ケースライティングに求められること 集めた事実群を,どうつなげていくのか。つなげるというのは, ウエイトづけには,
の2つがありますので,それを念頭に,事実の整序には,次のようなカタチがありえます。 @事実を括りながら,テーマのブレイクダウンに対応させながら,テーマへと集約していく この作業は,ある意味で,事実の作り出す空間をイメージする作業です。このままでも,ケースとしてのまとまりができてしまう場合もありますが,ケースとしての“結構”にまとめるには,もうひと工夫必要となります。 ひとつのケースに,“結構”をまとめるとは,各事実をケースという全体の地図の中に,どう役割づけ,どう位置づけて,布置していくかということです。まとめ方の要件は,次のようになります。 @時間の整序,空間(場所)の設定が明確であること 最も重要なのは,Bです。問題のパースペクティブを描くためには,その要となる目撃者(当事者でもいいが)が不可欠です。事実とは,誰かに目撃されない限り,存在しないのです。 したがって,その事実が,誰の目から,どれだけの距離をもって(当事者,相手,関係者,第三者,無関係な目撃者等々),どう見られているか,です。ケース分析の「問題の構造化」を誘うに足る事実が必要だ,ということです。 この「誰」を,便宜的に,語り手と読んでおきますが,たとえば,「G課長が,S子を注意した」という事実を,どう取り上げるか,という問題に関わるのです。「S子は,G課長に注意された」とするか,「G課長は,S子を注意した」とするかで,視点の位置は変わります。その出来事を,誰が,誰の立場で,報告するかという問題でもあります。 《ライター>語り手>当事者》 些細なことのようですが,次の二つを比べてください。 「G課長は,S子を注意した。これだけ言えば,わかるだろうとG課長は思い,S子は,課長はいつも口先ばかりだから,言っていることとやっていることが違う,と思った」 「G課長は,S子を注意した。これだけ言えば,わかるだろうとG課長は思い,うつむいているS子の様子をうかがった」 前者が,事実を俯瞰する“神の視点”だとすると,後者は,G課長の目線に視点を固定した,“当事者の視点”ということになります。 確かに,前者は,すべての事実と心の動きをくまなく見ることができますが,これは現実の問題解決当事者の視点とは異なります。誰のパースペクティブで問題を捉えるかが,問題解決の第1歩゜だとすると,後者の偏った視点の方が,現実のわれわれの情報収集,目撃のあり方に近いはずです。後者の方が,その視点からの問題解決へとつながりやすいことは事実でしょう。しかし,同時に,その視点の限界を意識していないと,誤ったアプローチに陥る可能性はありますが。 この他の視点としては, S子=私,G課長=私という視点 等々もありえましよう。要は,その語り手が決まることで,事実のパースペクティブ(視界)が決まるということなのです。たとえば,G課長の視点で描くとすると,すべての事実,情報は,G課長の目や耳を通したものであり,G課長の推測や感情のスクリーンを通しているということです。G課長の言動そのものも,そう本人が言っている通りかどうかは,留保した上でのことになります。 さらに,集めた事実も,すべてが,G課長を通した,間接情報に変わった形で,配置されるということになります。 さて,こうした,予備的な作業のあと,全体をどうまとめていくか,ですが,まとめ方のパターンは,2つです。 @まず全体の流れを構想する→事実をそれにあわせて配置する 後者は,事実群のむ整理,関係づけの中から,全体を見つけていくのですが,前者は,皮袋を先に立てて,それにあわせて,事実を配置するということです。 ここでは,前者を例に,考えてみます。これは,ケースの目的,期待成果から,ケースの“結構”を考えていこうというものです。 たとえば,問題のタイプとしては, ・問題解決型 の3タイプになりますが,これをもっと噛み砕くと,以下のようにさまざまなパターンを考えることができます。
無数のパターンがありますが,この方向性を枠組みとして,事実をつなげていくということになります。ちょうど,事実をつなげながら,全体をテーマに集約していくのとは,逆方向からのアプローチなのです。 さて,いずれにしても,最後に,事実を書き上げていくには, @ひとつの立場からの情報・事実・推測で, ことによって,ケースはケースらしくなるのです。そこから,問題のパースペクティブを描き,解決を練っていくためには, ・不足した事実や見えない事実を,ジグソーパズル風につなげられる ことが肝心です。ここを最後のチェックポイントとして,ケースを完成させていくことになります。
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