◇問題解決は目的ではない。期待値の明確化とは,どうなったら,その問題が解決したことになるのか,の明確化である。これが解決すべき問題を明確にすることになる。これが解決のために何をしたらいいかを定める。それが明確でなければ目先の問題解決に振り回されるだけである。そのためには,一度確定させた期待値を検討し,それによって何が実現できるのかを考えながら,自分たちの目指す「解決した状態」の意味を明らかにしていく必要がある。
◇「解決した状態」を明確にするには,次々の二つを意識する必要がある。
@目的(それを実現することで何が得られるのか,何のためにそれを実現するのか)との対比。ただ期待値を挙げればいいのではなく,目的との対比で調節する必要がある。
期待値を高く上げればいいというものでもない。目的からみて,
A状態の表現をSMARTによって,達成の有無のわかる,曖昧さのない具体的なものにしなくてはならない。
Bたてた期待値は,より上位の期待値の手段の位置づけになるかもしれない。そういう視点で,どの期待値が最適かを考えてみる。
C仮に,期待値を下げるとしても,大きなパースペクティブの中で,位置づけなおしてみることで,期待値を実現することの意味の再確認となる。
A問題を解決するとはどうすることか〜問題=ギャップをクリアする意味
◇問題を解決するとは,期待値と現状とのギャップを埋めることである。現状を期待値へと上げることである。埋めていくのは,業務遂行だけではなく,連絡,報告,ミーティング,プレゼンテーション等々のあらゆる業務行動によって,である。問題の種類によっては,たとえば,現状回復のような場合,その原因を突き止めて,それをクリアすれば,問題が解決したことになる場合もある。
しかし現状復帰そのものだけでは問題の解決にならないことも多い。たとえば,他社との競争の中では,より高いところに達成目標を置いてそれを解決しなくてはならないことも少なくない。問題解決では,その問題の構造そのものを考えることのほうが重要であることが少なくない。
また多く,そういう問題解決は,現実を動かしてしまうため,かえって問題解決をむずかしくすることもある。たとえば,
水道管から水が吹き出したとしよう。その穴を塞ぐことは原状回復にはなる。しかしそのことによって,その塞いだ穴は相対的に強化されたことにより,どこかが相対的に弱体化することになる。こういう弥縫策では問題解決とはいわない。では,どうなったら解決したことになるのか。この管の目的から考えて,完成像を設定して,そこからできる解決策を考えていくことになる。
どちらが正しいかではなく,その問題の構造から,あるいは,それによって達成したい期待値から,その問題の大きさをとらえなおし,最適な問題解決を考えなくてはならない。
つまり,最初の問題を検討していく中で,それが解決するとはどうなることか,どうなったら解決したことになるのか,を考えていくうちに,期待値が動く。それは理想状態なのか,完了状態なのか,変化自体なのか,行動レベルなのか,行動形態なのか等々。それによって確定した期待値と現状とのギャップが,解決すべき問題となる。
【期待値の明確化】