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リーダーシップについて・3

自己点検のリーダーシップもしくはジョハリの窓


  出典;マッハ『感覚の分析』(法大出版局)

上図は,マッハの自画像である。寝椅子に横たわる自分が,自身にどう見えるかを示している。マッハはこの奇妙なデッサンを,「自己観察による私」と名づけた。鼻の左側に開けた視界に,肩の突端になびく髭,下方にむかって短縮された遠近法で,胴,肢,足と順次つづいていく……。こう見えるかどうかは,いささか眉唾だが,視界の狭さのアナロジーと見なすと,自分の限界と自分の限界を自覚する自己認知能力の制約といった,ふたつの限界が見えてくる。

一般に,リーダーとしての影響力が強まるほど,「よい情報」は,十倍ぐらいに増幅されて入ってくるが,「悪い情報」は,十分の1ぐらいに縮小して入ってくる。自分についてなら尚更である。しゃべっている通りには自分には聞こえないし,他人に見えているように自分を見ることはできない。自分を見る目を曇らせない「自己認知」の手がかりとして,“ジョハリの窓”が有効である。

“ジョハリの窓”は,「自分にわかっている自分/自分にわかっていない自分」「他人にわかっている部分/他人にわかっていない部分」の4つの窓に分けて自分を考えてみようとする。

パブリック

@(自由の世界)

自分が知っている自分

他人が知っている自分

ブラインド

A(盲目の世界)

自分が知らない自分

他人は知っている自分

プライベイト

B(秘密の世界)

自分が秘密にしている自分

他人は知らない自分

アンノウン

C(未知の世界)

自分の知らない自分

他人も知らない自分

 第1は,オープン(パブリック)な部分。行動・感情及び動機について,自分がよく知っていて,他人にも知られている部分。ここには,「自分は……の人間である」と思っているし,他人もそう認めている。自他共に認めている自分の姿がある。ここでは,自分の考えや言動は容易に相手に通ずる。

 第2は,ブラインドな部分。行動・感情及び動機について,他人からは見られ,知られているが,自分自身ではまだ知らない部分。ここでは,自分だけが自分のことを気づいていない。たとえば,周りは皆その欠点を認めているのに,自分だけがその欠点に気づいていない。自分が自分に盲目になっている。

 第3は,クロウズド(プライベイト)な部分。行動・感情及び動機について,自分自身はよく知っているが,他人には意識的に隠している部分。ここでは,自分だけが胸に秘めていて,他人に知らせていない自分の姿がある。

 第4は,未知の部分(わからない領域)。行動・感情及び動機について,自分も知らないし,他人にも知られていない領域。ここには,自分も他人も気づいていない自分の姿がある。 ある意味では潜在的な部分。自分の知っている自分の姿は@とBだけである。@とBでしか,自分の姿は把握できない。

オープンの領域は,“公的自己”とも呼ばれる領域である。ここでは,お互いはすでにわかっていること(共通項として知っていること)を基盤として活動できる。相手に疑心暗鬼にならず,自分を隠す必要もなく,自分の内的資源を十分活用できる。チームワークが成立する基盤は,ここである。リーダーに求められるのは,ここを広げる努力である。まずは,自分が何を目指し,何をしようとしているかを,広くメンバーに表明し明示すること。と同時に,メンバーからのフィードバックを受止め,自分の知らない部分,気づいていない部分を受けいれることによって,ブラインドの部分を減らすことである。でなければ,リーダーは裸の王様になる。聞く耳は,リーダーシップの根拠であり,リーダーの力量を左右するものなのである。

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リーダーシップについて・4

危機のリーダーシップもしくは痩我慢の説


 明治維新後35年も経って出版された『痩我慢の説』で,福沢諭吉は,幕末の勝海舟の政権運営を,「予め必敗を期し,その未だ実際に敗れざるに先んじて自ら自家の大権を投棄し,只管平和を買わんとて勉めたる者」と痛罵し,「立国の要素たる痩我慢の士風を傷(そこな)ふたるの責は免かる可からず。殺人散在は一時の禍にして,士風の維持は万世の要なり云々」と厳しく断罪した。しかし,福沢から送られたその本へ,勝は「行蔵は我に存す,毀誉は他人の主張,我に与からず我に関せずと存じ候」と素っ気なく返事しただけでした。勝のその返事の後背にあるのは,福沢への痛烈な冷笑であり,おのれへの強い矜持です。勝の口癖を借りるなら,「機があるのだもの,機が過ぎてから,なんといったって,それだけのことサ」であり,そのとき,百難を引き受けたのはおれだ,と勝は言っている。両者の見ていた危機が違うのだといってもいい。「徳川幕府あるを知って日本あるを知らざるの徒」でしかない,「学者だから,自分などの通る道とは違う」のだ,と勝は言い切っている。
 危機とは,誰の目にも見える状態になったら危機ではない。やりすごさなければならない危難でしかない,といえば言い過ぎだが,いまここに危機がきても,それが危機と見えないときこそが,最も危機なのではあるまいか。
一般に,リーダーに求められる役割は二つとされる。
第一は,向かうべき方向と方針を提示する役割。自分たちの立場と目指す方向を示す「旗」を立てる“旗降り機能”であり,組織の目的を実現するために,何のために,何をするのかという“旗幟”とそれに不可欠な意思をメンバーに明確に提示しつづけることである。これは既に触れた。
第二は,その方向と方針に向け,メンバーを奮い立たせ組織の力を盛り上げる役割。立てた「旗」を実現するために,ヒト・モノ・カネ・チエをどう効果的・効率的に結集させ,盛り上げていくかの仕組みや仕掛けを工夫する“仕掛けづくり機能”(あるいは維持機能)と呼び,目的達成のために,組織メンバーの協働態勢づくりをどうしたらいいのか等々,組織力が発揮できるようたえず努力・工夫することである。

 【組織はメンバーの様々な役割遂行の函数である】             【メンバーのリーダーシップを束ねられるリーダーシップが求められる】  

  重要なことは,リーダーシップとは,リーダーのみにあるのではなく,それぞれの立場の者が,その責務を果たすために発揮すべきものだ。ひとりひとりの役割遂行に伴って発揮されるメンバーのリーダーシップは,リーダーのリーダーシップに収められるべきものではない。それなら,リーダーの器量以上に組織力は大きくならない。そうではなく,リーダーのそれをはみ出すようなメンバーのリーダーシップを束ねられ,ひとつの方向に向けていけることこそが,リーダーに必要なリーダーシップなのだ。そのためにこそ,仕掛け作りの機能が重要になる。それによってリーダーシップの器量そのものも大きくなる。
多く,危機は末端に感知される。末端こそが組織やシステムの矛盾と向き合うものだからだ。幕末危機を意識し,問題意識が旺盛だったのは,幕藩体制というシステムの下級武士であった。いまのままの組織を維持しようとする向きには,末端の問題意識や危機意識は邪魔でしかない。リーダーシップが必要なのは,組織維持のためにメンバーを束ねることではない。末端の危機意識,いまのままでいいのかという問題意識を拾い上げ,単なる個人の危機意識を組織の危機意識とすること,そこでこそ,リーダーの旗振り機能が求められる。リーダーは孤独だからといって孤立しては個人技を出ない。メンバーの危機意識を束ね,それをどう乗り切るかを旗として掲げるリーダーシップこそが求められる。勝には,その耳があったことは確かである。

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リーダーシップ・目次

リーダーシップ1

リーダーシップ14

リーダーシップ 2

リーダーシップ15
リーダーシップ5 リーダーシップ16
リーダーシップ6 リーダーシップ17
リーダーシップ7 リーダーシップ18
リーダーシップ8 リーダーシップ19
リーダーシップ9 リーダーシップ20
リーダーシップ10 リーダーシップ21
リーダーシップ11 リーダーシップ22
リーダーシップ12 リーダーシップ23
リーダーシップ13 リーダーシップ24

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