@模型(モデル)を立てる
ここでは,縮尺モデル(現物の縮小や拡大)や類推モデル(仕組みを似たモノに置き換える)によって,大きさも視点も全く異なる両者を,同列に見えるようにする。同型と見なす,数ヵ月の時間の間隔を一瞬に縮める,早いスピードをゆっくりした時間に延ばす,プラモデルのようなミニチュア,あるいは箱庭,ひな型,木型等々,われわれの視点に見やすく,対象を同列に見えるようにする。これには,
・空間の差異をなくす(人のサイズにおき直す,箱庭,シミュレーション,拡大図,地図等)
・時間の違いをなくす(「あのとき」を「いま」におき直す,いまを明日として見る,スローモーション,静止,高速度映画)
・クラスの差をなくす(特定個人で全体を推測する。女性誌で若い女性の傾向を推測する。団塊の世代,団塊ジュニアで個々人の傾向を推測する)
等々がある。
Aかたどる(カタチにする)
粘土細工にする,図形にする,構造物にする,形式化する,類型化する。カタチ,形態,形状,輪郭,枠組に似せ(真似)てみる。構造,仕組み,配置をかたどる。カタチあるものにする。モデルとは違い,全体である必要はない。部分だけを取り出す。ある部分と部分の関係だけをかたどる。必ずしも静的なものだけではない。動きや変化も,パターン,図式化できれば,そのカタチから真似られる。そのカタチによって,見え方が決まってくる。
例として、動きの類型/変化の典型/トレンドの傾向/分布の曲線/周期の型/配置の構図/輪郭の相似/構造の近似/様式の同時代性/順序の同型/位相の一致/考え方の類型/ステレオタイプ等々。
問題は,どこをかたどるか,どことどこをカタチにするか,だ。
Bなぞる(写す、映す)
手や紙の形で影を映す影絵,モノの形を写す魚拓・拓本と同じく,対象をなぞる。
カタチをなぞる/時間をなぞる/時代をなぞる/構造をなぞる/仕組みをなぞる/働きを写す等々。どんな瑣事,細部も逃さず写す,トレースする。丸写し,敷き写し,透き写し,引き写し。カタチのほんの些細な凸凹も,ほんの僅かな曲りも,構成のわずかな歪みも,順序も配置も,漏れなく写す。
ちっさな組み合わせの特色から唯一の類似性を気づくかもしれない。ともかく忠実になぞること。ラインも点も,疵さえも重要なヒントかもしれないのだ。全体の輪郭から,細々した部分の特徴まで,ともかく律義になぞる。縮小・拡大コピーになると伸縮となる。
C触媒(媒体、媒介、仲介)させる
プリズムを媒介にすることで,光のスペクトルが見えるように,そのままでは他に見立てようがなくても,何かを媒介にすると,見えてくることがある。
・面や線といった空間や量を媒介にすることで図形が見え方を変えるもの
・モノ・コト・ヒトを媒介にするもの(活性炭を通す濾過,白金片を媒介に水素と酸素が水になる,酒宴を媒介にするノミニケーション,その人がいると主役が引き立つ脇役,喧嘩の仲裁,仲人)
・色や質を媒介にするもの
・気温変化や気候の変化といった条件を媒介にするもの
等々,媒介物(者)を立てることで,見立ての範囲を変えるはずである。
D補う(補足、仮設)
星座に神話を描くように,そこにないものを想像で置いてみる,足してみる,補ってみる。それがあると見なしたらどうなるかと見立てることである。そこに,つながりが見えたり,全体像が見えたり,脈絡がつながったり,別のカタチが見えたりする。それは,媒介に似ているし,「増減」「ずらす」にも似ている。ただ「増減」は、現状に過不足(という変化)を与えるのに対して,これはないものを仮設してみることである。これには,
・ないもの(者)をある(いる)と見なしてみるモノやコトの補足
・ないカタチや線の補足といった空間や量の補足
・色を加えてみる柔らかさを加えてみるといった質の補足
・立体(三次元)に変化を加えてみる、コンピュータグラフィックスの時間の補足
・別の条件を加える
等々がある。
E伸縮させる
凹面鏡・凸面鏡やゴム細工のように,拡大・縮小,曲げる・伸ばす,畳む・伸ばす,折る・広げる,縮尺度,倍率を変えてみる。形態,輪郭,厚み,奥行,幅を変えてみる。これには,
・トポロジーのように,形状や輪郭を伸びたり縮めたりすることで同一と見なすもの。たとえば,ゴム膜の上でAの字を伸ばせばRの字となる,Cの字はSの字にもなる,ドーナツはコーヒーカップとは同型になる。
・ある特徴をクローズ(ズーム)アップするもの。部分や組み合わせ,つながり具合だけを部分的に伸縮させるデフォルメ(誇張、戯画化),構造や配置の間隔,距離,広さを変えてみる,ある部分だけを大きく(小さく)してみる,ある部分と部分の組み合わせだけを縮めて(拡大して)みる。
・時間の幅を伸縮させることでモノやコトを変えてみるもの。たとえば一瞬を拡大する,膨大な時間を縮める。
の3つがある。
F集散(離合)させる
万華鏡のように,散ったり集まったりすることで変形,変質するもののイメージを手掛かりにする。外観の集合・分離、統合・分解、一括・分割、稠密・過疎だけでなく,部分や機能,役割の離合集散もある。その中身には,単なる集散の他に,並べる(バラす),つなぐ(解く),結ぶ(断つ)等がある。これには,
・物理的な集散(モノやカタチ,力や重さ等)
・性質的な集散(アモルファス,高分子のような化学的な変質)
・機能的な集散(働き,役割といったコトやヒトにまつわる仕組み,構造等)
等がある。
G増減(濃淡・厚薄)させる
いまあるモノ・コトに,加減,加除,満ち欠け,過不足,盛衰等々する。むろん量的空間的な増減もあるが,質的時間的な増減もある。一方に写実的な細密画があれば,他方にどんどん捨象していく抽象画や漫画がある。細密に過ぎると,たとえば時間を緻密に追えばスローモーションになるし,白描のように素描することで,かえって対象の本質はつかみやすくもなる。
これには,単なる増減とダブらせる(逆に省く,丸める)がある。
・増減は,量的質的な変化による見え方の違いが手掛かりになる。一人増えただけでトリオからカルテットになる。
・ダブりは,12345を11223344と変える(逆に135をカットする)だけで,リズムが変わる。構成・配列を重ねる,繰り返す,ダブらす。逆に桁を変える,丸める,四捨五入。
H開閉(見え隠れ、浮沈、出没)させる
扉を開けるだけで内外がつながってしまうように,開く・閉じる,包む・晒す(露出),出没,見え隠れ,包囲・解放等によって,別の見立てをしてみる。
・ゲートの開閉で回路が変わる,接続が変わる
・境界の開閉で領域が変わる
・層を圧縮することで次元が変わる
・境界線の開閉をつなぎ変えることで包含が逆になる
・句読点の位置で文脈が変わる
・レベル(例えば水位)の変化で見え隠れする
等々。結果として次の「置き換え」へとつながっていく。
I置き換える(転置、回転、転倒、裏返し)
現状の構図,配置,配列,順序,関係をあちこち置き換える,入れ替える。隣同士を取り替える。シャツを裏返すだけでも,違った枠組になる。
・部分,部分の組み合わせを替える
・括りを拡大したり,縮小したりして境界を変える
・近いもの同士を遠ざけてみる
・連続性を切る,曲げる,断つ
・境界線の線引きを変え,閉じたところを開き,開いたところを閉じる
・上下関係を変える
・内外関係を変える
・包含(入子)関係を変える
・プラス・マイナスを逆にする
・方向(前後、表裏)を変える,等々。
Jずらす(スライド)
ずらすには,そこから滑っていく移動(後戻り)と,その場や時を先へ延ばす(後ろへ引っ張る)がある。
・場所を移す・場所そのものを延ばす
・時代・時間を移す・延ばす
・一つ上へ層をずらす,一つ層を増やす
線/面/時間/次元/層等を,移すことでは切れるが,延ばすことではつながっている。移すことでは,別のつながりに変わるが,延ばせば一つのつながりになる。
K引用(代用・転用・兼用・併用・応用)する
よそから借りる,借用する。知っている何かをもってくる。手慣れた働き,意味,形,性質を借りる。有名なもので代用する。別の使い方をしてみる。全体がどこも似ていないが,ほんの一部に,あるいは一瞬に,何かを感じる,有名な俳優の何かに似ている,何処か輪郭に面影がある。そういう似た部分,知っている部分を手掛かりにして,配列や配置をし直してみる。組み直してみる。別の輪郭をたどってみる。本歌(本家)を探す。
L代理・代表させる
部分で全体を象徴させる,特徴ある部分,知っている部分で全体を代表させるモノを列挙してみる。その部分を何かの象徴(代理・代表)とすると見えてくる全体はないか。
・部分で全体を肩代わりさせる
・部から全体を想定してみる
・小道具で象徴する時代にまとめてしまう
・印象に残るもので全体を括ってしまう
・分かるもの(部分)だけで全体の輪郭を描いてしまう
等々、部分から見えるパースペクティブ(視界)においてみて,構成を見直す,組み直す。