情報とは,データに意味と目的を加えたものである,という。情報を集めて知りたいのは,(分からないといった)不確実性を解消したいからなのか,新たな意味を見つけたいからなのか。前者は過去志向なのに対して,後者は未来志向である。本当にいま必要なのは,未来の読みだろう。情報を,別の定義では,差異(ちがい)を生む差異である,という。差異はほんのわずかなひびかもしれない。情報力で大事なのは,何かを確かめることではなく,未知の違和感を見つけることだ。それを疑問と呼んでも,好奇心と呼んでもいい。本研修は,そういう疑問を洗い出すことの未知の体験をしていただくのが主眼である。
以下の基本マインドと基本スキルを,実習を通して身につけて戴きます。
・問題意識をつけるには,自分の役割とその目的を自覚することからはじまる
・
情報を分析するためには,まずは考える力,発想する力,現実を見る力を必要とする
・
膨大な情報をどう分析し,そこから何を読み込んだらいいのか〜情報分析のための質問スキル
・
見つけた筋道・意味や仮説をどう検証していけばいいのか〜仮説検証のための仮説力のスキル
等々,日常必要な場面に応じた情報力を学べるプランニングにウエイトをおきます。研修においては,
@情報の分析と,読み方のためのスキル〜情報分析力
A情報の読み込みによる仮説実証するためのスキル〜検証と確認の仮説力
を,実習を通して学んでいただきます。
「答は自分の中にある」がモットーです。自分の中に,答もアイデアも見つけるのでなければ,意味がありません。そのために,研修は,自己点検→相互点検→全体点検の基本ステップで進めます。
基本的な情報力のステップを身に付けて戴くことを主眼に,
@《問題意識の掘り下げ》→《問題の核心を探り出す》という問題意識を高めるプロセスを実践致します。
A「問題」は誰にも見えている限り,「問題」というよりそれを放置する無為無策や無責任という別の「問題」でしかない。「問題」は,こちらが問わない(問題にしない)限り「問題ではない」(問題にならない)。その「問い」の掘り下げ方の鍵は,「多角的な問いをどう立てるか」と「仮説をもってどう問題の核心に迫る情報を集約するか」の2つです。そこは,新聞記事を素材に,どこまで深められるかを実習して戴きます。
《第1日》
問題意識を研ぎ澄ます
時間 |
内容 |
進め方 |
9:00
10:30 |
T・まず問題意識からはじまる〜時代に取り残されないためには何をしなくてはいけないか
環境の変化の中で,変化に取り残されないために必要なのは,現状への,「このままでいいのか」という問題意識である。それが,
・いままで通りではない
・いまのままではない
・過去の延長線上ではない
やり方への変革の第一歩である。その問題意識が,情報収集,分析,発見においても重要な基本スキルとなる。いま求められているのは問題意識をどう研ぎ澄ますかである。
|
●まず,求められる情報力とは何かを刷り合わせて,必要な情報力についての土俵を共有化する作業からはじめる。その解き,必要なものが,自分の問題意識とそれを深めるための人とのキャッチボールであることを確認する作業にもなっている。
●研修は,基本的に,ブレインストーミングを通して相互に意見交換してもらい,それをもとに全体討議討議をしていくスタイルをとる。
《使用するもの》
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
情報収集・分析・発見の基本力量は,漫然と集め,漠然と整理することではない。こちらに,何を問題とするか,何を問題と感じるかは,何のために,何をしようとしているかによって,決まる。そういう問題意識で,本研修をプログラムしている。つまり,
@情報感度は,まず問題意識が出発点となる。そのためには,「何のために」という問い(それが目的意識であり,それなしには問題意識はない)に鍵があり,それが研修全体を通しての課題である。
A問題意識を掘り下げるためのスキルとして,キャッチボールの重要性を,ブレインストーミングによるウォームアップを通して体験していただく。これもまた,研修全体を通しての課題となる。これは,キャッチボールする力と言ってもいい。
上記を確認して,情報収集,分析,発見についての相互理解の刷り合わせを行い,研修全体の土俵共有化をはかるところからはじめる。
ここでの基本スタンスは,情報力は目的ではないということを確認する。それは,
理解するために,分析するために,解決するために,等々に必要なのであって,あくまでなにかの手段である。まずは各自が何に,どういう必要性があるのかを確認していただく。
時間 |
内容 |
進め方 |
10:30
12:00 |
U・問題意識をどう掘り下げるか@
〜自分の内的リソースの確認からはじめる
固定観念とは,自分の知識と経験そのもののことだ。いままでの経験でものを見るとき,時に,それが新しい事態を見通す妨げになることがある。その点の確認が主体となる。
《実習》
「問題意識掘り起こしの基礎訓練」
《講義》
「ものの見方・もののとらえ方」
〜ものの見える人と見えない人の違いは何か
|
●問題意識の基本は,現状をそのままでよしとせず,「このままでいいのか」「これでいいのか」と,現状を問う力である。しかし人それぞれで,関心の向き方,レベル差がある。それは善し悪しではなく,そのひとのもつ内的リソースの特徴と考える。それを自覚することで,自分と違う人とのキャッチボールに意味が出てくる。
《使用するツール・スキル》
ブレインストーミン
チェックリスト |
【プロセスの狙い】
問題意識を掘り下げる基本スキルは,さまざまな人とのキャッチボールによって,自分の中で,見逃していたポイントや着眼に気づくことである。キャッチボールの重要性を,ブレインストーミングを通して再確認し,それを有効にするスキルを整理していく。情報力はともすると,視野狭窄の筋に入り込む危険がある。それを避けるためには,情報収集・情報分析の筋道を突き放し,相対化する視点がいる。それに有効なのが,キャッチボールである。しかし,それには,人と人との違いを確認しておく,つまり自分の,人と違うリソースを確認しておくことが必要である。ここでは,その簡単な確認をする。それは,自分の物の見方の特徴であり,それを理解することで,それをどう崩す下も,自覚的に考えることができる。その基本は,@自分のリアリティ感のレベル,A自分の視点の特徴,である。それを確認するところからはじめる。
時間 |
内容 |
進め方 |
13:00
14:30 |
V・問題意識をどう掘り下げるかA 〜役割意識・目的意識のないところに問題意識はない
役割意識のないところ問題意識はない。自らのなすべき課題は,組織での自分の位置に求められている目的を果たすために何をすべきかというチェックなくしてはありえない。
・組織の目的・ビジョン
↓それを達成するために
・本年度の目標
↓それを達成するために
・自分の役割は何か
・ご自分に求められている役割とポジショニングを考える
|
●情報感度は問題意識抜きではありえず,問題意識は,役割意識や目的意識抜きではありえない。そこで,自身の役割を,全社の中でのポジションの自覚から始める必要がある。各自の結果をめぐり,全体での討議とキャッチボールを通して,自身の現状と求められる問題意識をチェックする。
《使用するもの》
・ワークシート
目標と役割の明確化
求められる役割行動
・
ツール
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
役割意識なきところに問題意識(何とかならないか)はない。しかし,役割意識は,何のためにそこにいるかという目的意識なしにはありえない。目的意識あってこそ,その役割として実現しようとする自分の目標に意味が見える。目的達成のために自分にどういう役割があり,それにふさわしくどんな目標を立て,それをどうやって達成していくかが自己点検できるためには,自分のポジションは「何をするためにあるのか」という目的の明確化こそが大前提となる。
役割は,公式に求められるものだけではない。それなら,誰がその任についても同じとなる。自分が,その役割を主体的にどう位置づけ,何をしようとするかを,主体的に考える姿勢こそが必要となる。それが明確化されて初めて,環境分析から得られた課題は,自分の役割から,「何ができるか」「何をしなければならないか」が,主体的な課題として,明確化しえる。それこそが,自分に求め,期待されている問題意識である。
時間 |
内容 |
進め方 |
14:30
16:00 |
W・情報収集・分析のスキル 〜情報力への問題意識を刷り合わせる
情報収集・分析における体験を振り返りながら,情報収集・分析での問題点,課題を具体的に明らかにし,全体として,そのために必要な障害をどうクリアするかを考える。具体的な情報力の実践のウォームアップ作業となる。
自己点検
↓
相互点検
↓
全体点検
|
●問題意識を掘り下げる基本スキルは,さまざまな人とのキャッチボールによって,自分の中で,見逃していたポイントや着眼に気づくことである。キャッチボールの重要性を,ブレインストーミングを通して再確認し,それを有効にするスキルを整理していく。
《使用するもの》
・ワークシート
情報収集・分析を振り返って
・
ツール
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
ここでは,情報を収集・分析・発見するプロセスで何がおきるのか,その障害は何か,陥りがちな陥穽は何か,をそれぞれの体験を振り返りながら,具体的に俎上に載せ,それを事例として,情報を扱うときのポイントを確認し,次の実践へのウォームアップとする。
時間 |
内容 |
進め方 |
16:00
17:00 |
X・情報をどう読み解くか
「情報掘り下げのスキル」(注)
〜情報の読みと問題意識〜
《実習》
「問題意識を掘り下げる」
−情報の読み方・掘り下げ方
個人研究
↓
グループ研究
↓
|
●問題意識を掘り下げるとはどういうことかを,与えられた情報の断片からどれだけの幅と奥行きを読み取ろうとするかということを通して実習して戴く。
具体的には,@与えられた新聞記事から,どれだけ判断と事実(データ)を区分し,そこから読めるのは何かを抽出する,Aそこに隠された「問題」を洗い出すために,どういう情報が必要なのかを多角的に検討し,どういう問いの立て方(設問の仕方)をするのか,を実習を通して体得して戴く。
《使用するツール・スキル》
・
ワークシート
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
情報から黙っていて,テーマやルールや原則が見えてくるのではない。そうした一般論はあるものではなく,作り出すないし見つけ出すものだ。こちら側がどれだけ問いを幅広く,奥行き深く立てられるかにかかっているか,その結果どれだけ読みに差が出てくるかを確認するのが狙い。
@ベイトソンの問いのように,こちら側が,どれだけ問題意識を持っているかが出発点である。
A導き出す結論は,読み込みである。ひ帰納法に必要なのは,キーになる情報や,ポイントになる概念を突破口にして,自分なりに“当たり”をつけていく。そのとき役に立つのが,4つのスキルである
【注】“ベイトソンの問い”
「幼い息子がホウレン草を食べるたびにご褒美としてアイスクリームを与える母親がいる。この子供が,
@ホウレン草を好きになるか嫌いになるか,
Aアイスクリームを好きになるか嫌いになるか,
B母親を好きになるか嫌いになるか,
の予測が立つためにはほかにどんな情報が必要か。 |
【第2日】情報を収集・分析する
時間 |
内容 |
進め方 |
9:00
11:00 |
X・情報をどう読み解くか(つづき)
「情報掘り下げのスキル」
《実習》
「問題意識を掘り下げる」(つづき)
−情報の読み方・掘り下げ方
グループ研究
↓
発表
↓
講評/コメント
《講義》
「情報への基本スキル」(注)
|
●問題意識を掘り下げには,ただ自分たちだけの結論を出すだけでなく,他チームがどんなことを考えたのか,その違いを確認する作業も,また重要である。ここでは,発表を通した相互のキャッチボールを,お互いの問題意識掘り下げの場ととらえている。
《使用するツール・スキル》
・
ワークシート
ブレインストーミング |
【プロセスの狙い】
発表を通して,情報掘り下げのポイントとともに,情報の持つ構造を確認することになる。あくまでここでは,情報処理の基本を実践することだが,隠れた狙いは,情報処理のベースとなるグルーピングの基本スキルを確認することになる。グルーピングのポイントは,似たものにではなく,似ていないものにある。情報とは「差異を生む差異である」といわれる。つまり違いの発見である。それにはグルーピングが有効な手法の一つである。
【注】情報の分析・読解の基本スキルには,「分ける」「グルーピング」「組み合わせ」「類比(推)」がある。
●「分ける」は,分解してみる,細分化してみる,新たに分けてみる,分け方を変えてみる等々で,新しいカタチ(つながり)を見つける
●「グルーピングする」は,くくり直す,束ね方を変える,一緒にしていたものを除く,区分の基準を変える,一緒でないものを一緒にする等々で,新しいカタチ(つながり)を見つける
●「組み合わせる」は,異質の分野のもの,異なるレベルのもの組み合わせる等々で,新しいカタチ(つながり)を見つける
●「アナロジー(類比/類推する)」は,似たもの,異分野の例になぞらえる,参照にする等々で,新しいカタチ(つながり)を見つける
時間 |
内容 |
進め方 |
11:00
17:00 |
Y・情報から何を読み取るか
《実習》
「情報の探索と読解〜必要情報の探索・分析によって何をすべきかを読み解く
個人研究
↓
グループ研究
↓
発表
↓
講評/コメント
《講義》
「仮説検証のスキル〜情報の加工と編集」
|
●情報からどう意味やアイデアを読み取るかを実習する。具体的には,5〜6種の新聞,白書を素材に,そこから,意味と仮説をつくる実習をする。ここでは,与えられたデータからどんな意味を汲み上げるかを試みる。読み取った意味や仮説はあくまで,擬似的な世界像,そうであるかもしれない現実でしかない。それが妥当かどうか,本当に何かが読み解けるキーワードなのかは,現場で検証しなくてはならないが,ここでは仮説づくりまでをチャレンジする。
《使用するツール・スキル》
ブレインストーミング
ワークシート |
【プロセスの狙い】
新たな何かのアイデアや仮説をつくりあげるには,ただ情報を集め,つなぐだけではなく,集めた情報から「何を読むか」「どれを選択してどれを捨てるか」「そこで何を優先させていくか」という情報の読解を通して,「何をすべきなのか」「何が見通せるか」を見つけなくてはならない。そこで読み取ったものを,仮説(仮の説明概念)と呼ぶ。そうした仮説をまとめるには,現状への問い直し(このままでいいのか)の強さ,それを何とかしたいという強い意欲(思い),何とかならないかと多角的に検討できる発想の幅と奥行等々にあるが,そうした思い入れの強さだけでは,独りよがり(勝手読み)に終わる危険性がある。自分の仮説(読み)を客観的な批評に耐えられるカタチ(モノ)にしなくては仮説づくりは終らならない。仮説を立てるとは,ものを見る視野に,一定の窓(枠)を創ることだ。それを通して,現実を一定のパースペクティブ(視界)に切り取る。そういう見方(方向と領域)でとらえたことによって,どれだけ新しい現実が見えるのか,新しい可能性が掘り出せるのか,である。それが,“仮説の説得力”である。つまり,仮説は,「確かにそうなっている」「それで状況が突破できる」「それなら実現できる」「それで説明できる」等々の現実性を根拠づけて,初めて,仮説の描いた“パースペクティブ”の確からしさは,現実に質されて,“説得力”が確認(実証)されたのである。その部分はまた別の,演繹的な検証を必要とする。
※プログラムは途中で時間の進行を変更する場合がある
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