これは、どれだけいろんな人を知っているか、です。典型的な異質人とは、同僚、同期、同級生以外の、異なる性、異なる年齢、異なる職業あるいは、異なるレベル、異なる経歴、異なる役割を想定しています。キャッチボールの効果が上がるかどうかのポイントとなります。 幕末、若い浪士が、坂本竜馬に、 「大事なものは何か」と聞いたところ、「刀」と答えたそうです。 何年かして竜馬と再開した、若者が、意気揚揚と刀を差していると、竜馬は、 「まだそんなものを差しているのか、君は遅れている」 と、リボルバーのピストルを示しました。さらに何年か後、若者が、再開した竜馬にピストルを示すと、 「何と時代おくれだ、これからはこういうものの時代だ」と、万国公法の本を示した、というのです。 ここに何を読み取っても自由ですが、若者の立場から見たとき、竜馬という異質人に会うたびに、変わっていく姿がみえてきます。ここでの“異質人”とは、若者にとっての坂本竜馬です。
異質状況とは、仕事場以外の場所、家庭以外の場所、行きつけ(なじみ)以外の場所を想定しています。いつも同じ時間に、同じ車両に乗って、同じ職場の人と昼を食べ、夜は飲むというのでは、頭の回路が固まってしまいます。
インプットの異質化とは、必ずしもインプットするものの変更のみを意味していません。漫画+新聞+週刊誌、雑誌+漫画+週刊誌、専門書+原書+タイムでも何でもいいのです。活字をやめて映像、漫画をやめて活字、車をやめて歩く、というそのパターンを変えることも大切ですが、自分のインプットするときの目線も振り返ってください。いつもとは違うところに焦点を当ててみる、目の付け所を変える、ということです、たとえば、新聞で言うなら、3行記事、囲み、コラムに、目を向ける、ということです。ただし、会社で、業務で読む場合も含めていいのですが、身銭を切っている場合のみに限定して考えてみてください。それが個人の努力だからです。
仕事でも個人的な生活態度でも、それまでの手慣れた手順、ステップを変えてみる、やり方をかえてみます。たとえば、こうなったときには、こうすればこうなるといういつものやり方をかえて、「こうしなかったらどうなるか」を試みてみるのです。
多く、誤った自己イメージが、自分の発想を閉ざしたり、タブーを作ったりするのです。発想力アップには、新たな自分の再確認、再発見、自分の別の側面を知るということが結構重要です。ユング曰く「生きてこなかった反面」に自覚的であることです。 たとえば、 ・いまの自分は数ある選択肢のうちのひとつにすぎない。が、それを選んだのは自分だ。 ・既知の自分とは異質の自分、ありえた自分、なりたい自分、可能性の自分、夢の自分 ・自分は一色ではない。一直線に過去から未来へつながっているのではない。 ・常に何かを選択したとき、そこで断念(捨てた)生き方があるはずである。 常にそうならなかった自分があり、そういうさまざまな可能性の選択肢の中に今があるのです(ありえたさまざまな分岐点、そしてこのいまの一瞬もまた、未来からみるとそういう分岐点でありうるのです)。 自分を異質化するというのは、いまの自分が知っている自分だけではなく、自分の見落としている自分、見たくないと思っている自分をも受けとめ、そのすべてを自分の可能性として信ずることです。今の自分に一番影響を与えているのは、過去の自分なのです。 @今の自分の異質化 いまの自分を、ピンポイントのいま、ここだけで考えるのは、一面的です。自分の可能性をもう少し幅広い視点でチェックしてみたいものです。
A明日の自分の異質化 いまの延長線上に自分をおかず、遠近法を変えてみる。会社・仕事の延長線だけでなく、別の自分の側面(趣味、好きなこと、やりたいこと)に焦点を当てて、自分を点検してみます。それが重要なのは、仕事の足以外に、もう1本、立脚点を持てることなのです。
B昨日の自分の異質化 ありえた自分の可能性(自分が選択してきた岐路を振り返ってみる)は、単なる「あのときこうしていたら、こうしならったら」という愚痴ではなく、自分の可能性としてチェックしてみよう。ハイデガーは言っています。人間というのは絶えず可能性として、まだ現実になっていない何かを残している、不断の未完成なのだ、と。
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