“手直し型”以外の“組み替え型”“理想設定型”の発想技法のいくつかの「進め方」を追加しておく。 【参考文献】星野匡『発想法入門』高橋誠『問題解決手法の知識』その他。 アナロジーの見つけ方については,ここをご覧下さい。
シネクティクス(Synectics)というのは,「異なった関連なさそうな要素を結びつける」といった意味をもつギリシャ語からきたもので,アメリカのウィリアム・ゴードンの創始になる。ここでは,アナロジー(類比・類推)をベースに発想する仕掛けをつくっているが,この技法は,日本のNM法等,アナロジーによる発想技法に強い影響を与えている。シネクティクスのメカニズムとして,ゴードンは, @異質馴化(making the strange familiar) A馴質異化(making the familiar strange) の2つを挙げている。異質馴化とは,自分には全く未知のもの(領域)のことをヒントに自分の問題解決を着想すること。馴質異化とは,既知のものを,新しい視点から見ることで新しい着想をえること」。 シネクティクスでは,リーダー,メンバー以外に,そのテーマの専門家を参加させる。 《シネクティクス法のすすめ方》 1,問題を提示する。 2,専門家による問題分析。
3,解決の試案を発想する。思いつくままに,問題に対する大まかなアイデアを出し合って,問題の多面的な面に目を向けさせる。 4,解決目標の明確化。問題解決のポイントとなりそうなこと,キイワードとなると思われることを,ランダムに出し合い,問題の解決水準(どういう形で解決するか)を明確にする。
5,アナロジーによる発想を展開する。
6,アナロジーの選択。出てきたアイデアの中から,問題の解決に使えそうなものを選ぶ。 7,選択したアナロジーをさらに,細かく検討し,ヒントとなりそうなものを探し出す。 8,目標への適合。現実に使えるアイデアへと結びつける。 9,解決案の作成。 《シネクティクスの展開例》 ゴードンの例示しているのは,「石油鉱床の含有量調査」 1.問題の提示 「石油鉱床の中の原油含有量をどう調べるか」 2.専門家による問題分析 「最も良い方法は,穴のあいたドリルで,岩盤の中心部からサンプルを切り出すやり方である」 3.解決試案の発想 特になし。 4.解決目標の設定 「石油から,鉱床の岩の中ではどのように込み合っているか聞き出す」 5.類比の発想 「込み合った状態の例を探す」
6.類比の選択 「猫は無関心な動物です」 7.類比の検討 「猫でもたくさん群がると無関心さがなくなり,怒り出す」 8.目標への適合化 「何らかの方法で石油を凝集してやると,石油が反応」「石油は静かな状態にしないと石油らしくなくなる」「石油に窒素を送って凍らせる」 9.解決案の作成 アイデアを現実化する方法を考える
NM法は,創造工学研究所の中山正和氏の考案した,代表的な類比技法。類比を要にして発想をステップ化してあるが,これは,基本となるのは, @キイワード(KW)を決める。 Aそのアナロジー(QA クエスチョン・アナロジーの略)を見つける。 Bその背景(QB クエスチョン・バックグラウンドの略)を探る。 Cその背景をいまのテーマに結びつけられないか,と問いかける(QC クエスチョン・コンセプトの略)。 Dコンセプトからアイデアを発想する。 のステップであるが,このステップのバリエーションとして次のような5タイプがある。 ・H型(Hardwareの略)は,装置や道具の改良などに使われる。上のステップのBの段階で,出た背景毎に,「これは使えないか」と,問い直していく。 ・T型(ステップの改良者の高橋浩氏のTを取っている)は,上記ステップをたどって,最後に出されたコンセプトのなかから,使えそうなアイデアを見つけだしていく。もっともグループワークに適したプロセスとなっている。 ・A型(Areaの略)は,空間結合によるもので,T型で出たコンセプトを,仮説を立てながら,一見関係なさそうなものに,因果関係ではなく,つながりを見つけだそうとするもの。それぞれのイメージの広がりによって,共通領域を見つけだしていく。新技術や用途開発などに使われる。 ・S型(Serialの略)は,時間結合によるもの。A型とは異なり,T型で出たコンセプトに,因果関係を見つけ出し,関係づけようとするもの。 ・D型(Discoverの略)は,たくさんの観測データから,独創的な結論を出すためのもの。データの集約によって結論を習練させるのではなく,一定の仮説で,データを集約しとていく。A型,S型の応用編となる。 アイデアのヒントを見つけるためのもっとも基本的ステップは,T型であり,そこで出たアイデアの集約の仕方でA型,S型があり,D型,H型は,その応用と考えるのがいい。ここでは,T型の進め方を紹介しておく。 《NM法のすすめ方》 1,テーマを決める。 2,キイワード(KW)を決める。
3,キイワードに即したアナロジーを探す(QA)。
4,アナロジーの背景を探る(QB)。
5,QBを手掛かりに,テーマの解決に使えそうなヒントはないかを問い掛ける(QC)。
6,アイデアを整理・統合して煮詰めていく。
アメリカのコンサルタント,ステファン・グロスマンの考案したもの。常識の逆を無理やり設定し,アイデアにつなげていこうとする。意識的に,当たり前,当然と見なす事柄を崩すことで,新たな発見や発想につなげていく。 《逆設定法の進め方》 1,解決すべきテーマを決める。 2,テーマのもつ常識とされている属性や特性を列挙し,できるだけ具体的に表現する。
3,属性ごとに,その逆を設定する。 4,逆の設定を手がかりにアイデアにつなげる。
アナロジー発想法は,逆設定法(常識の逆を無理やり設定してアイデアにつなげようとする発想法)を,一定のシステムをもったモノに当てはめ,さらにそれをアナロジーによって発想の飛躍をしやすくしたものである。ポイントは, @テーマとなったモノやコトの機能(働き・役割・性能等)をできるだけ洗い出し, Aその機能の常識的な働き・機能・役割・性能を,逆設定法と同じく反対から考え, Bそれによって顕在化させた問題点/矛盾点を明確にし, Cそれをアナロジーによって解決してみる, という流れから,「どれだけ機能を多角的に枚挙できるか」「どれだけ異質なものから類推できるか」にある。 TQCの商品企画7つ道具のワークショップから生まれた技法。 《アナロジー発想法の進め方》 1 ,取り上げるテーマ決める2 ,テーマを構成する機能や特徴を列挙する。
3,常識の機能や働きを否定し,逆設定の要領で,逆に考えてみる。
4,逆設定したことによって発生した問題点・矛盾点を挙げる。
5,キイワードを設定する。
6,アナロジーを考える。
7,アイデアを発想する。
難問をクリアするためには,個々の具体的データの積み上げによってアプローチする現状分析型と,理想像を仮設して,そこから逆算してくる理想設定型とがあるが,ワークデザインは,後者の代表的な技法であり,モノづくりの発想技法の範疇を超えて,具体的なシステム,制度,機構としてまとめていこうとする。ウィスコンシン大学教授のナドラーの創案になる。 この特徴は,@現状分析にタッチしないこと,A問題をシステムとしてとらえ,その機能に着目すること,Bその機能を満たす理想システムから考えていくこと,によって,対象としているテーマ(課題)を機能としてとらえ,その機能を満たす理想システムをデザインし,それに最も近い実現可能なシステムを導き出すところにある。ただ,これは,大変大掛かりなため,この簡略版として,師岡孝次氏の改定したDAXがある。 この他,理想設定型の簡易なものとしては,マサチューセッツ工科大学のジョン・アーノルドが,Creative Engineeringコースのために創案した仮説状況設定法がある。例えば,「もしも太陽の光が固定だったら,どういうことが起こるか」といった仮設した状況の中で,現実とは離れた解決策を考える。 《ワークデザイン法のすすめ方》 1,テーマの決定
2,テーマのシステムの機能を明確にする。
3,明確化した機能をレベルアップしていく。
4,テーマの機能を決定する。
5,ゴールを設定する。 以下の,5〜6は,理想システムの展開のステップとなる。
6,理想システムの設計をする。
7,情報収集により,選択したシステムのチェックをする。
8,実施システムの選択。
9,システムの詳細設計。 これは,初めはトレーニング用として工夫された。例えば,天才児の創造的問題解決能力向上の実験プロジェクトでは,「もし太陽光線が固体だったらどういうことが起こるか」という設問が出され,マサチューセッツ工科大学のアーノルドは,「重力が地球の11倍の遊星で使える自転車,生活用品等を設計する」という課題を与えた。 しかし,将来像を先取りして,例えば1ドル=1円となったらどう経営資源を配分すべきか,といった長期のビジョンの検討や,規制緩和を想定して,どういう事業が可能になるのか,どういう商品開発が可能になるのか,例えば,郵政の民営化となれば,何に参入できるのか,といったことを現実の問題として検討するのにも向いている。その場合,シナリオライティングと同様,ありうる未来像(異質な状況)を想定して,何ができるかを発想する。 《仮想状況設定法のすすめ方》 1,テーマの決定 2,状況設定を想定する範囲を決める。
3,どういう仮想状況を設定するかを検討する。
4,基本状況を設定する。
5,仮想状況において何が起きるか,何が発生するか,問題となりそうな変化要因を洗い出す。
6,仮想状況にどう対応するかを検討する。
7,検討したアイデアはいま実現したらどうなるかを検討してみる。
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