いわゆる,5W1Hとか5W2Hといわれるものがある。つまり,
というものである。ものごとを,具体化する,とはこういことだが,たとえば,誰が,何時,何処で,どうしたの?と聞かないと,ものごとがはっきりしないのは,逆にいうと,ものごとを,個別化,特定化するということだ。それを,条件の明確化ないし,状況の明確化と呼んでもいい。 それは,文脈をはっきりさせる,ということだ。文脈とは,前後関係,あるいは脈絡と呼び変えてもいいが,それのおかれている状況をつまびらかにするということだ。 状況証拠という言葉がある。疫学アプローチという言葉がある。 疫学調査に基づいて,人的,環境,物理的,生物的,社会的,病原的な諸点から,因果関係の相関度を調べ,原因を絞り込んでいく。環境ホルモンや公害や食中毒で,犯人 が絞り込まれていくのも,それだ。いわば,文脈から因果の筋を仮定していく。かいわれ大根が,食中毒の犯人に想定されたのも,この考え方に基く。 難しく言えば,「それとともに一緒に浮かび上がってくる出来事の状況であり,条件であり,因果の流れとして含まれる全てである」とされるが,要するに,われわれが発想するときの, ・誰が(主体) ・どの位置から(視点) ・何を(対象) ・どういう条件で ・どう見ている(とらえている)か(見ている情報=言葉,イメージ,論理) という条件において, @この背景となっている社会的・文化的文脈 Aその主体の置かれている場面・状況という文脈 Bこの主体の考え方,感情等の心理的文脈 Cとらえている言語的脈絡としての言語的・意味的文脈 (更に,D我々の学問的達成や知的水準といった知的文脈,を加えてもよいが,あえて区別しなくても,Cに括ってもよい) の4つがありうるはずであり,そのそれぞれが変更されるだけで,とらえられたモノ,コトは全く変わっていくのである。つまり,意味の脈絡(論理)も,状況の脈絡(状況)も,状 況の要件(条件)も,すべては文脈という表現の幅と奥行の中で,変るということだ。コンテンツ(内容)は,コンテキスト(文脈)で変わるからだ。
たとえば,前回,前々回までに使った円に直径や,円の中に4つの円図その目で改めて見直してほしいが, 行宗蒼一氏より P.エヴァンス&G.ディーハン『創造性を拓く』より 誰が を,具体的に想定しながら,眺めてほしい。たとえば,次のように考えてみる。 @図を,具体的場面(シーン)に置いてみる例えば,「センターサークル」 に見えた,円と直径図なら,サッカーをしている場面でも,バスケットボールをしている場面でも,具体的に思い描く。その,場面もくっきりピンポイントに特定する。 ・どういう場所(場面)で ・どういうとき(機会,時間帯,経過時間の中)に ・何をしているのか 等々から, そこでゲームに参加しているのか,それをその場で見ているのか,テレビで見ているのか,それともテレビゲームに参加しているのか,その場面,シチュエーションを具体的に思い描いてみる。 それによって,そこで描かれるものはまったく異なり,それによって,そこから連想されたり,見えてくるものはまったく違うはずだ。見えなかったもの,気にもならなかったものが,そのシチュエーションの中でなら,気づいたり,見えたりする。 Aそれにふさわしい登場人物を設定してみるその場面にふさわしい登場人物(たち)は ・誰(どんなターゲット,どんな対象,どんなグループ,どんな年齢層)が ふさわしいのか,性別,年齢,職業,背景,来歴等々を描きながら,それに似た映画,アニメ,マンガ,小説を借りて,ストーリーを描いてみる。 誰(と誰)がやっているのか,誰(と誰)が見ているのか,誰(と誰)が Bその場面には,どんな仕掛け(舞台装置)がふさわしいかを列挙してみる ・久しぶりに会った友人同士 等々によって,それに似つかわしい舞台装置は何かを,街,町並み,風景,季節,時間,衣装を含めて挙げてみる。 Cこうして,状況設定と登場人物によって,文脈が整い,ひとつのストーリーを描いてみる・何のために(動機,ニーズ,欲求) ・何を求めて(期待して,関心・動機) ・どんなふうに(使用方法,利用方法) アイデアは,こちらからアイデアが出やすい状況を設定しなくては,待っていても自分の方へ訪れてはくれない。アイデアの方からこなくてはならない状況を作ること。何とかすると言い,無理に考えると言い,具体的に考えると言い,いずれも,そうしなくてはならない状況を作るほうがいいに決まっている。 前述した別図には,30の図がある。たとえば,15は,前々回取り上げたが,これを,自分が,上から見ている,下から見ている,ひっくり返している等々の想定は,シリーズ化という言い方を,そこでしたが,逆にいえば,意識していないが,ひとつのシチュエーションを,自分に設定して,発想しようとしているA過ぎない。それを,自分ではなく,別の人と設定すると,たとえば,食堂で座っていた椅子がひっくり返り,おこそうとしているときに見た椅子,という言い方ができる。そこで,場所を変えると,教室で,いたずらされて椅子を引かれてこけた子が,仰向けになったところ,という風に連想をつなげていくことができる。 こうした設定を,チェックリストにしたのが,4つの視点であり,バラバラ化チェックリストである。
バラバラ化については,後で別の視点から触れることがあると思うが,今回の5W1Hを使ってみると,どれだけストーリーを描きやすくなり,どれだけ「何に見えるか」という問いへの答えも,出しやすくなるか,たとえば,この図を見て ,各自で試みてほしいものである。 |
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