人情は気まぐれだ。それによってプランそのものが反故にされたのではたまったものではない。ここで問題にしたいのは,リーダーの目標実現力だ。目的達成のために計画がある。実現できない計画は計画ではないし,そんな計画を立てるリーダーにチームを率いる資格はない。
【プランニングの構造】 実際の場面で準拠すべきリーダーシップの行動基準には,〈要望性〉〈共感性〉〈伝達性〉〈信頼性〉の4つがある。〈要望性〉は旗振り機能に伴う基準であり,〈共感性〉は,盛り上げ基準に伴う基準となる。それに,〈伝達性〉〈信頼性〉の2つの基準が,現実の場面では,必要となる。 〈要望性〉とは,上に立つものが,そのチームの目的(旗幟)を達成するために何をするかという観点から,メンバーにその役割に応じた行動を求めることである。たとえば,高い目標を要求したり,その結果をチェックしたり,目標達成のために最後まで諦めずにチャレンジさせる,たえざる工夫・努力を求めたりする等々。リーダーであれば,当然,そのチームの目的達成にとって何が必要かを判断し,そのために必要な手段として,メンバーに何をしてほしいか,という要望をもっていなくてはならない。もし,リーダーに要望がないとすれば,それはチームとしての目的意識(何を目指すのか)を自覚していないということである。 〈共感性〉とは,リーダーがメンバーに「こうしてほしい」というさまざまな要望をもつなら,メンバーもまた自分に対して同じようにさまざまな要望をもっているに違いないと,相手と同じ立場に立って感じ,考えることである。このために必要なのは,聞く能力である。 聞くとは受け身ではない。一般に,聞くには,「聴く」と「訊く」がある。訊くとは,質問力である。その人の問いの力,とはその人がどれだけ幅広い問題意識を持っているかの指標である。部下についても同じである。どれだけの関心と問題意識をもって,部下を見ているかが,その訊き方でわかる。訊かれるほうには,わかるものである。 〈伝達性〉とは,「知らせる」機能である。業務を進めていく上で,必要な情報,技術等をきちんと部下に伝え,それぞれの役割・位置づけを明確にすることである。会社方針,自部署の方針,自分の考え,方針をきちんと明示することである。それによって,部下は,自分の仕事の位置づけ,意義をひとつひとつ確認し,意味づけることが可能になる。 〈信頼性〉とは,集団を固め,必要なときは,直ちに措置がとれるリーダーシップの要である。 リーダーの有能性とは,メンバーの立場から見たら,このリーダーならついていって大丈夫という「頼りがい」,上位者の立場から見たら,この人物になら託しても大丈夫と思わせる「頼もしさ」,同僚の立場から見たら,この人となら手を組めると思わせる「確実さ」,これが信頼性である。この対メンバー,対上位者,対同僚の三者は,使い分けのできるものではなく,どれかひとつが欠ければ,〈信頼性〉の崩壊につながるものである。 〈信頼性〉を支えるものに,2つがある。有能さと誠実さである。 リーダーとしての有能さとは,意思決定者(あるいは決断者)としての有能さである。リーダーとしての評価は,専門知識や分析力の切れや人間関係の達人といった点よりも,最適のタイミングで,必要な意思決定ができるかどうか,である。リーダーへの〈信頼性〉は,その人と意見や考え方が一致することではない。集団の中で,全員一致ということはありえない。メンバーの意見との一致ではなく,たとえば,メンバーに,細部に異論があっても,「自分の意見は十分に伝えた。いつも意見は聴いてくれている(共感性)人だから,自分の意見を踏まえた上で,そう決定したのだろう,いままで意見の不一致もあったが,この人の決定は,信をおくに足りた,おそらく今回も結果的に正しいだろう」と思わせるものがあるかどうか,である。 リーダーとしての誠実さとは,意図してかどうかではなく,結果としてメンバーとの口約束を裏切る,たとえば,自分個人としてはそうするつもりだったが,上部方針で押し切られた等々のカタチになる行動をしてはならない。いい顔をしたい,嫌われたくない,喜ばしたい等々は人の子としての人情ではある。しかし,リーダーは多く「(〜長という)肩書」の影響力のあることを忘れてはならない。「綸言(りんげん)汗の如し」(君主の言は一旦口からでたら取り返しはきかない)である。 こうしたリーダーの信頼のバックボーンとなるのは,言葉である。リーダーシップのブラックボックスとなっているが,言葉に力のないリーダーシップは機能しない。言葉の力は,2つである。指示の明確さと,自己表現力である。リーダーが言葉を発するのは,みずからの意思をキチンと伝えるためである。いくら指示が明確でも,意思のない言葉に力はない。意思の力とは,自己確信である。
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