情報の量と“問い”の数 問いは,単に「なぜ」「どうして」と分からないことを質問をするだけでは十分ではない。既知の枠組みにとらわれないようにしなくてはならない。それにはバラバラ化が有効であることは前回触れたが,そうした“問い”(つまり仮説のサーチライト)をつなげて,何を,どう設問していけば,問題の核心に到達できるのか,そうした有機的につながった設問のネットワークを組み立てなくてはならない。その方向は,大きく分けて,次の4つのタイプがある。 ・分解型(ブレイクダウン,フロー,ツリー図,フィシュボーン,組成分解,構造分解等), ・グルーピング型(加除,加減,乗除,削る・足す,モジュール化,関係づけ等) ・組み合わせ型(組み替え,結合,連結,つなげる等) ・アナロジー型(類比・類推,連想,イメージ,対比,比喩,変形,代用・代替等) の4つのタイプがある。 @系統図(ツリー)状に設問をブレークダウンする 全体構造を樹状に分解する方向を仮定すると,選択肢を経る毎に,曖昧さは減少し,具体化・特定解へと絞られていく。方向性なく進めるよりは,一定の方向性(仮定)をもたせておく方が,効率的である。 A目的→手段連鎖で設問をブレークダウンする 「全体構造を樹状に広げていく」方法は,目的(目標)のための手段は何か,その手段(下位目標)のための手段はないか,と目的→手段の連鎖として,設問のネットワークを組み立てることもできる(これは,組織・システムのようなコトあるいは商品のようなモノの働き(役割・機能)の場合は目的→機能に置き換えてみる)。 B原因→結果連鎖で設問をブレイクダウンする 目的→手段連鎖の設問を,目的を結果に,手段を原因に置き換えれば,原因→結果の連鎖として設問を組み立て直すこともできる。 C二者択一の選択肢連鎖で設問をブレイクダウンする @ABほど設問が明確でなく,漠然とした曖昧な問題状況の中で,周辺から核心へと,問題の焦点を絞っていくとき,二者択一によって,曖昧さを少しずつ消去しながら,絞り込んでいく。例えば,世界状況は→国内状況は→業界状況は→社内状況は→職場の状況は→メンバーの状況は……というように,広げた状況から個別の状況に,順次ブレイクダウンしていく設問の仕方がある。また,例えば,ある人の職業を言い当てるために,設問を立てていくには,自営か勤め人か→公務員か民間か→メーカーかサービスか→重厚長大か軽薄短小か→……と,外から順次二者択一式に絞りをかけていくというものもある。かつてテレビの「二十の扉」という番組で,「それは動物です」という切り口から,20の質問で答にたどりつくというものがあり,それは動物です→人ですか?→今も生きていますか?→実在ですか?……と,二者択一の質問を20回繰り返していく。いわば,220 (1,048,576)分の1に細分化していくことである(例えば,イエス/ノーの選択1回を1ビットとすると,5回で,25=32通りになる)。 Dタコ足式の設問ネットワーク ある問題について,仮定した設問を核にして,関連する設問を,ランダムに蛸足式に拡散させていく。必ずしも,関連性を一貫させなくても,それに関連するものは何か,それとつながるものは何か,と核の設問の周囲をぐるぐる回る形でもかまわない。核設問は,厳密な意味の中核ではないから,それを変えていくことで,設問の幅を広げる。ただし,必要項目を整理しておかないと,堂々巡りに陥る危険がある。この拡散のさせ方には,ランダムに広げる他に,中心から周辺へと,社内事情→業界事情→経済界事情→政府の規制→外国の圧力・規制→世界市場の事情……と,問題を順次,論理的に同心円で拡散させていくことができる。 E関連図式(連関,つながり)の設問ネットワーク 蛸足式のランダムな設問の関連性をもっと徹底的に一貫させて,芋づる式にしたもの。関連するものは何と何か,それぞれに更に関係の深いものは何と何か……,と設問をつなげながら組み立てていく。この場合,まったく思いつくまま洗い出し,それをグループ化して整理していくこともできる。またその組み合わせから,別の視界が開けることもある。 バラバラになった情報の中に,意味のある「つながり」(束ね直しの基準)をつけることによって,バラバラの「地」に「図」を見つけ出す。 異質のものを組み合わせることで,ピース自体の出自にかかわりなく,全く新しい全体像を見つけ出す
@連想式に次元を広げる設問ネットワーク タコ足式の連想だと,どうしてもある一定次元をつなげやすい。そこで,思いつき的に拡散させるにしても,もう少し飛躍をさせるには,アナロジー(イメージによる想像)を駆使するのが便利である。同じ言葉で考えているだけではつながらものが,イメージを介在させることで,飛躍できるのである。 A類推式の設問ネットワーク 与えられた条件や情報の枠組みを考えるとき,そのまま掘り下げるのではなく,その特定の状況を,別の状況設定に(仮定して,仮想して)置き換えて,問題の枠組みを変えて考えてみる。そうすることで,与えられた問題の枠組みの中では,気づかなかった別の視界(「問題」)が見えてくる。
B拡大(縮小)式の設問ネットワーク 通常の視点で見ている限り,情報の深度や幅が深まったり広がったりすることは別として,特別に距離感が変化することはないが,対象との距離を意識的に変えることで,近づけば拡大するし,遠ざかれば縮小する。裏側に回れば裏返したことになる。上から見れば俯瞰したことになる。
こうして問いは, @目的 A目標(期待される成果) を確認した上で, B必要情報(絶対条件・希望条件)(それでどういうことが知りたいのか), C設問へ置き換える(知りたいことをつかむには,何を尋ねたらいいか,具体化する), へと具体化する。このとき,Bは,@Aに基づいて,できるだけ多く列挙し(このとき,設問ネットワークによる仮定が必要になる),その目的達成のために必要な優先順位(ウエイト)をつけ,それに沿って,順次Cで,それを得るためにはどういう問い方をしたらいいかという設問の形に置き換える。これが具体化(特定化)されるほど,情報源のアクセス先も特定される。そして,D探索方法・場所(設問に対する情報を得る相手・場所・方法)の形で集約する。これが,収集した情報の評価にもなるはずである。 D「探索方法・場所」 は,Cの設問への最適の情報を,「誰に,どういうところで,何処で,どんなデータベースで探索したらいいか」を列挙する。当初は,かくかくの情報を,どこそこで,誰々から手に入れるという形で,厳密に具体化(特定化)しにくい。直接情報源にアクセスできる方法がみつからなければ,それを手に入れるための手段情報で代替し,特定化できたところから,順次絞り込んでいく。情報探索は,私的パースペクティブを描くことに他ならない。情報分析をないがしろにする気はないが,分析は探索のパースペクティブを確認する作業といっていいのではあるまいか。 情報探索のスキル1へ戻る ページトップへ
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