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リーダーシップについて・19

プラン実現力のリーダーシップ

 立てたプランニングを実現するリーダーシップの要諦はリソースの見積もりにある,といわれる。ここにはふたつの意味がある。

ひとつは,ヒト・モノ・カネ・ノウハウ・時間の,自分の使える資源である。「優れたリーダーシップの条件とは?」の問いに,あるエグゼクティブ曰く,「優れたメンバーである」と。つまり,すぐれたリーダーシップを支えるのは優れたメンバーシップであり,メンバーが応えてくれなければ,リーダーシップの発揮のしようがないのである。しかし,それを育てるのもリーダーシップそのものの力だから,その瞬間,問われているのは,日頃のリーダーシップそのもののつけなのである。

 いまひとつは,リーダー自身の内的リソースである。スキルとしてのリーダーシップから見たとき,実は,自分自身のもっているスキル・知識・経験ではなく,どれだけの人のネットワークをもっているかが一番大きなリソースとなる。それは通常はブラックボックスとなって目には見えない。しかし,何かあったとき,一声かければ,その人のためにサポートや支持をしてくれる人がどれだけいるか,それがいわばリーダーシップのリソースにほかならない。その人が通常の業務や責任の範囲で動かせる対象,つまり部下や関係者はこの場合勘定には入れない。それが動かせないようなら,話にならないのだが,実は日常でも職位と権限で言うことをきかせていただけで,ほとんど動かせていないのに,自らのリーダーシップで動かしているつもりでいただけかもしれない,ということがそのとき白日の下に明らかになったのかもしれない。

さて,そうしてともかくもプランが動き出すと,それが遅滞なく進んでいる限りリーダーシップはいらない。しかし立てた目標もプランも,リーダーの日々のフォローなくしては完結しない。進捗管理は,リーダーシップにとって,方針徹底の場であり,部下の考え方,仕事の進め方の理解の場である。こうした日々のフォローが,目標達成と同時に,部下育成の機会であり,チーム力アップとして,次へつながる。だが,こういうことを言うと,OJTの場合でもそうだが,すぐにテクニカルな面や仕事の仕方といったハウツーに目が向きがちである。しかしそれは間違いだと思う。OJTでも,その組織のDNAである,仕事への取り組み姿勢,仕事の中で価値を置くべきことは何か,何を重んずべきことなのか等々を刷り込むことこそが重要なのである。テクニカルなことは,二の次とは言わないが,仕事の姿勢や価値が重視されれば,テクニカルなことは自己責任で身に着けていけばいいし,そのための機会さえつくってやればいいのである。

 その意味で,リーダーシップがもっとも問われるのは,プランニングの進捗を妨げる障害が起きたときだ。しかも急を要する問題の除去とプランにおける重要な価値にかかわることとの二者択一になったとき,まさに何を仕事で重視するかのリーダーシップが問われる。でなければ,リーダーシップは必要ないのだ,といってもいい。

その問題の処理を優先させると,それまで価値を置いてきたこと,自分たちの行動基準や仕事で価値を置いてきたことが台無しになるのだとすると,そこで問われているのは,いままで何に価値をおいてきたのか,そしてそれはどこまで本気だったのか,なのだ。

たとえば,社内の反対を押し切って個人向けの小口宅配便へと業態転換をしたヤマト運輸は,小口輸送がまだ損益分岐点にも達していない3年目に,当時の小倉社長の決断で,商業貨物から完全撤退を決め,安定した収入源である大口顧客の松下電器に「取引の解消」を申し出ている。それは,小口と両立しないビジネスのあり方を棄てるという決断を通して,苦難の中でも,いま自分たちが何に価値を置こうとするのか,何を重視しようとするのかを,社員全員に示した決断と言っていい。

トラブルを処理しなくてはならない。しかしそれを優先させると,いままで大事にしてきたこと,あるいは本来目指していることが崩れかねないということはよくある。たとえば,取引先から過大な条件変更があり,それをのまなければ,納期に間に合わない状況になったとする。あるいは,チームメンバー間で進捗の遅速があり,時期を揃えようとすると,どこかで遅れている分を取り戻さなくてはならない。トップから思いもよらない方針変更が出され,今までとは180度の方向転換を強いられる等々。そこで何を重視するかを,メンバーは注視している。

もちろん理想を言えば,それを跳ね除けて方針を堅持するパワーがあるにこしたことはない。しかし不幸にして事態はそううまくはいかないし,すべてのリーダーがスーパーマンではありえない。問題は,価値変更や方針変更するとき,どうメンバーに説明するか,だ。そのとき本当の意味で,リーダーシップの真価が問われる。そのとき大事なのは,リーダー自身がおのれの限界と向き合い,それをメンバーに隠さないことができるかどうか。弁解も,自己合理化も,強弁もせず,きれいごともなしに,自分がなぜそう決断したかを開示して,説明してみせることだ。それは,何を捨て,何を守ったかについての説明でなくてはならない。リーダーは自分の誇りは捨てても最低限チームや組織の価値を守ろうとしたのか,あるいはその逆なのか。メンバーはそのリーダーシップの姿勢の虚構を見のがすことはない。

チェック項目

スケジュールの枠組みと範囲を決めている
スケジュールのクリティカルポイント(重大領域)を定めている
遂行上の遅延・障害要因が隠れていないかチェックする
予想される障害・問題にはあらかじめ予防策を検討する
障害が発生してしまったらどうするかも決めておく
スケジュール推進部隊を明確にしている
スケジュール遂行の役割分担を明確にしている
スケジュール期間内の計画単位(半期,四半期等)を決める
スケジュールの中心に推進者(ヒト)を考える
スケジュール遂行上の方法・手段を徹底的に検討する
スケジュールの手順・ステップを厳密に検討している
スケジュール推進上の成果のチェックの仕方・時期を定めている
投入する資源(ヒト・モノ・カネ・トキ・コトバ)を十分検討する
スケジュールの投入効率をあらかじめ決定している

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リーダーシップについて・20

組織活力のリーダーシップ

 まず原則論から言うなら,組織の活力について次のように言うことができるだろう。

チームの活力を高めるのには,どれだけメンバーが目的意識を共有化できるかである。そのために,リーダーは,確信をもってチームの目指すもの(目的と目標)を指し示すことができなければならない。それがチームメンバーに,日々の仕事の意義(目標達成のためになすこと)への確信をもつ根拠となる。それによって,チームの目的と情報の共有化を図り,何のためにそれをするのか(目的意識)が明確となり,そのために何をしたらいいか(目標意識)が共有化され,どういう役割を果たせばいいのか(役割意識)が分担され,何をチェックしたらいいのか(評価基準)が一致し,チームメンバーがひとつの目的実現のために一体となって取り組むことができる。それが,何よりもチーム全体のやる気づくりの根源となる。

 しかし,以上のことは,組織側からの視点で考えたことに過ぎない。組織活力が何のために必要なのかに対する答え方に応じてその中身が変わるのである。たとえば,大まかに3つの面から考えることができる。

第一は,組織自体のパフォーマンスにとって。組織自身の維持と向上から,組織に活力がなくてどうして,社会の要請にこたえ,その組織が存在する意味を実現できるだろう。

第二は,リーダー自身のパフォーマンスにとって。組織に活力がないとは,リーダーが何かを求めても,メンバーからは何の反応も,前向きの行動も生まれず,ただ言われたことを生活のために仕方なくやっている,ということになる。それではリーダー自身にとっても,その一つ一つの仕事にも,自分自身の存在にも,意味も達成感も見出すことはできない。

第三は,メンバー自身のパフォーマンスにとって。メンバーが,自分がそこにいて,働くことに意義を感じられること,特に自分がそこで有用とされ,そこでの成果に寄与できているという有効感や,そこで働くことで自分自身のやりたいことを実現できるという効力感がもてなければ,そこですごす時間は単なる義務感でしかない。

 多くリーダーは,組織のために貢献することを求めがちだ。ともすると,リーダーは組織目的と一体化してしまっているからだ。組織としての「しなくてはならないこと(環境要因)」「できること(内部要因)」「したいこと(意思)」と,リーダー自身の「しなくてはならないこと(環境要因)」「できること(内部要因)」「したいこと(意思)」とがイコールとしてしまっている。もちろん,それを否定する気はないが,その範囲にとどまる限り,個人商店主的リーダーシップであって,その組織の社会的存在意味も限定されたものであるし,そうしたリーダーシップは,メンバーにとってメンバー自身の活力を減らすストレス要因そのものになっているケースが多い。

 本当は,まずリーダー自身が本当に,そこで自分自身を活性化できているのか,と自問しなくてはならない。心から充実し日々生き生きとしているのかどうか。気づかずにやらねばならないこと(それも自分のそれではなく組織のそれ)とリーダーとして役割から来るやりたいことが重なって,本人はそれが自分のやりたいことと勘違いし,迷惑にもそれをメンバーに強要している。問題は組織と一体化していることではなく,それに気づかず,あたかも自分の意思であるかのごとく思い込んでいることだ。

自分に気づいていないとは,自分自身ときちんと向き合っていないことを意味する。自分の心に向き合う程度でしか他人の心とも向き合えない。それではメンバーの思いにも意思にも気づけるはずはない。そんなリーダーの言葉に迫力も活力も生み出すはずはない。そこでは,ただ「なすべきこと」を要求するだけのリーダーシップしかない。それはリーダーシップではなく,ボスという肩書きに頼った命令に過ぎない。自分自身をコントロールし,リードできないものに,人をリードし,ましてや人の活力を引き出す力があるとは思えない。

本気で,その組織のパフォーマンスを高めたいなら,いかに異質なメンバーにも,その組織で働くことの,本人にとっての意味を見出すチャンスを与えるものでなくてはならない。必ず見つかるものでもないし,ここでは見つからないと気づくことになるのかもしれない。それでもいいのだ。それができるためには,ひとりひとりがそういう意味を考えられるチームの風土ができていなくてはならない。

たとえば,活力というのをイメージとして言うなら,チームメンバーひとりひとりが,自分自身の責任でなすべきことをわきまえ,その達成のためにチームメンバーと助け合いながら,組織としてのパフォーマンスをあげるように努力するプロセスということができる。そのときメンバー自身もまた自分自身の本音と意思に向き合い,何をしたいのか,それは今ここでできているのかを考え,チームにもオープンに話せる雰囲気がなくてはならない。

それがなければ,表面上は活発な意見交換がなされても,それは組織として「なすべきこと」についてのみであって,ひとりひとりの「やりたいこと」を諦めるか,はじめから考慮に入れていないか,そもそも意識していないか,のいずれかでしかない。それを方向づけていくのがリーダーシップそのものなら,リーダー自身が自分の本心と本音と意思に,きちんと向き合っていなくてはならない。でなくては,結局その活力は,メンバーのためのものではなく,組織とリーダーのためのものでしかない。それは真の活力とは言えない。

【組織活力となるリーダーシップ行動】

実現のための手段

手段実現のための方法

メンバーや周囲にどう働きかけるか

組織のめざすべき姿を明確にしている

理念の共有化につとめている

どういうことを目指しているのかを明確にしている

●上位者と、会社の理念、ビジョンについてのすりあわせをはかり、自分の方針についても理解を得ている
●チームとしての目的、目標の共有化し,価値を共通にしていくため,たえず「方針をメンバーとすりあわせ」ている
●メンバーの仕事を進める上での意味と確信になっているよう,チームの目指すものについて,リーダーとして自身をもって提示できる

経営への参画する機会を促進する

自分たちが組織の発展に寄与していると感じさせるようにする

●メンバー一人ひとりに「参画の機会」を積極的に与えるようにしている

●チーム目標設定にメンバーの意向や意欲を反映させている

いままでのやり方を当たり前とせず,たえずより上を目指した組織風土づくりをしている

自己革新につとめている

常に自分自身が変革を目指し,顧客に対する価値創造を実践している

●自分自身の能力向上とスキルアップに余念がない
●会社提供の研修機会だけでなく,自ら自発的に自己啓発につとめている
●他社や異業種との情報交換や交流の機会を積極的に作っている

メンバーへの配慮をしている

メンバーからの信頼を得るように努力している

●メンバーが,一人一人を大切にしてくれている,各自の成長と生活の向上を考えてくれていると感じてもらえるような心配りをしている
●各自の成長目標を明確にし,それを実現できるよう,メンバーの意思や意欲をきちんと聞き取っている

お互いのレベルアップを図る

メンバーの相互にライバル意識を持ち競い合っている

●一人一人に自らを高め,向上させるための機会を設けている

●各自が,「もっと良いものを」「もっといい仕事を」と要求しあい,チームの仕事の質,人間としての質をレベルアップしようとしている

迅速化を心がけている

効率化、スピードアップのための工夫を絶えずしている

●メンバーのアイデアや発想が「チーム全体の革新や改善」に反映される
●自らのコストを意識して,効率化をはかっている
●時間はコストであることを意識し,すべてに速くを心がけている
●いつも「スピードアップするかの工夫」をしている

仕事に興奮と感動を覚えるように演出している

仕事の中に,「ヤッタ!」と感じられる組織づくりを目指す

●失敗をおそれず,自分のアイデアを試すチャンスを与えている
●緊張を楽しむゆとりを,意識的に醸成している
●絶えずチーム目標にチャレンジする課題を織り込んでいる
●積極的な起業家精神,実験精神を奨励している

チーム内のコミュニケーションの機会がフォーマル、インフォーマルに設けられ、それぞれの意見がチームに反映するようにしている 自らのトップダウンによるリーダーシップを心がける ●メンバーからのボトムアップの機会を増やし,その実現にも力を貸すと同時に,自らのリーダーシップで事態を一丸となって引っ張っていくようにもしている
チーム全体での盛り上がりをはかろうとしている

●チームに関わる、全社、他チーム、他部署の情報は共有化されている
●各自の仕事の進め方,やり方に自由度を高め,それぞれの自由な発想を活かせる領域を広げるようにしている

チーム内がフランクな雰囲気にある

●どんな「意見も自由に言える」
●どんな工夫も、目標達成のために自主判断で試みることができる
●上位者に直接提案や発案をすることを奨励している

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リーダーシップ・目次

リーダーシップ1

リーダーシップ12

リーダーシップ 2

リーダーシップ13

リーダーシップ3

リーダーシップ14

リーダーシップ4

リーダーシップ15
リーダーシップ5 リーダーシップ16
リーダーシップ リーダーシップ17
リーダーシップ7 リーダーシップ18
リーダーシップ8 リーダーシップ21
リーダーシップ9 リーダーシップ22
リーダーシップ10 リーダーシップ23
リーダーシップ11 リーダーシップ24

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