発想力とは,“何とかすること”です。その出発点は,現状に対しての,このままでいいのかという“問題意識”です。いま求められているのは,いままで通りに「こなす」ことではなく,いままでとは異なる事態を「何とかする」ことです。その“何とかする”力こそ,発想力そのものです。 発想力,あるいは創造的に考えることは目的ではない。発想は,目的実現(達成)のための手段に過ぎない。今まで通りに,今のままで,過去の延長線上では,目的が達成できず,新たな工夫や創意が求められるからこそ,今日,発想力が求められる。 自身の仕事,職場に対する問題意識のないところに発想力は必要ではないということを前提に,
の基本マインドと基本スキルを,実習を通して身につけて戴きます。
◇発想力研修は次の3つのステップを踏みます。 @「新しさ」とは変化である。現状を変えることである。それには,皆が見過ごしている,気づかない,当たり前としている等々,発見する問題が前例にとらわれない,「新しい」ものでなくてはなりません。 A「発見した問題」は,新しいカタチにまとめなくてはなりません。そのとき,ありふれたカタチやいままでの前例や慣習にしたがっていたのでは問題の「新しさ」が消えるからです。 B「解決のカタチ」の実現は確実か。どこまで実現可能かの具体化を検討致します。 ◇自分一人の発想力があればいいのではない。チームとしての発想力を高めるためには,いかに,メンバーの問題意識を見逃さず,チームとしての問題意識とし,チームとしての発想につなげていくかが求められます。職場で発想力が必要な理由はそこにある。研修では,そこにも力点を置きます。
「答は自分の中にある」がモットーです。自分の中に,答もアイデアも見つけるのでなければ,意味がありません。そのために,研修は,自己点検→相互点検→全体点検の基本ステップで進めます。 基本的な発想力のステップを身に付けて戴くことを主眼に, @《問題意識の掘り下げ》→《問題の核心を探り出す》という問題意識を高めるプロセスを実践致します。 A「問題」は誰にも見えている限り,「問題」というよりそれを放置する無為無策や無責任という別の「問題」でしかない。「問題」は,こちらが問わない(問題にしない)限り「問題ではない」(問題にならない)。その「問い」の掘り下げ方の鍵は,「多角的な問いをどう立てるか」と「仮説をもってどう問題の核心に迫る情報を集約するか」の2つです。そこは,新聞記事を素材に,どこまで深められるかを実習して戴きます。 B掘下げた「問題」をどう解決のカタチにもっていくか,その進め方は,
【第1日】問題意識を掘り下げるスキル
【プロセスの狙い】 ◇ここでの基本スタンスは, @まず問題意識が出発点となる。そのためには,「何のために」という問い(それが目的意識であり,それなしには問題意識はない)に鍵があり,それが研修全体を通しての宿題でもあることを,冒頭に確認する。 A発想というものへの先入観をぬぐうことが主眼である。発想は何か新しいことを発案することである。しかし,それは目的化されてはならない。何のために,誰にとって新しくなくてはならないのか。それによって,何が解決されるのか。実務で求められるのは,ここである。 B問題意識を掘り下げるためのスキルとして,キャッチボールの重要性を,ブレインストーミングによるウォームアップを通して体験していただく。これもまた,研修全体を通しての課題となる。 C固定観念とは,自分の知識と経験そのもののことだ。いままでの経験でものを見るとき,時に,それが新しい事態を見通す妨げになることがある。その点の確認が主体となる。 ◇ウォームアップを通して,発想力のベースとなる基本スキルを順次確認する。 @具体化の4原則 ・具体例で考える ・シリーズで考える ・見たいように見る ・5W1Hで考える ・視点を変える ・カタチを変える ・意味を変える ・条件を変える 以上のスキルで,発想の質と量を確保できることを,ウォームアップを通して,意識的な試みによって,確認して戴く。
【プロセスの狙い】 ◇問題はあるものではなく,問題にするものだ。こちら側がどれだけ問いを幅広く,奥行き深く立てられるかにかかっているか,その結果どれだけ具体的な分析に差が出てくるかを確認するのが狙い。 @ベイトソンの問いのように,こちら側が,どれだけ問題意識を持っているかが出発点である。 A第2は,「どこが問題になるか」「どこがつぼになりそうか」「ここがあやしい」といった仮説が必要となる。自分なりに“当たり”をつけなくては情報の当たりもつかない。 (注)“ベイトソンの問い” 幼い息子がホウレン草を食べるたびにご褒美としてアイスクリームを与える母親がいる。この子供が, @ホウレン草を好きになるか嫌いになるか, Aアイスクリームを好きになるか嫌いになるか, B母親を好きになるか嫌いになるか, の予測が立つためにはほかにどんな情報が必要か。 (注)情報の掘り下げのスキルとしては,アイデアづくりの4原則*「分ける」「グルーピング」「組み合わせ」「類比(推)」が使える。 (注)アイデアづくりの4原則には,
があり,これをベースに,発想スキルが形成されている。
【プロセスの狙い】 ここでは,アイデアづくりのスキルの中で,最も効果的なのに,最も使いにくい,アナロジーを,簡便に使いこなすために,スキルを実習する。あくまで,アナロジーの使い勝手を味わっていただくのを主眼とする。 あわせて,このスキルの中には,常識や当たり前をどう崩すかのプロセスも入っているので,いわゆるアイデアづくりのウォームアップも兼ねている。 【第2日】アイデアをカタチにするスキル
【プロセスの狙い】 「欠点列挙法」は,「欠点」という切り口で,あえて「問題」化し,「問題」を掘り起こす“問題解決型アプローチ”(注)の技法。この技法は,改良型の技法されるが,そう決めつけると先入観になる。徹底的に問題をクリアしようとすると,本来のモノの枠組みを超えないと解決できないことがある。そのとき,元のカタチにこだわれば,それに収まってしまうが,それを打破しようとすると,改良型の発想を超えることになる。 この技法は,情報集約→原因追及→解決案の発案,という問題解決の基本ステップを踏んで,情報を処理していくため,情報をカード化して,集約していく技法や,その集約したものにウエイトづけをしていくスキルを含んでおり,「欠点」を別の着眼点(例えば,希望点,特性等)に代えることで,問題解決のさまざまな側面に応用できる基本的なスキルである。 (注)発想技法は,そのニーズに応じて,“手直し型”,“組み替え型”,“理想設定型”に整理できる。 @“手直し型(現状分析型)アプローチ” いまあるものを改善・改良/応用・転用するための発想スキル。いわゆる“問題解決型アプローチ”である。いまあるものの欠点,問題点等を,個別に改善したり,全体を組み合わせ直したりする。この場合,既存のものの改良だけでなく,使用範囲を広げる(生物顕微鏡から工具顕微鏡へ),別の市場への応用(赤ん坊用紙おむつから老人用へ)等使い方や使用対象を代えることも含む。 ● 「欠点列挙法」「希望点列挙法」「特性(属性)列挙法」「チェックリスト」「特性要因図」 A“組み替え型(機能分析型)アプローチ” いまあるものを分解・組み替えて新しいものに創り直すための発想スキル。いわば“事業開発型アプローチ”である。いまあるものやシステム・制度を,そのカタチ・色,機能・働き・役割,属性,構造や仕組みの要素といった最小区分(単位)に分解し,@その機能の代替方法を検討したり,A機能や要素の新しい組み合わせから別なものに転換したり,B機能や要素を組み替えたりしながら,全体の構成を組み直していく。 ●「関連樹木法」「形態(要素)分析法」「マトリックス法」「KJ法」「親和図法」「クロス法」「特性列挙法」「if法」「形態(要素)分析法」「NM法」「アナロジー発想法」「if法」「焦点法」「カタログ法」「一対連関法」「入出法」「条件転換法」 B“理想設定型(デザイン設計型)アプローチ” まだない(ほしいもの)をものをカタチあるものにするための発想スキル。これは,いわば,“企画型アプローチ”である。現実にはまだない理想や夢想,願望といった「したいこと」「できるといいこと」「なれるといいこと」を具体的に,「理想形」としてカタチにし,その実現方法を検討しようとするもの。そのために,理想形に必要な機能・働きを列挙し,具体的に,現実化の可否を検討していく。 ●「仮想状況設定法」「シネクティクス法」「擬物化法」「ワークデザイン」「DAX」「スクランブル法」「if法」「形態(要素)分析法」 (注)アイデアプロファイルシートは,アイデア自体をレビューするためのシートである。その意図(目的),何をするものか(テーマ,使い方)を明確にし,イメージするアイデアの骨格をまとめ,市場の大きさ,可能性の見込まれるユーザー像,技術的な問題,リスク,流通(サービス提供)システムとの適合性等々をチェックする。
【プロセスの狙い】 目的・手段分析は,VEの機能系統図のように,目的実現(のための目標達成)に必要な手段(何をすればいいのか)を,ブレイクダウンし,具体化していくものですが,一方通行ではなく,両方向にチェックしながら,それで本当に達成できるかを考えていく。 双方向にとは, ・それで手段は十分洗い出せているか ・その手段があれば,目的が達成できるのかを問い直し,直接の目的−手段の関係をチェックする ・その手段の目的は何かを問い直して,直接の目的−手段の関係をチェックする
たとえば,「その手段がない(やめる)と困ることは何か」「それから期待できること(何が起こること)は何か」「それは何のために働いているか」「それによってどういう結果になるか」「その手段のある理由は何か」等々,目的―手段の相互関係をチェックする。 ここからは,ふたつにわかれる。 @その手段を具体化して,それでアイデアやテーマが実現させることを徹底して考えていく Aそうした手段分析を通して,アイデア発想のベースとして生かしていく Aの場合に,アイデアづくりの4原則づくりが生きる。は,次の4つです。「分ける」「グルーピングする」「組み合わせる」「アナロジー(類比/類推する)」を,利用すると,下図のようなイメージになる。アナロジーは,同じ目的で,成功しているものをヒントに発想につなげようとしている。 【第3日】アイデアを具体化するスキル
【プロセスの狙い】 発想技法をただ修得しても意味はない。発想技法ではなく,発想技法のブラックボックスになっている部分,つまり,幾らステップをたどっても,誰もが発想技法を使いこなせるわけではなく,そこには使いこなしのノウハウがあるということが肝心である。発想技法のステップには出てこないところに,ノウハウがある。技法は,そのノウハウを表現したものにすぎない。 そのあたりを中心に,全体で,「どうすれば発想技法を使いこなせるか」ではなく,「どうすれば発想力を高められるか」のノウハウを確認して,まとめたい。
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