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発想トレーニング7

ストーリーを描く効果について

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    5W1Hで,ストーリーを描く,つまり,具体的シチュエーションを想定し,その場面,そのときにおいて見て,具体的に思い描くことで,面として,発想を出しやすくしてみよう,ということであった。たとえば,次の図を見てほしい。

 これは,ある雑誌の中で,発想の例として紹介されていたものから,ひとつ引っ張ってきたものだが,そこには,

鯉のぼりの目,ローラースケート,目の逆さま,日の出,一つ目小僧,蛙の卵,上から見たコーヒーカップ,書きかけの子供の絵,丸テーブルの上の灰皿

 等々が紹介されていた。同じようにしていけば,

安全帽の先端についている会社の社章
工場の受付にある防犯用の監視カメラのレンズ
襟から外れてしまった徽章
記入しようとしているボールペンを上から見ているところ
カメラのレンズを手で焦点を絞っているところ
ひっくり返したマグカップの底
シャツにボタンをかけたところ
逆にボタンを外そうとしているところ
しょうき様の目
武者の冑の前立て
自分に向けているビデオカメラのレンズ

 等々,いくらでも出せるだろう。しかし,こうしたやり方では,単発の発想でしかなく,ひとつの発想が,次へと有意味的につながらない。 ひとつひとつが,単発で,ひとつ思いついては,また次に「何に見えるか?」と発想しなおすという,断続した作業になる。その点で言えば,前に述べた,シリーズ化や連想の方が,ひとつひとつの意味につながりをつれて,連続した発想としやすいはずだ。たとえば,魚の目を発想連鎖の手がかりとして,

金魚の目,フナの目,黒鯛の目,真鯛の目,めだかの目,鱶の目,金目の目,イカの目,蛸の目,イルカの目,鯨の目

 等々と,次々に意識的につなげてみることができる。これを,意識的な意味をつなげていくシリーズ化としても ,関連するものが次の発想につながっていく連想 にしても,それらを使えば,具体的に出しやすくなるのは,前に述べたところだ。たとえば,「ローラーで伸ばしている」という状況設定から,連続化していくなら,

パン生地,そばの生地,うどんの生地,ピザ生地,ケーキの生地,伸ばした餡,延びた飴

 といった連続性でもいいし,あるいは,

圧延で伸ばしている粗鉄,銅線,鋼,鍛鉄,塩ビシート,ポリエチレンシート

 とつなげていけるし,あるいは,

再生ヘッドと触れている,カセットテープ,VTRテープ,オープンリールテープ,8トラテープ,8ミリテープ

 と,一種連想で,シークエンシャルな記録スタイルに関連するものを枚挙していくこともできるし,あるいは,

上から見たボールペン,シャープペン,サインペン,マーカーペン,万年筆,鉛筆,色鉛筆,消しゴムつき鉛筆,鉛筆のペン先,書こうとしているサインペン,サインペンのキャップ,シャープペンの先

 等々と,上から見たり,ひっくり返したりという視点の変化とかね合わせながら,何かの先端,端,末端という連想でつなげていくことはできる。しかし,こうした単発的な発想では, 確かに点から線になっているけれども,結局どこまでも,思いつきに頼るところがあり,“連続性の思いつき”にとどまっている。これでは,思いつきという偶然性に頼っていることに変わりはない。

 そこで,ストーリーを描いてみる。何をきっかけにしてもいい,たとえば,『鯉のぼりの目』と出た一つの思いつきを,点から線へ,線から面へ,面から層へと,広げ深めていくためには,そこにストーリーを描いてみることの効果を確認したい。

 たとえば,鯉のぼりのイメージの連続になぞらえて,初節句を迎える子供のために,新しい鯉のぼりを発注した父親 が,じりじりしながら,鯉のぼりの届く日を待ちわぴている,というストーリーを描いたとすると,

白い鯉のぼりの生地に初めて目が入ったところを思い描いている
鯉のぼりのウロコが描かれているところ
目に墨が入った鯉のぼりに,これから色づけしていくところ
働いているラインで,ベルトを巻き込むローラーが鯉のぼりに見えてしまった
鯉のぼりを見た我が子が思わず手で目を覆おうとしている

 となり,それを鯉のぼりが届いて,子供と一緒に見上げている場面,に想定すると,

棹にからみついたところを棹の先から見たところ
我が子に向けたビデオカメラのレンズキャップをとり忘れて慌てて外そうとしている
棹の前で,行きつ戻りつしている自分の歩いている軌跡
見上げた屋根の鬼瓦の目
樋の先に去年見失ったボールが引っかかっていた

 同じことを,たとえば,主人公を代えたり,立場を変えたり,場所を変えたり,時を変えたりすることで,出していくことができる。

 また,まったく別に,「早朝川辺を散歩している老人」というシチュエーション(その他なんでもいいが)を,とりあえず設定してしまう。そこから無理やりストーリーを考えていく。その設定から,同じ図を考えてみるとすると,たとえば,

川原の草のなびく中を歩いている人(帽子を被っている)を上から見たところ
河の波間に浮いているボール
折れてしまった駐車禁止マークの直径部分が消えかけている
捨てられている子供用の車のハンドル
水中から見上げている目のように見える投棄されたタイヤ
土管から頭をのぞかせているねずみ
ケーブルが切れてのぞいた断面
マスクをした人の片目
烏と目があってしまった

 賢明なる方々は,既にお気づきになっておられるかもしれないが,シリーズ化は,既にストーリー化の一歩直前まできているのだ。上から見たという状況設定を描くことは,それを面に広げ,「誰が」「どこで」を加えるだけでのことで,子供が幼稚園で,子供がテーマパークで,とすることで,シリーズ化の延長線上に,具体的シチュエーションを加えているのである。

 第1回で,発想は具体的であるほどいいと述べたが,ストーリー化とは,具体化しやすい発想状況を作り出しているのだと言い替えてもいい。

 したがって,当然ストーリー展開だけですべてよしとなるはずはない。むしろ,シリーズ化で,視点や対象をあれこれ考え,具体的シチュエーションを描いた方が出そうだったら,描いてみるし,だめなら,別の視点を想定してみればいいのだ。

 たとえば,モノの発想の場合,上から見たり,下から見たり等々と視点を設定した方が,出しやすいかもしれないが,誰が,どこで,どんな使い方をするのかと,ストーリーを描くことで,より細部を詰めることができる。ストーリーを想定して,それをシリーズ化で見直した方が,具体性というのは一種の現実感覚なので,既成概念そのものにまみれている可能性がある。それを崩すには,シリーズ化で再点検したほうが,有効な場合もある。その意味では,シリーズ化や連想と,キャッチボールした方がとストーリー化がはかどることもある。当たり前だが,何かひとつだけ,秘密の手法があるということはないのである。

 同じやり方で,この図を見直してほしい。同じように,点から線へ,線から面へ,面から層へと,広げ深めていくことで,発想も,点から線,線から面,面から層と,厚みを加えることができるはずなのだ。

以下続く

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発想トレーニング・目次

発想トレーニング1

発想トレーニング10

発想トレーニング2

発想トレーニング11

発想トレーニング3

発想トレーニング12

発想トレーニング4

発想トレーニング13

発想トレーニング5

発想トレーニング14

発想トレーニング6

発想トレーニング15

発想トレーニング8

発想トレーニング16
発想トレーニング9 発想トレーニング17

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