地利用ばかりでなく万博計画そのものが大幅な修正に追い込まれる可能性もある。
 会議録は,フィリプソンBIE議長(当時)らが訪日し,通産省の担当審議官らと面談した際のやりとりを博覧会協会が記録したもので,「対外厳秘」とされている。
 愛知万博は,主会場のひとつとして瀬戸市にある里山の「海上の森」の一部を切り開く。会場造成や事業費ねん出のため,国から補助金がでる「新住宅市街地開発事業」が組み込まれており,万博終了後,跡地の一部に二千戸の住宅や研究施設を建設する。
 会議録によると,フィリプソン議長はこの計画について「二十世紀型の開発至上主義の産物」とし,「博覧会テーマの理念とは対極にある」と強い不快感を示した。
 さらに,世界自然保護基金(WWF)などの自然保護団体からも批判の声が相次いでいることから,「あなた方は地雷の上に乗っていることをよく自覚すべきだ」と指摘。「世界は環境破壊の隠れみのに国際博覧会が利用されているとの理解だ」と述べ,最悪の場合は参加国が手を引き,スポンサー企業も集まらない事態になると警告した。
 これに対し,通産省側は跡地開発が事業費の調達に必要であることなどから,「ギブアップできない」と説明した。

【朝日新聞2000.1.20朝刊14版】

  • この記事の後日談は,ここをご覧ください。 当初の問題は,そのまま,問題を先送りしたカタチで継続しつづけている。

  • この結果については,こんな評価が出ている。     


  • 既に,数年前の記事ですが,経過から見ると,この記事にすべての成り行きの,幅と奥行きが読み取れたはずである。
    • ベイトソンの問いを考えるまでもなく,この記事を鵜呑みにする必要はないが,「また朝日か!」と先入観でみたら,この記事から時代の変化,世界の潮流を読み違えるだろう。
    • この結果の最近の出来事は,さらに面白い。
  • 読み手によって問題意識は異なるが,
    • 何を確かめたいのか,何をはっきりさせたいのかをはっきりさせること
    • 情報の見かけに欺かれるな

どこがこの記事の問題なのか,何がおかしいのか,あるいは何が掘り下げの端緒
なのかを立てることが不可欠である。もともとどんな情報も,
・発信者の主観(発信者の理解した範囲で意味付けられた情報)
・報告者の主観(報告者に咀嚼された範囲でまとめられた情報)
・受信者の主観(読み手にわかる範囲で読み取られた情報)

という偏りがある。それをどう解きほぐすか。記事の発信者自体が気づいていない情報をどう汲み取れるかが鍵だ。情報力とは“問い”の力だ。問いの力とは“仮説力”だ。情報探索は仮説の確認にすぎない。

  • この記事から,どういう変化,どういう世界からのシグナルを読み取れただろうか?それは,同時に,日本の将来への針路をどう取るべきなのか?というビジョンとかかわっている。
    政府や公的機関にそれがないだけではない。この企画にかかわったすべての企業のトップにも,将来ビジョンの読み違え(はっきりいえば,公共投資に群がる蟻であるのか,独立した企業ビジョンを持っているのかどうかの違い,だ)
    もちろん,この設問自体が,一種の偏りであり,それと関わりながら,どう読みを具体化するかが,ひとりひとりにつきつけられた「課題」なのである。偏りのない問題意識はない。偏りのない意思決定もない。少なくとも,その偏りについて,仮説であるという自覚,意識的な試みであるかどうかがもんだいなのだ。
  • ある意味で,「いまのままでは」「このままでは」「過去の延長線上ではNo!だというシグナルを読めたかどうか,が出発点である。この条件は,意思決定のない(ということは,過去の延長線上のまま,でありつづけるしかない)この国トップだけではなく,あらゆる組織のトップすべての問題だ,と言い切ってもかまわない。隅々まで浸透した堕落,思考停止,判断停止状態は,それくらい,深刻で,悲惨で,逃げようのない日本的状況を象徴している。この記事は,いま問題となっている,すべての問題と通底する。

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