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情報とは


情報とは何か
情報の基本構造についての仮説
情報を集めるとはどういうことか
情報には向きがある
情報の向きを崩す
情報における文脈とは


  • 情報とは何か

    どんな情報定義があるか,少なくとも,見るに値するものとしては,手元の文献で整理してみると,大きく分けると,おおよそは次のようになる。 

    @情報を量としてみようとするときの定義。シャノンやウィーバーに代表されるような,情報のコード化につながる定義である,
    A生物に関わる情報の定義。たとえば,生命体の外界の刺激や視界に写っているものについて,生命体がどう受け止めるか,たとえば,危険あるいは安全というような。またアフォーダンスとしてみるように,そこに意味を見出すこ とになる。
    B社会的なコミュニケーションに関わる情報の定義。この場合,データから言語情報まで含まれるので,コード化された情報から,状況に拘束されたモード情報まで,多様なものがある。

その代表をいくつかピックアップしてみると,以下のようになろう。

●クロード・シヤノン

 あるメッセージに含まれている情報の不確実性を減らすために必要な量の情報をシャノンは,次のように定義した。情報量I,得られる可能性のあるメッセージ数Mとするとき,

  I=log2M  あるいは言い換えると,M=2I

 つまり,「イエス」「ノー」のいずれかの選択だけが存在するとき,そのメッセージで1ビットの情報が得られる。情報1ビットは,「イエス」「ノー」2通りの可能性からの選択を表す,というわけである。

 

●N.ウィーナー

 情報とはわれわれが,外界に適応しようと行動し,またその調整行動の結果を外界から感知する際に,われわれが外界かと交換するものである。 情報を受けとり利用してゆくことによってこそ,われわれは環境の予知しえぬ変転に対して自己を調節してゆき,そういう環境のなかで効果的に生きてゆくのである。(『人間機械論』

 

金子郁容

情報とは,「伝達された(る)何らかの意味」である。そのためには,3つの要件がある。

   ・情報の発信者と受信者がいること

  ・伝えられるべき何らかの意味(内容)をもっていること

  ・受け手に伝わるスタイル(様式・形態)で表現されていること。『ネットワーキングへの招待』

 

●P・F・ドラッカー

 情報とは,データに意味と目的を加えたものである。データを情報に転換するには,知識が必要である。『経営論』

 

●グレゴリー・ベイトソン

 情報の1ビットとは,(受け手にとって)一個の差異(ちがい)を生む差異である。そうした差異が回路内を次々と変換しながら伝わっていくもの,それが観念(アイデア)の基本形である。

 情報とは,(付け加えるなにかではなく)選択肢のあるものを排除するなにかである。『精神の生態学』

 

西垣通

 生命体にとって意味作用をもつものである。

 第一に,情報の意味は解釈者によって異なる。解釈者/受信者のに間でなりたつ。

 第二に,生命体は自己複製する存在であり,刺激ないし環境変化に応じ,自分自身の構成に基づいてみずから内部変容をつづける。その変容作用こそが意味作用である。

 第三に,意味作用を喚起する刺激や、それによって生ずる変容は,物質でもエネルギーでもなく,形であり,パターンである。

 従って,情報とは,それによって生物がパターンを作り出すパターンである。『基礎情報学』

 

梅棹忠夫

 人間は,ある情報をえることによって,つぎにとるべき行動を決める。情報が行動に影響を与えるのである。

 世の中には,行動上の利益をもたらす情報もあるが,そのような利益をもたらさない無意味情報がある。じつは大部分が無意味情報であるとみることはできないだろうか。情報にはかなりの程度,こんにゃくに似た点がある。情報をえたからといって,ほとんどなんの得もない。感覚器官で受け止められ,脳内を通過するだけである。しかしこれによって,感覚器官および脳神経系をおおいに緊張し活動する。それはそれで生物学的には意味があったのである。『情報の文明学』

   

   ●三輪眞木子

    メッセージの受け手の知識に変化を及ぼすもの。受け手が情報ともなしたものは,受け手の知識に組み込まれ,その構造を変化させる。(『情報探索のスキル』

 

   ●A.M.マクドナウ

    データは評価されないメッセージであり,情報は特定の状況において評価されたデータである。

 

   ●G.B.デービス

    情報とは,受け取る人に意味ある形に処理されたデータであって,現在または将来の決定において現実のものになるか,また価値が認められるものである。

 

   ●J.C.エメリー

    情報は,組織の行動を制御する際の意思決定過程のための材料である。


●仮説の前提

・情報には,「コード情報」と「モード情報」がある。(金子郁容)

・情報とは,データに意味と目的を加えたものである。(ドラッカー)

●情報の構成

情報は,ことば(数値も含めたコード)と状況(文脈)がセットになっている必要がある。言語化されるには,その人が受けとめた場面や出来事を意味に置き換えなくては言語化されない。しかしその言語を受けとめたものは,その人の記憶(リソース)に基づいて受けとめる。その意味の背後に,その人のエピソード記憶や手続き記憶に基づいてイメージを描く。

 コード情報は,言語化できる情報ということになる。モード情報は,もう少し突っ込むと,一般化されにくい,そのとき,その場所で,その人が,といった文脈や状況に拘束された情報ということになる。

 情報の収集も,編集も,ただ言葉やデータレベルだけでなく,その背後のモード情報までを意識しなければ,ただの言葉の操作で終わる。情報に対応するとは,データの処理や集計だけではなく,その背後の状況を読み解きつつ,何が起きているかを描き出す力がいる。

●情報の構造

 コード情報であれ,モード情報であれ,情報になるためには,発信者によって向きが与えられる。向きがなければ情報にならない。どんな場合も,出来事だけでは情報にはならない。その情報を発信してはじめて情報になる。そのとき,情報は,その人がどういう位置にいて,どんな経験と知識をもっているかによって,情報は,再構成される。つまり,“情報”は発信者のパースペクティブ(私的視点からのものの見方)をもっている。発信された「事実」は私的パースペクティブに包装されている(事実は判断という覆いの入子になっている)。逆に言えば,私的な向きがなければ,情報にはならない。

・情報(報告/記事)には3つの偏りがある。

 ・発信者(目撃者)による主観(発信者に理解された範囲で意味づけられた情報)

 ・報告者(伝聞者=記述者)による主観(記述者に理解された範囲で意味をまとめられた報告情報)

 ・受信者(読み手)による主観(読み手に理解された範囲で意味を読み込まれた情報)

 

・情報を構造化するメリット

 ・その情報の主語(誰が発信したか)がみえる

 ・発信毎の違いが明確にできる

 ・疑問の確かめ先がはっきりする


集める情報とは何か

 情報を集めようとするとき,

@知らない何かを確かめるため,

A決断や決定をするときの不確定要素を減らそうとするため,

B新たな何かを見つけたり創り出したりしようとするため,

といった意図がある。いずれも,情報を集めるのは,何らかの不確実性を減らすそうというときである。

 

●情報の形式

情報の形式は,一般的には定量的情報と定性的情報という言い方になるが,金子郁容氏の言うコード情報とモード情報がわかりやすい。

コード情報は01のデジタル化のようにコード化できる情報であり,定量情報はこれに含まれる。

モード情報は,雰囲気,気分,空気,感情,世の中の動き,流行等々文脈(コンテキスト)に制約された情報である。作家マイケル・クライトンが大事にすると言ったのは,ネット情報ではなく直接人から聞く話であるが,これは究極のモード情報になる。

コード情報は,記号化であり,いわば抽象化することである。モード情報とは,個別化することである。あるいは文脈を限定することである。

 

●集める意味

シャノンは,情報(あくまでコード情報)の不確実性を減らすために必要な量の情報を,次のように定義した。情報量I,得られる可能性のあるメッセージ数Mとするとき,I=log2M  あるいは言い換えると,M=2I,つまり,「イエス」「ノー」のいずれかの選択だけが存在するとき,そのメッセージで1ビットの情報が得られる。言い換えると,情報1ビットは,2通りの可能性からの選択を示す。それは,情報量を1ビット増やすと不確実性が半分になることを意味する。「イエス」「ノー」1回の選択で,一つの疑問が解けていく(不確実性が減る)。これを20回繰り返すと,220,つまり1,048,576分の1に不確実性が減っていく。


未知の状況の解明や未知の発見をしようとする,意志決定や発見,創造のための情報収集の場合,情報特有の問題に留意しなくてはならない。コード情報もモード情報も,情報は基本的に人が介することで,向きが与えられると考えられる。たとえば,目撃情報の発信者と受け手で構造化すると,次のように図解できる。

つまり,発信者が情報にパースペクティブ(私的視点からのものの見方)を与えるのである。発信された「事実」は私的パースペクティブに包装されているのである。コード情報でもモード情報でも,それは変わらない。情報は丸められるのである。ドラッカーは,「情報とはデータに意味と目的を加えたものである。データを情報に転換するには知識が必要である」と言ったが,それは,情報に,既知の知識で向きを加えることと考えていい。そんなとき,不確実性を減らすために,イエス,ノーで収斂しても,あまり意味がないかもしれない。情報の向きを暴く,あるいは向きを崩す問いが必要になるのではあるまいか。


●どうすれば向きを崩せるのか

 グレゴリー・ベイトソンは,大学の授業でこんな質問をした。

「幼い息子がホウレン草を食べるたびにご褒美としてアイスクリームを与える母親がいる。この子供が,

 @ホウレン草を好きになるか嫌いになるか,

 Aアイスクリームを好きになるか嫌いになるか,

 B母親を好きになるか嫌いになるか,

の予測が立つためにはほかにどんな情報が必要か。

 ここにあるのは,情報の向きを変えるための,収集する側の意図的な試みがある。あえていえば,仮説がいるのである。端緒となる情報は,「幼い息子がホウレン草を食べるたびにご褒美としてアイスクリームを与える母親がいる。」だけである。それに,ベイトソンは,@からBまでの問いをたてた。つまり仮説を立てたのである。しかも,この仮説は,「母と子の行動に関するコンテキストに関わる情報」を集めるために,立てている。

 このとき,情報の“向き”が問題になる。たとえば,関連する情報を聞き出したとする。その情報をつなぎ合わせれば,おそらく一定の文脈が見えるはずである。しかし,ここにあるのは,情報提供者のもたらした「情報の向き」に沿って推論した,いわばお膳立て通りの結論にすぎないからだ。未熟な指揮官にとって恐ろしいのは,集まった「情報が互いに支持を保証し,あるいはその信頼度を増大」しあって「心に描かれた情報図が鮮やかに彩色される」ことだと指摘していたのは,クラウゼヴィッツであった。情報の向きが揃ったときは,それを疑うにはよほどの判断力がいる。

 

●向きを変えるためにどんな問いを立てるか

 向きとは文脈(コンテクスト)と呼んでもいい。もっともらしい見える文脈に代わる,他のありえる新しい文脈の選択肢をどれだけ浮かび上がらせられるか。必要なのは新しい現実(状況)を発見することである。情報探索とは,そのために,意識的に問いを立てることなのである(選択肢がたくさん考えられることを発想力とも呼ぶ)。もし,こうなったらどうなのか,もし,こうしなかったらどうなのか,もし,これがなかったらどうなのか……。単に「なぜ」「どうして」と分からないことを問うだけではない。いまないなにかを仮定(あるいは仮設)することである。

 新たな文脈をみつけるとは,いまあるものを当たり前とせず,ああでもない,こうでもないと,現状に問いかけることである。これが,情報のもっている“向き”,情報の提供者の丸めた“向き”,情報の発信者がつくりだした“向き”,情報の仲介者・報告者がいじくり直した情報の“向き” ,あるいは世の中の通念としての“向き”に流されないための,自分で情報の“向き”を発見するための方法なのである。これがおそらく情報収集の成果のはずである。


●文脈とは何か

 いわゆる,5W1Hとか5W2Hといわれるものがある。つまり,

・何のために(WHY)

・何を(WHAT)

・誰が(誰に)(WHO)

・いつから(いつまで)(WHEN) 

・どこから(どこまで)(WHEN) 

・どうやって(HOW)

というものである。ものごとを,具体化する,とはこういうふうに,ピンポイント化,特定化することだ。たとえば,誰が,何時,何処で,どうしたの?と聞かないと,ものごとがはっきりしないのは,逆にいうと,ものごとを個別化,特定化するには,こういうことをしなくてはいけないということでもある。ことだ。それを,条件の明確化ないし,状況の明確化と呼んでもいい。それは,文脈をはっきりさせる,ということだ。

文脈とは,前後関係,あるいは脈絡と呼び変えてもいいが,それのおかれている状況をつまびらかにするということだ。状況証拠という言葉がある。疫学アプローチという言葉がある。疫学調査に基づいて,人的,環境,物理的,生物的,社会的,病原的な諸点から,因果関係の相関度を調べ,原因を絞り込んでいく。環境ホルモンや公害や食中毒で,犯人 が絞り込まれていくのも,それだ。いわば,文脈から因果の筋を仮定していく。かつて,かいわれ大根が,食中毒の犯人に想定されたのも,この考え方に基く。つまり,「それとともに一緒に浮かび上がってくる出来事の状況であり,条件であり,因果の流れとして含まれる全てである」とされるが,要するに,われわれが発想するときの,

 ・誰が(主体)

 ・どの位置から(視点)

 ・何を(対象)

 ・どういう条件で

 ・どう見ている(とらえている)か(見ている情報=言葉,イメージ,論理)

 という条件において,

 @この背景となっている社会的・文化的文脈

 Aその主体の置かれている場面・状況という文脈

 Bこの主体の考え方,感情等の心理的文脈 

 Cとらえている言語的脈絡としての言語的・意味的文脈

(更に,D我々の学問的達成や知的水準といった知的文脈,を加えてもよいが,あえて区別せず,Cにくくる) 

 の4つがありえるはずであり,そのそれぞれが変更されるだけで,とらえられたモノ,コトは全く変わっていくのである。つまり,意味の脈絡(論理)も,状況の脈絡(状況)も,状況の要件(条件)も,すべては文脈という表現の幅と奥行の中で,変るということだ。コンテンツ(内容)は,コンテキスト(文脈)で変わるからだ。

●文脈を崩す鍵

 文脈を崩すには,バラバラ化と呼ぶ切り口が使えるはずである。とりわけ,とき,どこ,だれといった条件をどう変えていくかが鍵になるはずである。

@視点(立場)を変える いまの位置・立場そのままでなく,相手の立場,他人の視点,子供の視点,外国人の視点,過去からの視点,未来からの視点,上下前後左右,表裏等々

A見かけ(外観)を変える 見えている形・大きさ・構造のままに見ない,大きくしたり小さくしたり,分けたり合わせたり,伸ばしたり縮めたり,早くしたり遅くしたり,前後上下を変えたり等々

B意味(価値)を変える 分かっている常識・知識のままに見ない,別の意味,裏の意味,逆の価値,具体化したり抽象化したり,まとめたりわけたり,喩えたり等々

C条件(状況)を変える 「いま」「ここ」だけでのピンポイントでなく,5年後,10年後,100年後,1000年後あるいは5年前,10年前,100年前,1000年前等々

こここでいう「変える」とは,それを意識してみるというほどの意味だ。例えば,「視点を変える」の,「視点を意識する」とは,「〜と見た」とき,「いま自分は,どういう視点・立場からみたのか」と振り返ってみるということだ。そのとき,会社の立場で見たのだとすれば,それ以外の,父親として見たらどうなるか,客の立場で見たらどうなるか等々。無意識の視点を意識し,「では,別の視点ならどうなるか」と,改めて別の視点を取ってみる“きっかけ”にすることができる。 ゛

できる人はどんな情報収集をしているか」を参照してください


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