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ケースライティングのスキル2

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ケースライティングに求められること
問題の構造化についての再確認
ケースライティングの前提
どう事実を集めるか
どういう事実が使えるか
どう事実をつなげていくか
事実をどうケースにまとめるか
どう書いていけばいいか

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どう事実をつなげていくか

集めた事実群を,どうつなげていくのか。つなげるというのは,
@事実群の間で,序列をつける
A目的からの取捨選択
B事実群の順序(起きた順,発見された順など)
てすが,ポイントは,第一に,誰の視点からかの,パースペクティブを決め,第二に,ウエイトづけをすることにつきます。

ウエイトづけには,

  1. 事実の求心化 事実をテーマで括って,順次,当初テーマへと集約していく

  2. 事実の遠心化 事実を因果関係で,中心問題から同心円で拡大していく

の2つがありますので,それを念頭に,事実の整序には,次のようなカタチがありえます。

@事実を括りながら,テーマのブレイクダウンに対応させながら,テーマへと集約していく
A時系列に従い,単純に生起した順に並べる
B因果関係に従い,並べていく
C各事実を空間的に整序し,場所的な関連性をつける
D出来事の新規性,面白さを中心において,配列してみる

この作業は,ある意味で,事実の作り出す空間をイメージする作業です。このままでも,ケースとしてのまとまりができてしまう場合もありますが,ケースとしての“結構”にまとめるには,もうひと工夫必要となります。

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事実をどうケースにまとめるか

ひとつのケースに,“結構”をまとめるとは,各事実をケースという全体の地図の中に,どう役割づけ,どう位置づけて,布置していくかということです。まとめ方の要件は,次のようになります。

@時間の整序,空間(場所)の設定が明確であること
A全体の事実関係,因果関係が一貫していること
B全体を制御する視点(語り口)が整合性をもっていること

最も重要なのは,Bです。問題のパースペクティブを描くためには,その要となる目撃者(当事者でもいいが)が不可欠です。事実とは,誰かに目撃されない限り,存在しないのです。

したがって,その事実が,誰の目から,どれだけの距離をもって(当事者,相手,関係者,第三者,無関係な目撃者等々),どう見られているか,です。ケース分析の「問題の構造化」を誘うに足る事実が必要だ,ということです。

この「誰」を,便宜的に,語り手と読んでおきますが,たとえば,「G課長が,S子を注意した」という事実を,どう取り上げるか,という問題に関わるのです。「S子は,G課長に注意された」とするか,「G課長は,S子を注意した」とするかで,視点の位置は変わります。その出来事を,誰が,誰の立場で,報告するかという問題でもあります。

《ライター>語り手>当事者》

些細なことのようですが,次の二つを比べてください。

「G課長は,S子を注意した。これだけ言えば,わかるだろうとG課長は思い,S子は,課長はいつも口先ばかりだから,言っていることとやっていることが違う,と思った」

「G課長は,S子を注意した。これだけ言えば,わかるだろうとG課長は思い,うつむいているS子の様子をうかがった」

前者が,事実を俯瞰する“神の視点”だとすると,後者は,G課長の目線に視点を固定した,“当事者の視点”ということになります。

確かに,前者は,すべての事実と心の動きをくまなく見ることができますが,これは現実の問題解決当事者の視点とは異なります。誰のパースペクティブで問題を捉えるかが,問題解決の第1歩゜だとすると,後者の偏った視点の方が,現実のわれわれの情報収集,目撃のあり方に近いはずです。後者の方が,その視点からの問題解決へとつながりやすいことは事実でしょう。しかし,同時に,その視点の限界を意識していないと,誤ったアプローチに陥る可能性はありますが。

この他の視点としては,

S子=私,G課長=私という視点
S子の視点
G課長やS子の同僚の視点

等々もありえましよう。要は,その語り手が決まることで,事実のパースペクティブ(視界)が決まるということなのです。たとえば,G課長の視点で描くとすると,すべての事実,情報は,G課長の目や耳を通したものであり,G課長の推測や感情のスクリーンを通しているということです。G課長の言動そのものも,そう本人が言っている通りかどうかは,留保した上でのことになります。

さらに,集めた事実も,すべてが,G課長を通した,間接情報に変わった形で,配置されるということになります。

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どう書いていけばいいか

さて,こうした,予備的な作業のあと,全体をどうまとめていくか,ですが,まとめ方のパターンは,2つです。

@まず全体の流れを構想する→事実をそれにあわせて配置する
A事実のつなぎ方を工夫する→全体の構想が見えてくる

後者は,事実群のむ整理,関係づけの中から,全体を見つけていくのですが,前者は,皮袋を先に立てて,それにあわせて,事実を配置するということです。

ここでは,前者を例に,考えてみます。これは,ケースの目的,期待成果から,ケースの“結構”を考えていこうというものです。

たとえば,問題のタイプとしては,

・問題解決型
・課題(目標)設定型
・課題(目標)探求型

の3タイプになりますが,これをもっと噛み砕くと,以下のようにさまざまなパターンを考えることができます。

@突発の緊急事態を前に,どうしていいのかわからなくなる立ち往生型
A混迷した事態に,どうしていいのか考えあぐねている思案投げ首型
Bあんなことをするんではなかった,こうしておけばよかったと思い悩む後悔型
Cあれこれ片っ端から試みる試行錯誤型
Dあれこれ引っ掻き回してますます事態を悪化させてしまう悪あがき型
Eこれだけやったんだから仕方がないという居直り型
Fこれだけやったのにと落ち込む自信喪失型
G最悪の事態なのに,まだあきらめず,何とかしようと,次の一手を考えつづける粘り腰型
Hどうすればもっとうまくいくか,あれこれ考えて考え抜いている思索探求型
I意思決定に必要な情報の不足に悩み,あの手この手で情報収集をはかろうとしている情報探索型
Jあともう一歩で何とかなる,いいアイデアはないかと,やり方の工夫を探す助言支援型
K新しいこと,未経験なことでも,自分の力を過信して突進する猪突猛進型
L己の力をきづかず,臆面もなく自信をひけらかして敬遠される完全浮いている型
M自分は何をしたらいいのかがまったく自覚できていない役割喪失型
Nどうしたらせっとくできるのかがわからず立ち止まっているもっていき方探求型
O知識もあり,理屈はわかっているが,実践がいつも伴わない頭でっかち型
P周りに足を引っ張られて,泥沼に陥っている人間関係不信型
Qチーム内の人間関係が最悪で,目標達成に誰も意欲を示さない葛藤苦闘型
R部下が優秀で,手綱がさばききれず,振り落とされ気味の悍馬に翻弄される騎手型
S上司の思いつきに振り回され,部下からも見放されて鬱状態のストレス圧迫型

無数のパターンがありますが,この方向性を枠組みとして,事実をつなげていくということになります。ちょうど,事実をつなげながら,全体をテーマに集約していくのとは,逆方向からのアプローチなのです。

さて,いずれにしても,最後に,事実を書き上げていくには,

@ひとつの立場からの情報・事実・推測で,
A(語り手の)主観による,偏りとゆがみをもち,
B問題のパースペクティブが不完全である

ことによって,ケースはケースらしくなるのです。そこから,問題のパースペクティブを描き,解決を練っていくためには,

・不足した事実や見えない事実を,ジグソーパズル風につなげられる
・推測可能な情報,伝聞が盛り込まれている
・問題のパースペクティブを描くための骨格となる仕事・人の系に漏れがない

ことが肝心です。ここを最後のチェックポイントとして,ケースを完成させていくことになります。

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ケースライティング研修については,ここをご覧下さい。

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問題解決関連参考文献
ケーススタディ関連参考文献

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