いま情報があふれている。しかし情報を集めるのも,分析するのも目的ではない。そこから何かを読み取らなければ意味がない。情報とは,差異(ちがい)を生む差異である,という。わずかな変化やゆらぎを読み取ることだ。それによって,現実の趨勢をつかんだり,現実を動かすヒントをつかんだり,新たな解決や実現の突破口を見つける。その読みを仮説という。仮説とは,仮の説明概念,あるいは仮の読解概念と呼んでおく。同じ情報をみていても,人とは違う読みをすることで,一歩か半歩先へ進める。そういう未知の変化を読み取る力,それが仮説力である。仮説力のための基本マインドと基本スキルを,実習を通して身につけて戴きます。
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情報を読み解くには,まずは情報とは何か,どんな基本構造をもっているのかを理解する
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膨大な情報をどう分析し,そこから何を読み込んだらいいのか〜情報分析のための基本スキル
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見つけた筋道・意味をどう仮説にまとめればいいのか〜情報読解のための仮説力のスキル
等々,日常必要な場面に応じた仮説力を学べるプランニングにウエイトをおきます。
「答は自分の中にある」がモットーです。自分の中に,答もアイデアも見つけるのでなければ,意味がありません。そのために,研修は,自己点検→相互点検→全体点検の基本ステップで進めます。基本的な仮説力のステップを身に付けて戴くことを主眼に,
@情報を読み,それを分析するプロセスを実践致します。
A情報を読み込む鍵は,「多角的な問いをどう立てるか」と「仮説をもってどう問題の核心に迫る情報を集約するか」の2つです。そこは,新聞記事を素材に,どこまで深められるかを実習して戴きます。
時間 |
内容 |
進め方 |
9:00
10:30 |
T・情報力と仮説力の基本スキル
集めた情報をただつなげただけでは読み取ったことにはならない。それには,
●情報の構造と構成を理解し
●情報の構造と構成を崩し構成しなおし
●情報の構成を組み直す
必要がある。 |
●情報はデータに意味と目的を加えたものである。とすれば,その意味と目的を崩さなければ,情報をただ受動的に受けとめただけだ。情報の間に,もっともらしい文脈,本当らしい意味のつながりをそのまま仮説にするのなら,単なる状況説明,文意の解説にすぎない。仮説を立てるには,文意の背景に,何かを読み取るほかはない。それを支えるのはその人の問題意識である。
《使用するツール・スキル》
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
情報は,ことば(数値も含めたコード情報)と状況・文脈(ニュアンスといったモード情報)がセットになっている。それが意味と目的を加えたデータという意味である。それには,その人が受けとめた場面や出来事を意味に置き換えなくてならない。そういう情報から仮説をたてるとは,そこに別の意味や目的を読み取ることだ。文脈に別のコードを当てはめたり,コードに別の文脈をあてはめたりすることになる。
だから,フレーズや数値だけでは仮説にならない。それはコード情報にすぎない。それに,独特のピンポイントなシチュエーションが加わってはじめて,リアリティができる。その両者のセットを見つけ出さなくてはならない。
情報(群)から読み取った仮説は,「仮の説明概念」あるいは「仮の読解概念」であり,いまは起きていない,あるいは見えていない現実の向こう(底流や未来)に微妙な変化や揺らぎ見抜いたものである。それによって,現実の趨勢をつかんだり,現実を動かすヒントをつかんだり,新たな解決や実現の突破口を見つける。しかしそれはあくまで仮に見つけたものでしかないから,検証・実証されるまでは「思いつき」や「空想」と変わらない。
時間 |
内容 |
進め方 |
10:30
12:00 |
U・情報の構造をどう読み解くか
《講義》
「情報分析のスキル」
《実習》
「情報を掘り下げる
〜情報の崩し方・掘り下げ方」
個人研究
↓
グループ研究
↓
発表
↓
講評/コメント |
●情報の分解,分析とは何をすることかを,与えられた情報の断片からどれだけの幅と奥行きを読み取ろうとするかということを通して実習して戴く。
具体的には,@与えられた新聞記事から,どれだけ判断と事実(データ)を区分し,そこから読めるのは何かを抽出する,Aそこに隠された「問題」を洗い出すために,どういう情報が必要なのかを多角的に検討し,どういう問いの立て方(設問の仕方)をするのか,を実習して戴く。
《使用するツール・スキル》
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ワークシート
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
情報には構造と構成がある。それを理解しないと,情報にしてやられる。発信者の思う壺である。
情報は,ことば(数値も含めたコー情報ド)とニュアンス(状況・文脈などのモード情報)で構成されている。言語化されるには,その人が受けとめた場面や出来事を意味に置き換えなくては言語化されない。しかしその言語を受けとめたものは,その人の記憶(リソース)に基づいて受けとめる。その意味の背後に,その人のエピソード記憶や手続き記憶に基づいてイメージを描く。しかしその意図を前提にする限り,発信者の想定する掌の中で,読んでいるだけだ。
コード情報であれ,モード情報であれ,情報になるためには,発信者によって向きが与えられる。向きがなければ情報にならない。どんな場合も,出来事だけでは情報にはならない。その情報を発信してはじめて情報になる。そのとき,情報は,その人がどういう位置にいて,どんな経験と知識をもっているかによって,情報は,再構成される。つまり,“情報”は発信者のパースペクティブ(私的視点からのものの見方)をもっている。発信された「事実」は私的パースペクティブに包装されている(事実は判断という覆いの入子になっている)。これが情報の構造である
だから,黙って情報を受け止めれば,情報のもつ向きに従う読みしかできない。それを崩さなければ分析したことにはならない。それは受け手側がどれだけ問いを幅広く,奥行き深く立てられるかに左右される。
時間 |
内容 |
進め方 |
13:00
17:00 |
V・情報から何を読み取るか 《講義》
「仮説のスキル〜情報の加工と編集」
《実習》
「情報から仮説をたてる
〜何をすべきかを読み解く」
個人研究
↓
グループ研究
↓
発表
↓
講評/コメント |
●情報からどう意味やアイデアを読み取るかを実習する。具体的には,5〜6種の新聞,白書を素材に,そこから,意味と仮説をつくる実習をする。ここでは,与えられたデータからどんな意味を汲み上げるかを試みる。読み取った意味や仮説はあくまで,擬似的な世界像,そうであるかもしれない現実でしかない。それが妥当かどうか,本当に何かが読み解けるキーワードなのかは,現場で検証しなくてはならないが,ここでは仮説づくりまでをチャレンジする。
《使用するツール・スキル》
ブレインストーミング
ワークシート |
【プロセスの狙い】
新たな何かのアイデアや仮説をつくりあげるには,ただ情報を集め,つなぐだけではなく,集めた情報から「何を読むか」「どれを選択してどれを捨てるか」「そこで何を優先させていくか」という情報の読解を通して,「何をすべきなのか」「何が見通せるか」を見つけなくてはならない。そこで読み取ったものを,仮説(仮の説明概念)と呼ぶ。そうした仮説をまとめるには,現状への問い直し(このままでいいのか)の強さ,それを何とかしたいという強い意欲(思い),何とかならないかと多角的に検討できる発想の幅と奥行等々にあるが,そうした思い入れの強さだけでは,独りよがり(勝手読み)に終わる危険性がある。自分の仮説(読み)を客観的な批評に耐えられるカタチ(モノ)にしなくては仮説づくりは終らならない。仮説を立てるとは,ものを見る視野に,一定の窓(枠)を創ることだ。それを通して,現実を一定のパースペクティブ(視界)に切り取る。そういう見方(方向と領域)でとらえたことによって,どれだけ新しい現実が見えるのか,新しい可能性が掘り出せるのか,である。それが,“仮説の説得力”である。つまり,仮説は,「確かにそうなっている」「それで状況が突破できる」「それなら実現できる」「それで説明できる」等々の現実性を根拠づけて,初めて,仮説の描いた“パースペクティブ”の確からしさは,現実に質されて,“説得力”が確認(実証)されたのである。その部分はまた別の,演繹的な検証を必要とする。